「本を千年つたえる 冷泉家蔵書の文化史 」 藤本孝一 朝日選書

冷泉家蔵書の調査研究に直接携わり、その全体像を解明した中心的な研究者による解説。The 冷泉家蔵書!。これ以上の解説書はない。守り伝える心に感動した。

日本の宝、冷泉家御文庫、よくぞ残してくれた!と思う。冷泉家は幾度も火災にあったそうだが、文書を納めた土蔵がこの宝を守ったという。
相続においても、定家の嫡子・為家から、もしも為氏に財産が引き継がれていたら、今ごろこの至宝は散逸していたに違いない。さらに、財産を引き継いだ定家の孫・為相が原本を鎌倉へ持参していたら、散逸の憂き目を見ただろう。
廃絶した二条家も何かにつけてゴタゴタがあり、結局、二条家所有の文書も全て冷泉家へ引き継がれた。

本書は、定家書写の親本から、幾重にも書写されて、それぞれの系統に引き継がれ、そして、結局のところ、冷泉家の所蔵となっていった、その経過を詳しく語っている。素人にはその筋を追いかけて行くのはなかなか至難のわざで、読むのに四苦八苦した。
いずれにしても、とにかく、最終的に冷泉家の一つの蔵に、定家本をはじめ、二条家本、西山本、三井寺本などの鎌倉時代歌壇全体の写本が納められたのは、日本文化史における奇跡だと言っている。
おう!ありがたい奇跡!これぞ日本の宝だと思う。

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