インボイス制度の現況を現場の視点から



今日は10月1日、つまり…

 インボイス制度の始まりです!最近よくニュースでやっているやつ。商売やっていない人には直接的な影響がないのと、今後発行される「インボイス」、今までの請求書や領収書と見た目の変化はほとんどないので、ピンと来ていない人が大半かと思います。かくいう私も去年まではふわっとした知識しかありませんでした……。

インボイス制度がピンとこない理由

 これ、色々と理由があります。いくつか例示すると…、
 ・税法の話で説明文内に専門用語が飛び交い、頭に入ってこない
 ・法人や個人事業主(自営業者)以外には全く関係ない
 ・「インボイス」に「インボイス」「適格請求書」と書かなくて良い等
  「インボイス」の実物がふわっとしてつかみどころがない

あたりでしょうか。
そもそもで、消費税という制度が実はかなり複雑怪奇で分かりにくい詳しい税理士も(意外と)少ないのが遠因かと思われます。消費税は預り金だとか預り金じゃないとか、免税事業者は益税があるとかないとか、この辺で議論になるのも、その制度のややこしさが理由です。

世の中のニュースは反対運動ばかり取り上げられていますが…

 で。
 ニュースとかを見ると、インボイス制度10月から開始!とか言っているわけですが、それに関連して取り上げられる内容といえば、何故か、インボイス制度反対運動のニュースが中心。
 いやね……。わかるけどさ……。
 経理担当者の90%(西村公宏肌感覚)は、インボイス制度については「めんどくせー!対応やりたくねー!現場危機意識無さすぎでわらえねー!」(若干誇張)だと嘆いていて、制度開始の延長を心の中で切に願っている状況だと察しております。私自身も、インボイス制度の質問対応に追われすぎて他の仕事が手につかなくなっていて、心の底から「めんどくせーー!!!」と思っておりますが(国税当局の皆様ごめんなさい…)、残念ながら、インボイス制度はずっとずっと前に改正成立した消費税法や関連法令に深く刻まれてしまっているのです。つまり、制度導入の中止・延長などには法律の改正が必要なわけです。
 しかも、インボイス制度が始まると消費税が増えると財務省はお考えです。つまり、インボイス制度導入に伴う増税を見込んだ予算が組まれているわけです。
 要するに、今更中止なんて無理ゲーなのです。
 突然なぜか選挙が行われて、現在の与党が惨敗して政権交代して、新しい与党が財務省はじめ官僚の反対を振り切ってインボイス制度前の消費税制度に戻す法律改正をする!なんてミラクル×100みたいなのが起こらない限り無理なのです。
 つまり、このタイミングでシュプレヒコールあげてやっているインボイス制度反対運動は、どこかの与党以外の政党を選挙で勝たせるための政治活動ってわけです。私はこれには与したくないなぁというのが本音です。仕事上の三大タブー、政治・宗教・野球には触れたくないですからね。

私のインボイス制度に対するスタンス

 じゃあ、お前の考えはどうなのよって感じですが、私のスタンスは「面倒だけど、消費税本来の趣旨を考えたら導入は仕方ない、面倒だけど」です。なので、賛成か反対か!と言われたら、ン~…、消極的な賛成かな…。自分の専門家としての価値が上がる制度ではあるので、私にはある意味プラスなので。利己的な理由も含まれているので、そこはあまり気にせず。

本当に説明が不十分?

 ただ、「説明が十分ではない」ってのは個人的にはちょっと違うでしょとは考えています。なにせ、インボイス制度の導入が決まったのって、2019年10月に導入された軽減税率を採用する事が決まった段階ですからね。もう5年以上前に決まっております。そして、実務が混乱するであろうことは国税庁も早くから認識されていたようで、かなり丁寧に情報発信をしております。例えば、下のQ&A。

ついにQが127にまで膨らんでおります。
あと、ここに乗っていないFAQもあるので、かなり細かく情報発信しています。おかげで私も、わざわざ税法・法令・通達に当たらずとも問題解決できるので、とても助かっております。これで、「説明が十分ではない」って言い切るのはどうなのよ???とは思っています。

でも、今後の混乱の種は既にいっぱい見えている状況

  とはいえ、たぶん大混乱すると思います。
目に見えている範囲で「これアカンやろ…」みたいなのがポロポロとあります。例えば、JALの電子領収書。

https://www.jal.co.jp/jp/ja/info/2023/other/230720/

これ、「インボイス制度対応」とうたっているのですが、国内線の例を見てみたら、どこをどうみても「消費税額」の記載がないんです。要するに、適格請求書の要件を満たしていない。 
 え、本当に「インボイス制度対応」?
 しかも、この問題で根深いヤバイ点がもう一つあって、JALは9月まででも適格請求書を発行しなければならない立場になっているんです。具体的にいえば、10月以降のフライトに関する領収書。これ、8月や9月に支払っていても、適格請求書じゃなければ、仕入税額控除を受けられない領収書になってしまいます。え、払った時に費用処理しているからインボイスの設定が出来ない?それ、9月決算の会社だと税務調査で見つかったら否認されるので気をつけてくださいね。
 その他、インボイス制度に関する特例が今年の9月15日に突然公表されたりしています。ETCクレジットカードに関する特例。

ここでの説明は端折りますが、一言で言ってめちゃくちゃいい加減で他では絶対に認められないであろう特例で、これで旧高速道路公団なNEXCO3社の適格請求書発行のクレーム対応がグッと楽になったであろうと想像しております。金融機関の振込手数料はこういう特例をほとんど認めなかったのに。元公団なので、政治的なナニカが働いたのかな…、なんて邪推もしてしまいます。

と、色々とアレコレ書きましたが、インボイス制度に関する情報はあまり正確な情報がマスコミさんでは流れていないなぁと思うのが個人的な感覚です。そんなわけで、「鳴かぬなら私が鳴こうホトトギス」の精神で自分自身でできる範囲の情報発信をしていこうと思います。


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