事業計画、経営計画の「きそのきそ」

経営革新等支援機関である、バックグラウンドが企業の財務経理である、といったことからか事業計画・経営計画の相談を受けることがあります。
そういったなかで「×」な計画の例についてちょっと書きたいと思います。

1,販売市場分析をしていない
自分が闘うフィールドである「市場」のすべてを目にすることはできません。
またあるときに見えたとしてもそれが永続性を持つわけではありません。
したがいまして明確に、そして網羅的に市場分析をすることはできません。
しかしながら、部分的には見えますので、それに基づいて計画化することはできます。

(×な例)
・ネットで同種同様なものが1000円で売られているのに1500円で販売する計画を組んでいる。
→まぐれ当たりしかしませんので売上未達となります。
・自らの製品等には付加価値があるという理由で他の事業者が同じラインの製品を1000円で販売しているにも関わらず、1500円で販売できると計画をし、数量も他社同様と計画している。
→中長期的には口コミ、広告宣伝などの影響があるのであるいは市場における代替製品として売れることはあるのかもしれません。しかし、たとえ付加価値に見合った価格でも浸透度が低いうちはまず販売数量の確保をすることができません。したがって売上未達の要因になります。
・付加価値が市場による共感力を伴っていない(ニーズが無い)、または共感力は伴っていても価格差を正当化されない(コストパフォーマンスが見合っていない)。
→良いとは思えない、良いけれどその値段はちょっと、という独りよがりパターンで売上未達の大きな要因です。

2,コストの積み上げが出来ていない
販売価格に市場や相場があるようにコストにも市場や相場があります。
これを全く勘案しないコスト計画を組んでいる場合、売上が計画通りでも利益が確保できません。
またコストを網羅的に織り込んでいなければ事業の継続が怪しくなります。

(×な例)
・相場が15万円の家賃を10万円と予定するなど計画値が現実離れしている※。
・貯金等の余裕が無いのに自らの生活費が確保できない利益(個人の場合)叉は報酬(法人の場合)しか織り込んでいない。

※余談ですが、我々税理士に対しても、相場から余りにかけ離れた報酬の予算を前提に、予算がこれだからこの値段であれもこれもしろと要求する会社・人に遭遇することがあります(悲)。「開業一年目だけは協力して!」というような場合であれば、経営者の人柄や事業の成長性の観点から「よっしゃ、一肌脱ぎましょう!」ということもあり得ますが、そうで無い場合、失礼ながら、そういう会社・人はいささか難ありなことが多いのでご遠慮願っています。

3,他力本願
政府の政策の影響もあり、補助金・助成金はかなり充実しています。
もちろんこれは悪いことでは無いのですが、これらが無ければビジネスが成立しないという計画を組んでいる場合は長続きしません。

(×な例)
・補助金や助成金が通常経費に充てられている計画となっている。
→ルーティンのコストはルーティンの売上等でカバーされるべきものであり、補助金等のノンルーティンの収入はステップアップや特別支出のため※、あるいは開業当初のコストなどノン・ルーティンのコストをカバーすべきもの。
※外国人旅行客を取り込むためのメニューの英訳費用、コロナ対策の設備設置など。

4,丸投げ
銀行の融資を受けるといった目的のための計画策定の受任や代行を生業にしている士業がいるようです。
もちろん中にはきっちりしたところもあるのでしょうが、そういう丸投げ計画の多くは「魂が入っていない仏」同然と言っても良いと思います。
何故ならば、当該士業がある市場にいる叉は入ろうとしている会社・人以上に市場を知っていることはほぼ想定できないからです。
専門家のサポートを受けた方がテクニカルな意味で質が上がることが多いですし、抜けや漏れが埋まることも多いので、できればサポートは受けた方が良いと思います。
しかし計画は自らの事業の未来を示すものです。
伴走してくれる専門家を見つけるのは大切だと思いますが、悩むのは自分、策定するのも自分という意識を持った方が良いと思います。

5,資金
勘定合って銭足らずという言葉がありますが、利益が確保できても資金状態が悪ければ事業継続は困難になります。
モノであれば仕入れてから売ります。
仕入の代金は売上の入金がある前に支払うのが通常ですので、この仕入代金の支払と売上の回収の間の資金をどうするかは予め考えておきましょう。
事業計画や経営計画にこの「資金繰り」が含まれないことがありますが、この点も視野に入れておいたほうが良いです。

経験から申し上げれば、わたくし風情(笑)でわかる製品、商品、サービス、ビジネスモデルであって、且つ計画がしっかりしていないビジネスはあまりうまく行かないことが多く、上手くいった場合は特需など誰も計画化できなかったことによることが多いように思います。

まだ遭遇したことは無いですが、わたくし風情では到底わからない革新性のあるものは目に見えないニーズにマッチをして「爆売れ」のようなことが生じるため、計画などは全く意味が無いということになるのかもしれません。

最後になりますが、事業計画、経営計画はその計画そのものよりも、分析し、具体的に考え、それらを元にその時点で想定される現実的な数値を算出することこそが最も重要であることをご理解いただきたいと思います。

具体性、現実性、明確性、網羅性のある計画を策定し、自らの夢の実現をしましょう!

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