TRAKTOR Z2をビンテージ風にイメチェンDIY〜憧れのロータリー(ではない)ミキサー化〜
PCDJに触れた最初のころから今に至るまで、私は長いことTRAKTORを使い続けています。
TRAKTORの良いところは「あまり大きな変化がない」という点です。
コロコロと仕様が変わって安定しないソフトに腹を立てたり、新製品が次々と発表されるたびに物欲に駆られるようなことはありません。ゆっくりとした時の流れの中で、ただひたすらDJに没頭できる…、とても素晴らしいことですね。
ところで私はTRAKTORと同様にNIから出ているZ2というDJミキサーも愛用しています。このミキサー、2013年の華々しいデビューから10年あまり経ちましたが後継機の発表はいまだにありません。
TRAKTORユーザーにとって新製品の発表は「忘れた頃にやってくる」ものなので、2、3年はとりあえず黙っています。
また、Z2はとても完成されたミキサーだったので「数年は後継機は出ないだろう」と皆察していました。しかし5年目を過ぎたあたりから「さすがにそろそろ…」といった噂…というかぼやきが囁かれ始めます。
そして7年、8年と月日が経ち10年目の今、ついに誰もZ2の話をしなくなりました…とさ。
さて、私もZ2は大好きですが、やはり見飽きた感は拭えないのでどうしたもんかと考えたところ、見た目をロータリーミキサー風にカスタムしたら私好みになるのでは…という結論に至りました。
あくまで見た目だけの雰囲気コスプレカスタムです。
縦フェーダーを使ったプレイスタイルが好きなのでロータリー化はいたしません(そもそも私にそんな技術はない)。
さあ…このDIYカスタム話に興味のある物好きなあなた、是非ページをスクロールしてみてください。
途中に私が作った「TRAKTOR KONTROL Z2 "Recrate Vintage Custom Skin" (長い)」データのフリーDLリンクもありまっせ。
トップパネルのデザイン
Z2の素晴らしいところは、ミキサーのトップパネルが容易に外せるところです。ネジ留めもされておらず、ただのっかっているだけ。これはカスタムをする側にとっては大変ありがたい仕様です。
ノブを全部外して天板を取り外したらこれをスキャンします。
スキャンした画像を元にデザインをしていきます。穴の位置を確認しながらパネルの表記内容やフォントの大きさを考えます。
デザインを決めていく過程でいくつかのロータリーミキサーを参考にしました。例えばE&S DJR400です。
黒いボディに白く太い線で区分けされたパネルに特徴的なノブ。サイドのウッドパネルがビンテージ感をそこはかとなく醸しています。
まあ…要はこれ…MOOGシンセですよね。
各パラメーターの表記を考えるのが地味に楽しい時間でした。
例えばEQの表記1つとっても「HIGH・MID・LOW」を採用しているメーカーもあれば、「TREBLE・MID・BASS」だったりと各社で微妙に違います。これは今まで気づきませんでした。
RODECのミキサーは「GAIN」ではなく「LEVEL」と表記されています。ここを「TRIM」にしているメーカーもあります。
最大値がMAX表記になっているのが非常にロックでカッコいいですね。また、3つのEQを線でまとめていて視認性に優れていて、なおかつデザイン的にもアクセントになっています。
大抵のDJミキサーには「MAIN」と「BOOTH」という2系統のアウトを完備しています。馴染みのあるこの「MAIN」表記ですが、ロータリーミキサーになると途端に「HOUSE」が多く使わています。
…HOUSE? これはどういうことなのでしょうか。家? それともジャンルのハウスのこと?
理由はどうやらPA用語の「ハウス送り」からきているようです。
ロータリーミキサーの代名詞ともいえるUREIもこの「HOUSE」表記を採用しています。だったら私もHOUSEにするしかありません。
完成のイメージにできるだけ近づけるために、ノブイメージも配置した仮デザイン案(上)ができました。このあと試し刷りをして文字の大きさや線の太さなどに微調整を加えていきます。
印刷
ここからは印刷をして、実際にパネルに貼り付けていきます。
用紙は「屋外でも使えるサインラベルシール」シリーズのA3レーザープリンター 用にしました。
用紙で迷うのが「光沢タイプ」か「ツヤ消し(マット)タイプ」。
個人的にはマットタイプの方が光の反射が少ない分、視認性に優れると思います。ただ、安っぽく見えるという欠点もあります。
ちなみに最終仕上げでウレタンコーティングをする場合は、そこでも光沢仕上げとマット仕上げのどちらかを選ぶことになります。私は用紙は光沢でウレタン塗装はマットにしました。
注意:プリンターの設定は機種によっていろいろあると思いますが、「厚紙設定」は必須のようです。「厚紙設定」にしないと印刷のかすれやトナーの定着が甘くなりします。
インクジェットのことはよくわかりません、ごめんなさい。
ウッドパネル
刷り上がりを待つ間にサイドのウッドパネルを作ります。ウッドパネルを装着することでグッとビンテージ感が増します。
木材はホームセンターで売っている杉や檜がお手頃価格でお勧めです。
厚さは10mm前後を選びます。ホームセンターのカットサービスで370mm×78mmにカットしてもらいます。
表面と角にヤスリがけをすると仕上がりが良くなります。ホームセンターで240番の紙ヤスリも買っておきます。
仕上げにワックスを塗るとより高級感が出ます(ウッドパネルの裏側は両面テープを付けるので塗らない)。
ワックスの色味は大まかにナチュラル系・黄色系・赤茶系に分けられます。元の木材の色の影響もあるので必ず狙った色にはなりません。ただ、どの色を選んでもそれっぽくなります。
私は杉材にブライワックスのDARK OAK(赤茶系です)を塗りました。
私のDIYブランド「RECRATE」の焼き印を入れてみました。
ワックスは2度塗りしています。よく拭き取った上で、さらにもう一度強く磨くと光沢が出てきます(楽しい)。
仕上げにネジを打ちこみます。ウッドパネルとミキサー本体は両面テープで固定するので、このネジはただのダミー。
切り出し・貼り付け
さて、印刷の仕上がりはどうでしょうか。
刷りのチェックをしたらいよいよデザインナイフで切り出します。
デザインナイフは通常のカッターと比べると切れ味が段違いです。また刃が小さく細かい作業にも向いているので、このあとの穴あけでも使います。
四隅を切り取った段階でパネルに貼り付けていきます。貼り付け作業は難しそうなイメージがありますが、実際は非常に簡単です。
まずはパネルに仮合わせをします。手で抑えながら蛍光灯などの光にかざして穴の位置と印刷が合っているかを確認します。だいたい合っていれば片側をクリップで留めます(そもそもパネル穴とポットの位置には多少のズレがあるので、あまり細かく考えても意味がない…)。
ラベルシールの台紙を半分だけ剥がします。このとき先ほどのウッドパネルをヘラ代わりにすると気泡が入りにくく上手に貼れます。
デザインナイフで穴をあけていきます。
初めはスルスルと気持ちよく切り出せますが、しばらくするとシールの糊がナイフに付着して切れ味が悪くなってきます。そのまま作業を続けると仕上がりが汚くなるので、少しでも切れ味が悪いと感じたら迷わず刃を交換します。
気泡はデザインナイフの先端で突っついて、その後指で押すと目立たなくなります。
切り出した部分はどうしてもシールの白い地肌が見えてしまいますが、ここを黒の油性マジックで塗っておくと仕上がりが良くなります。
2液ウレタン塗装
パネルはこの時点で完成でもよかったのですが、友人に勧められて2液ウレタンスプレーを吹くことしました。目的は表面をウレタンコーティングすることで、印刷面の耐久性を上げることです。
風の弱い暖かい日を選んで10分間隔の計4回吹きました。
私はツヤ消しタイプを選びましたが、光沢タイプでもよかったかな。
ノブとフェーダー選び
ビンテージミキサーの要ともいえるのが「ノブ」です。
ただ、Amazonなどで検索をかけると大量にヒットするので、どれを選べばよいのか迷ってしまいます。
TRAKTOR Z2のシャフト形状は三日月型の「Dタイプ」になります。ノブを真ん中に設定したときに下側が欠けている状態のノブを探します。
ネジで固定するタイプの場合は、止めネジの位置が下側にあるかを確認します。
シャフト孔径は6mm前後です。多少の大小であれば問題なくはまります。
私のお勧めはこれ。
まず価格が安いです。そして止めネジ式ではなくDタイプなので、取り外しが簡単です。フェーダーのカスタムや掃除をマメにする人はこちらを選ぶのが無難です。
ちなみにZ2のBROWSEノブとLOOPノブはクルクルとどこまでも回るタイプなのでマーカーは必要ありません。しかしこれがなかなかちょうど良いノブが見つかりませんでした。仕方なくこのノブを黒マジックで塗って使うことにしました。
お次はフィルターノブ。これは止めネジ式です。
GAINノブとFXノブは色をつけたかったのでこちらにしました。これも止めネジ式。ちょっと値段が張ります。
最後はフェーダーです(フェーダーは4mm軸で探します)。これが価格が安くデザインも非常によかったです。
組み上げて完成
これで全てのパーツが揃いました。いよいよ組み上げです。
ウッドパネルの裏面に両面テープを貼ります。両面テープは超強力タイプでなるべく薄いものを選びます。
ちなみに超強力タイプでも男の人の力なら後からなんとか剥がせます。
Dタイプのノブはそのまま押し込めばよいのですが、ネジ止めタイプのノブはドライバーが必要です。精密ドライバーと六角レンチをあらかじめ用意しておきます。
全てのノブとフェーダーを取り付けてついに…完成しました!
いかがでしょうか。とても4万円のミキサーには見えません。
どことなくRANEのMP2014に雰囲気が似ていませんか?
最後に実際に使ってみた感想を。
ノブがキラキラしているせいか、マーカーがどこを指しているか若干分かりにくいです。これはヒルドイド保湿剤(そこら辺にあったので)を塗って曇らせることで多少改善しました…。
また、ノブが純正より大きくなっているからか、回すと少し軽く感じます。特にフィルターノブは真ん中に戻すときに行きすぎることがよくあります。
不満な点はそのぐらいかな。それ以上に狙い通りのビンテージ感が出て私は大満足です。久々にDJ機材でワクワクできました。
でも「本物のロータリーミキサーが欲しい病」を発症してしまったかも…。
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