倒産手続の方法選択

1 総論
倒産・再生手続の方法選択は、債権者の顔ぶれ(債権の種類、債権者の数、協力姿勢含む。)、事業の収益性、資金繰り、スポンサー支援の可能性、クライアントの意思決定等の種々の事情を勘案して総合判断で決定すべきであり、かつ、その判断のファクターも日々変わり得るので、このケースはこうすべきというのは、おのずから明示できないものである。
ただ、方法選択のメルクマールとすべき事項は、文献等に載っているし(だいたい色んな手法がずらっと羅列されていて、集中力がないと読みきれない)、行為規範的なものは、個々の弁護士の頭の中にある(と思う。)。
本稿では、自分の中の考慮要素を忘れないように、ざっくばらんに記載しておく。

2 再生か清算か
再生か、清算か、でいうと、事業実体がないとか、社会的に当該事業の存続が望ましくないとか、よほどのことがない限りは、再生を目指す。
ここで、何が「再生」なの?という問題があるが、当職的には、破産(とか特別清算)を用いた手続も事業再生というのが当然と思っており、要は、今ある従業員の雇用なり、事業価値なり、残すべきものを承継していくことが目指すべき再生である。

3 私的整理か法的整理か
原則として、私的整理の成立を目指す。その理由は、一般的には、私的整理であれば、その秘匿性から事業価値の毀損が生じにくい(一般取引債務は支払う)ことや、ひっかける先が金融債権者等のみで済むため、取引社会に対する影響が少なく済むことにある。

4 方法選択の検討順序
そうすると、再生型の私的整理の成立→再生型の法的整理の成立(→清算型の私的整理の成立)→清算型の法的整理の順序で、ベストな選択肢が採れるよう日々頭を悩ませることになる。

5 方法選択が不可となる要素
⑴ 清算価値保証(私的整理) ※抜本前提
私的整理で策定される計画の弁済率は、「弁済原資−金融債権以外の債権÷金融債権総額≧破産した場合の金融債権への配当率(破産手続開始決定時の破産財団−財団債権・優先債権控除後)>すべての破産債権総額)」でなければならない。
※担保等はいったん措く。
例えば、現状の手元資金や今後の入金見込みを考慮して、弁護士報酬、公租公課、従業員給料、一般取引債権等のうち、履行期にあるものを工面できなければ、金融債権者への配当ができずに清算価値を保証できないため、その時点で、基本的に私的整理の成立は不可である。
上記の次第で、私的整理における金融債権者の清算価値保証を考えると、公租公課等の財団債権の未払が多いと、それを上回るほどの資金支援等なくしては、清算価値保証は難しくなるため、私的整理の選択肢が採用できなくなる。

⑵ 清算価値保証(法的整理)
法的整理(民事再生・会社更生)の場合は、すべてのクラスごとの債権者に応じ、清算価値を保証することが不可欠であり、これが見込めない場合には、その選択肢は採用できなくなる。

⑶ 資金繰り
窮境にあるクライアントは、手元資金がほとんどないことが多々ある。
私的整理の計画成立までは、一定期間を要するが、その期間は金融債権以外は支払いを続ける必要があるため、これに耐えられる資金繰りの状況かどうかも見極めが必要となる。

⑷ 秩序
金融債権者への情報提供が十分にされない等、手続の透明性が確保されていない場合には、法的整理への移行が望ましい。
実際、そのような場合には、債務者代理人としても、債務者の実態がつかめず、目の届かないところで事業毀損が生じるおそれがあり、また、金融債権者の同意を得られる見込みもたたないように思う。
また、いくらスポンサー探索等で入金見込みがあるとしても、買掛等のジャンプが膨れ上がっている場合も、同じく事業価値の毀損が生じ、清算価値保証も難しくなるので、法的整理への移行が望ましい。

いったん思いつく限りでのメモとして

以上

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