「心が叫びたがってるんだ。」にハマって(1)


プロローグ。

アニメ映画「心が叫びたがってるんだ。」にハマっています。もう20回くらい見たような(最初はレンタルで,その後は購入したBDで)。

このアニメを見ると,語りたくなるんです。たぶん,「共感」とか「感情移入」とかではあまりなくて(少しはあるかもだが),「アニメっていうメディアがどういうものかが自分にわかってくる(という気持ちになる)という自分のなかのプロセス」が興味深い,のかな,と思っています。

ではどう「わかってきた」のか。それについて,他サイトに自分が長文で投稿したものがあり,ここではそれをベースに書き加えつつ,しばらく思うことを固定していってみようと思います。他サイトではほかの人の書き込みに埋もれていく文章をサルベージしておきたいというのが再録の動機です。

(以下ネタバレありです)

1.出会い。

私は初見から引きこまれました。最初に教室のHRで順が立ち上がって言葉を絞り出そうと苦しむシーンで心が一気に持って行かれました。

観ようと思ったきっかけは,レンタル屋さんでなんとなく学園ものがみたいな,と思ってたときにたまたま手をとった,それだけです。私はアニメ初心者で,「あの花」は存在すら知りませんでした(今も見てないです)。

本作には,終盤の展開でげんなりした,というレビューが多くあります。初回は私も終盤で「あれれ?」となりましたが,繰り返し見るうちに心になじんできました。その後あちこちでいろいろな方のレビューを拝見して,とても参考になりました。自分のメモは,先行してレビューしてくださった方々の影響も受けていることをお断りしておきます。

2.もしテーマ性をみるなら。そのテーマを実現するために脚本家がとった態度とは。

この作品にもしテーマ性をみるなら,その根底の考え(世界観,哲学)は,

■人間は言語表現をもつ
■人間は親子やコミュニティなど社会を背景に生きる
■言語表現の原初形態は感情である
■感情の根源のひとつに性的感情がある(否定的意味でなく)
-
の4点かなと。※もちろん,エンタメ作品にテーマ性のようなものは必ずしも必要ないし,作者が込めたテーマがあるとしても,それをどう受け止めるか,気にするかしないかは見る人次第です。娯楽なんだから。

その考えの上で本作の筋書きを要約すると
「社会と病的に距離をとることになった人が,恋愛体験(性的衝動の一環)と音楽を契機に,殻を破って社会に復帰する(再生する)話」
です。

この「主人公の再生」という「幹」以外の部分は,各人物像・設定・進行につき,冷静に考えるとほぼ全篇,かなりの無理スジを含むので,それらを「テーマを描くためのファンタジー」と割り切れない方には,向かないかなと思います。

学園描写とかがやけにリアルなところもあるので,「普通の学園もの」に見えてしまいがちです。その,よく考えると奇妙な「まぜまぜ感」が違和感になることはあると思います・

この作は極端に言えば,成瀬 順が再生するという一点に向かってそれ以外はぜんぶそれに奉仕するだけ(設定破綻してようが,ご都合主義ひどい!に見えても,気にしない),というコンセプトに立っている,のでしょう。

(つづく)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?