母との会話 三島と太宰

「大東文化と、もう一つはどこの大学を受けるの?」
「大谷大学」
「どんな大学?」
「京都の。仏教系らしい」
「へぇ〜〜〜」
「仏教あんまり好きじゃないんだよね。キリスト教も好きじゃないけど。なんか、環境とか境遇が辛いから悟ろうってことだと思うんだけど、環境とか境遇を変えないと後から生まれてくる人たちがまた不幸な目に遭うし、そもそも悟るのって大変じゃん」
「あぁ」
「俺が三島由紀夫好きなのは、本当に変えようとしたから。太宰治はずっと家に閉じこもってウジウジしてるだけ」
「めっっっっっっちゃ分かる…………」
「あと、三島由紀夫って若い頃から作家としてバリバリ書いてるのに、それをキッパリと諦めて軍服を着てるのがすごい。筆を折るというより筆を捨ててて、作家としてのキャリアや功績があるのに必要だと思ったら活動家になるのがすごい。凡人が書くことを捨てるのと、天才が書くことを捨てるのじゃ覚悟が違うよね」


「その、大学の教授先生がね、太宰治大好きって言うのよ。でもそんなわけないだろ。教授で文芸誌の編集長やってて孫がいる70歳のおじいちゃんが太宰治好きなわけないだろ。夏目漱石とかだろ」
「(笑)」
「あと、その先生は太宰治を優しいって言ってたんだけど、女3人殺してるやつが優しいわけないだろ」
「(笑) まあその…………優しいというか…………弱いというか…………」
「女3人殺してる奴が弱いわけない。太宰治は強い。ただその強さを制御できてなくて、制御できてるのが…………いやコンプレックスの塊らしいしある程度は制御できてるのが…………三島由紀夫かな」

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