「よく」生きる
「我々は『よく』生きなければならない」
「『よい』とはなにか」
「三つある。善と、好と、良だ」
「『善』とはなにか」
「私を不幸にする善はありえるだろうか。いや、ありえない。私を幸福にさせるものだけが善である」
「では、あなたが悪人で、善の結晶である法律に害されたとしたら、法は悪か」
「そのとおりである。そもそも、私は悪人にならない。悪とは私を不幸にさせるものであり、悪人になるということは、自分で自分を不幸にするということだが、そんなことは意図しない範囲でしかありえない」
「『好』とはなにか」
「私を幸福にするものが私の好むものである」
「『良』とはなにか」
「重い椅子は安心感を与えてくれるので、座りたいときには良質だ。殺人犯に追われていて、凶器として使うときには扱いずらいので悪い。つまり、私の欲求を満たしてくれることが良い条件である」
「幸福とはなにか」
「私の欲求を満たしてくれることである」
「では、三つの『よさ』は根本的には同じなのか」
「同じである」
「では、どうすれば欲求を満たせるのか」
「それについては難しくなる。ただ、少なくとも、自分がなにを求めていて、どうなれば満足するのか、その欲求を満たすことは現実的なのか、その三つを考えようとしていない人がよく生きているとは思えないのだ。その人が幸せになれたとしても、それは、たぶん求めていることがたまたま満足できる数/量で手に入って、結果的に現実的だった、それだけである」
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