祖母の話④

祖母が亡くなって、悲しみは感じられませんでした。
ただ、ただ、悔しさと
喪失感、虚無感、自責の念…
そんな諸々が往来する心だけが残されました。

葬儀に際して、遺影の写真を探していた時に…
おばあちゃんが大切にしていた桐箪笥の中に、風呂敷で包まれた何かを発見しました。

見覚えのない包み???
開けてみると、箱が包まれてました。
その中身は、

【遺影に使ってください】
と書かれた写真が2枚。
家族のアルバムから探していたものの、おばあちゃんらしいものが見つけられずにいましたが、その2枚は皆が納得できるものでした。

【棺に入れてください】
と書かれたものは、数珠や曾祖母との写真など。

【葬式代】
と書かれたものは、近くの信用金庫の通帳でした。暗証番号が書かれたメモも入ってました。

これは、針仕事で貯めたお金です。年金が振り込まれるのとは別の通帳で、家族の誰も知りませんでした。
しかも、亡くなる直前に定期預金を普通口座に移し、キャッシュカードを作っています。
そして、暗証番号のメモには
※機械では一日に20万円までしかおろせないので注意!
と、ご丁寧に😅

いつ、この包みを準備したのか?
テレビのリモコンでさえ使いこなせないし、足が弱くなってから外出もままならなかったおばあちゃんが、
いつ、銀行に1人で手続きに行ったのか?
一緒に暮らしている家族ですら知らなかった。

こうなると、宝探しの気分でおばあちゃんのタンスを探検したくなりました。
悲しませないための演出?と思えるほど…

着物が入った引き出しには、
タトウ紙に包まれた着物や帯が入っていますが、
全てに  ◯◯さんへ  と書かれたメモが挟まっていました。
形見分けです。

帯留やかんざしなど細かな物にまで、
その人に合った物が、お世話になった全ての人に満遍なく振り分けられていました。

完璧な最期でした。

葬儀が終わり、納骨が済んで、やっとおばあちゃんがいない空間に寂しさが込み上げてきました。

遺品整理は最期に着ていた数枚の服だけで、
その他の私物の全てを片付けて旅立ちました。

楽しいことよりも、苦しい時期の方が多かったであろう人生だっただろうに、
いつも穏やかで、家族思いの優しさに溢れていた。
そんな生き様を、そんな背中を見せてくれたおばあちゃん。
自分もこんな人でありたいと思わせてくれた。
それこそが、私にとっての遺産。

クズダイヤの指輪は今も、私の戒めとして、御守りとして、指にはめている。

そして、私は少しでもおばあちゃんのようになりたくて
エンディングノートを書き始めた。

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