救世の唄

M-1グランプリ1回戦出場日が迫っている。

私が何月何日の何時から登場するのかどうかについては、出場者である私自身にもまだわからない。

「出場日については1週間前に公式サイト上にアップされますのでご確認ください。場合によっては希望日でない日にエントリーされるかもしれませんのでご了承ください」との記載があるため、毎日のように各大会日をチェックしているが、いまのところ私たちのコンビ名は名だたる出場者の中に軒を連ねてはいない。


日に日に増す不安は、既にコップいっぱいに溢れかえっている。


今年は無観客ということが影響してか、東京大会については今日現在まで、アマチュアコンビの二回戦進出者はでていない。


コンビ名の隣につく【敗退】の文字は、語感を強めるばかりだ。

相方のアンプリティアー丸島は、能天気に「多分イケるでしょ」を繰り返している。

×××

丸島がこのブログを読ませろ!という旨のLINEを送ってくる。


私自身も彼が好きだし、全然読ませてもかまわないのであるが、いざ招待状を送る、あるいはURLを張り付けてメッセージを送るとなると、なんだか無性に面倒くさくなる。


それは簡単で些細な手順に過ぎないのだが、「うーん・・・まああとでいいか」という気持ちが往々にして蔓延り、事態は一向に進展しない。


“貴重な昼休み>丸島”という不変の不等式が出来上がりつつあるのだ。


しかし丸島はいいヤツだ。


丸島に会ったことのない人はみな丸島のエピソードを訊いてイケメンなお兄さんを想像するが、実際はなんてことない人間だ。

彼は『あの子、俺に惚れてるんじゃないかなあ・・・』が口癖で、具体的ではあるが非常にこじんまりとしたエピソードを羅列し、独自に分析した上で、『いやこれ・・・あるぜ・・・』と結構本気で言う。

基本的に会ったことのある女性はみな自分に少なからず気があると本気で思ってしまう人間である。

そして意中の女性を落とそうとするときに決まって使うツールはスカイプであり、マイクを通し会話することで距離を縮めようとする。


TELセックスの誘いがくればもう丸島は貴女にゾッコンだ。

そんなTEL島であるが、彼は何よりも自分を持っている人間だ。

たしかに他人の意見に左右されやすく、騙されやすいタイプだが、その根本には間違いなく“自分”がある。


理不尽な目にあっても感情的にならず、ネットでありがちなヤられたらヤり返すみたいな行動には一切でない。


無意識に水に流せる能力があるのは彼くらいだろう。


要するに丸島はいいヤツだ。

かけがえのない相方だ。


ただそれを補っても遥かに余りあるくらい、どうしようもない精子脳だ。


いや、彼を“精子脳”とひとくくりにするのは難しい。


彼を表すのは精子脳という単語ではない。


一番適した単語は“煩悩”


あるいは“TELセックス” だろう。

×××


丸島、かく語りき。

なあなあ。

俺さあ、いや俺がさ?

福元さんのこと好きなのみんなにバレてんのかな・・・

いやさ、LINEとかはしてるんだけどさ、なんだかみんなにバレてる気がすんだよなあ。

え?バレてる?うわー。なんでだろ。

うわー。

どうしよう。うわー。

うわー。


ってことはさ、みんな俺が“福元さんのことが好き”って思って木曜日くるってことでしょ?

うわー。

俺・・・みんなの期待を裏切らずに福元さん好きでいられるかなあ・・・


いやね、いやね、

俺さあ、みんなから“好きだ”“好きだ”って思われれば思われるほど気持ちが冷めちゃうタイプなんだよね。

1対1の恋愛だといいんだけど・・・第三者が入ると俺どうも・・・みんなの期待に応えられるかなあ。


え?イケメン気取り?


いやいや、俺全然モテないっすわー。俺モテないっすわー。


こないだなんてあれだよ?

福元さんに『イケメン呼べないなら帰っていいよ』って言われたんだぜ?


ひどくない?

マジ悲しかったわー。

まあすかさず

「なんでそんなこと言うんですかー!」

って突っ込んだらドッカーンとウケたんだけどね。

めちゃくちゃ俺ウケてたわ。


そういえば真由美来るのかなあ?

真由美じゃないか。マミたんか。

絶対俺のこと覚えてないでしょ。

いや絶対俺のこと覚えてないわ!

マジこわいわ。絶対覚えてないわ!

でも松岡さん、自慢じゃないけどね、僕とマミたん、結構仲よかったんすよ。

覚えててくれないかなあ。仲よかったんだけどなあ!

もうこれでマミたんに忘れられてたら立ち直れませんわ。マジで。

お酒飲む意味を見失いますわー。

でもなんだかんだいって男性過多の会社につとめる我々にとってこういった女にふれあえる機会は貴重だよね。

ってかうわー。俺本当にモテないわー。

モテないわー。

結局僕なんかね、結局ね。モテないモテない言ってた結果ね


ツイキャスのリスナーとデートすることになりましたわ。ヒャッハッハッ。



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