抵抗するために

 個人を成り立たせるのが個性で、個性を見出すのが「具体的に見る」ことなら、具体的に生きることが個人として生きることになる。

 人間は、あるときは国民、労働者などと抽象化されても、国民や労働者としても他の国民や労働者と微かには違う。

 それでも欲望だけは否応なく個別に与えられ、何人にも消されない。なにもしたくないとしても、なにもしたくないという一つの欲だ。

 もし、欲望が押し付けられそうになったら抵抗すべきである。

 「国民とはこうしたがるもの」「男とは/女とはこうしたがるもの」ということである。

 また、「包丁を使うときは猫の手にした方がいいよ」というのが「自分はそうしたいから、君もそうした方がいい」という押し付けにならないのは「君も包丁を使いたがってる」という了解があるためである。

 しかし、「このブランドの服を着た方がいいよ」という広告は、あなた個人がどういう欲望を抱いてるかなんて知らずに、自分が売りたいという欲望のために「このブランドの服を着たい」という欲望を押し付け(生み出そうと)しているので悪である。

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