人間は無駄だ!

 人間は無駄な生き物だ。無駄ということは、無意味ということだ。無駄だけど意味のあること、無駄じゃないけど意味がないこと、そんなことはない。では、人間は無意味な生き物ということになる。
 生きる意味、生まれてきた意味、つまり人生の意味。そんな言葉はありふれているが、バカバカしい。ないものをあるように語っている。本気で語っている。それは…………素晴らしいことだな。

 もし人生に意味があるのなら、俺は苛つくし、悲しむし、絶望してしまうだろう。俺は俺の望まない意味を伴って生まれ落ちたということになるからだ。その意味に縛られずに生きることはできない。たとえば「アヒル」という文字の羅列、発音の組み合わせは「アヒルという動物」の意味を持つから、アヒル以外を示すことはできない。
 俺の自由意志、性格と経験、趣味嗜好、思想と宗教、どれかは意味の影響を受けてしまう。

 だから、人生が無駄で、無意味ということは素晴らしいんだ。何をしても無駄だからこそ俺は自由に動ける。たとえば、あなたが映画を見るとして、その映画の評論を書いたらお金を貰えると言われていたら、不自由だろう。力んでみてしまうから。映画は、見ても見なくてもいいから楽しい。人生もきっとそうだ。
 そして意味がないからこそ、あってほしい意味を妄想できる。俺は野球をするために生まれてきたんだ、俺の人生は人を救うためにある、そう思える余裕があるんだ。意味があればそれに人生と思考は終始していただろう。

 だから、俺はあえて言う。

 人生が無駄でよかった!
 人生が無意味でよかった!

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