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Trikoronaインタビュー

「バンドをやりたい」と思ったら楽器が必要になる。
ギターやベースやアンプはなんとなくわかるけど、エフェクターはなんだかわからない。
ディストーションはわかるけど、それ以外のエフェクターはどんな効果があるのかわからない。
わからないのに種類がたくさんあってますますわからない。
「お金も時間もかけずにエフェクターについて知ろうと思ったら詳しい人に聞けばいい」という安易な発想で「誰か教えてくれないかなー」と考えたところ、「Trikoronaにインタビューという体で聞いてしまえばいい」という結論になった。
エフェクターや楽器だけのインタビューだと面白くないので、ついでだからバンドについても聞いてみることにした。
バンドについては、僕が日頃感じる不満を質問としてぶつける形となってしまったけど、快く答えてくれたバンドに感謝です。


機材について

・メンバーの自己紹介をお願いします。過去にやっていたバンドや現在他にやっているバンドなどもあれば紹介してください。

是枝:ギター。ex.LoriMop、ex.Curtain Rail、ex.Coffins(この3バンドではベースを担当)、現在同時進行でUxDxMでVoも取ったりしています。

服部:ドラム。97年にSnatcherに加入した事に始まり、その後Spymaster(現在は脱退)、並行して2000年頃Trikoronaの前身のKoronaを始めました。

小山:ヴォーカル。ex.Pomato(No-yard / Day breakの前身バンド)。

門馬:ベース。大学入学後に軽音楽部に入ってベースを始め、ニルヴァーナとかミッシェルガンエレファントなんかのコピーしてました。その後、女性ボーカルバンドのサポートやbloodthirstybuchersのフォロワーみたいなバンドやったりして、2007年秋にTrikorona三代目ベース担当になりました。
Trikorona以外ではHAIGANというノイズグラインド?なバンドに不定期参加、ごく稀にノイズセッションなんかにも誘われたりします。

そしてほぼ準メンバーでエフェクター作家の金子がいます。


・どのようなきっかけで結成されたのですか?

是枝:2004年に前身バンドである2002年に解散していたKoronaを引き継ぎ復活させる形で結成しました。
バンドをやるに当たって、どうせやるならば(少なくとも日本では)今まで無かった奇妙な激音を出してやろうというコンセプトがありました。
そしてもう一つ、過去の私のバンド活動での反省点としてバンドに神経質になりすぎないで肩の力を少し抜いて長く楽しめるバンドを作りたいという思いがありました。
おかげで2017年現在、13年目突入です。
当初Ebullition、Coalition、Lavel plane、No Idea、Three One Gみたいなレーベルのバンド達を強烈に意識していたのを覚えています。


・Trikoronaといえば「エフェクター」くらいに思っているのですが、メンバーが使用している機材を楽器、エフェクター、アンプ、ドラム、など、できる範囲で教えてください。メーカー名から機材名まで教えてください。また、それぞれのポイントも知りたいです。

(2017年1月の時点です。ライヴ会場、その日の気分により増えたり減ったり随時変更になります)

服部:スネアはYAMAHAのスチールシェルのスネアです。
スタジオに転がってたのを安く譲ってもらいました。
今見たらSD865MEってモデルらしいです。
スナッピーのレバーがひん曲がってきてそろそろ新しいの欲しいのでまた転がってるスネア探します(笑)。
ヘッドはzdzis law / BURNING SIGNのタニ君のオススメでアクエリアンのパワーシンっていうクリアドットのヤツ張ってます。
音ヌケが良いかなと。
ペダルはPearlのP932ってヤツだと思います。
ビーターは最近DWのハードコアビーターっての使ってます。
スティックは主に島村楽器のJUG141っていう6本2000円のヤツですね。たまに売り切れてて焦ります(笑)。


是枝:
ギター

Gibson SG Jr.:1970年製ですがVintage Vibes製のP90やWillkinson Bar bridge搭載など大改造をしているので所謂OLD楽器としての価値はありません。

ESP Explorer:1994年製? Duncan AP2 PU搭載などこちらも相当いじっています。メタリックな音がレコーディングで必要な時に使います。

(他、気分によって使うギターもありますが現在はこの2本が主軸です)

アンプ
Orange OR80:70年代初頭の物と思われます。
SG同様改造と修理を繰り返しているのでたぶん価値はありません。
音が兎角デカくて乱暴です。
これは一生付き合うべき機材と考えています。
他にライヴハウスにあるマーシャルなどのスピーカーキャビネットとRolandジャズコーラスは借りています。
基本的にはメインのOrangeで中低音を出し、ツイーターとしてJCの1chで高音を補います。
そして2chをテルミン用に使っています。

エフェクター類
基本、KSDにオーダーした物は私所有のヴィンテージエフェクター現物を元に製作してもらいました。
そして「こうだったら良いな」という機能を付加しています。
またループBoxやセレクター系は市販品でありそうで無い、またはあっても凄く高価な物を、彼のアレンジで製作してもらっています。
そして彼の新作や試作品は好みの音で無くても基本的に買い取ります。
これが彼へのリスペクトであり、未来への投資だと思ってます。
勿論色は全部サーフグリーンに塗装してもらいますけど。

※KSDについて
Kaneko Sound Design、エフェクター製作家の金子氏の作品です。
元々彼は趣味で自作エフェクターを製作していたのですが、是枝・門馬両名に製作を依頼されるようになり、オリジナルの回路で設計するようになってしまいました。
Trikoronaの音に特化したエフェクター類ではあるのですが一部のバンドにも使用者がいます。
現Coffins/weeprayの阿武君やAtariの沢田君(Swooodは彼の特注モデルです)、Cybaneの田中君とナカゲン君、Stubborn Fatherの森下君、西之カオテッィクの折田さん、Sithterの高野さん…etc.
受注生産ですが、ごくたまにTrikoronaの物販でも売ってます。
気になった方はTrikoronaが窓口になります。

(1)KSD 3way switcher

MORLEY / GEORGE LYNCH TRIPLERを使用していたのですが、踏みすぎて壊れたのでKSDで同じ機能の物を作ってもらいました。オリジナルよりはノイズが低減している気はします。

(2)Boss HM-2

近年、所謂“Swedish Buzzsaw”と言われているブツです。
このエフェクターさえあれば初期スウェディッシュデスメタルの音、ライトニングスタジオの音が完全再現できます。
使い方も簡単で全てのツマミをフルにするだけです。
というかこの使い方以外はこれを所有する限り許されません(笑)。
たぶん本来推奨してなかった使い方なのですけどこれがワールドスタンダードなのです、ある業界では。
私はジャズコーラスのch1につないでブライトスウィッチONのうえにトレブルをフルにしてツイーターとして使っています。
因みに日本製は前期型でこちらの方が音質の評価は高いですが後期型の台湾製の方がレアです。
私は両方所有しています(笑)。
因みにベリンガーのHeavy Metalという機種がモロパクリでかなり近い音出ますね。

(3)KSD Coffins Wah

元々は私がCoffins在籍時に専用のBass用ワウWah Pedalとして作ってもらいました。
元になったのはJENの70年代のCry Babyです。
その回路を元にブースターと原音をmixするブレンダーとワウの可変カーブのコントロールを付け、さらに内部に音域の可変域を変更するdipスウィッチが入っています。
拘りとしては私所有のJEN製の物と同じくヴィンテージのFasel赤インダクターとトロピカルフィッシュのコンデンサーを使用していることでしょうか。
Bassに特化した機能が満載なのですが、現在はGuitar用にコントロールして使用。
JENの物とは違う音に結果なっていますが気に入っています。
現Coffinsで安宅君がほぼ同仕様の物を使っています。

(4)KSD Swoood

ATARIの沢田君の為に作られたOver Driveです。
それをクリッピングダイオードの切り替えSW追加などいくつか改造してもらいました。
このODはここ近年流行している所謂TSベース・トランスペアレント系というやつの流れになるかと思います。
ここに関してあまり拘りはありません。
これも含め過去に金子氏はODを数機種作成していたのですが、今作が私のODの使い方とマッチする物だった為に使用しているにすぎません(勿論彼の他作品は単体で使えばとても素晴らしい出来だと思いますよ)。
では、どういう使い方してるのか?というとこの後に繋ぐFuzzの為の音の調整に使っているのです。
使った人は分かるでしょうがハイゲインなFuzz系のエフェクターは非常に音が割れるんです。
これが魅力の一つではありますが、割れすぎても不快なのでそれをコントロールしないといけない。
そこで前段にODをかましてゲインを0かちょっとだけ上げるとイイ感じになる事があるんですね。
これは持論というか私の経験論ですが歪みの通路を作るようなイメージです。
しかし逆に前段になにも繋がない方が調子よいFuzzも多いので全てに当てはまる訳ではないです。
因みにこれを使用する前はMXRのCustom Badass Modified O.D.かGT-OD、LeqtiqueのMARなどを使ってました。
あとFulltoneのOCDも借りて使いましたがこの使い方としては合いましたね。
世の中には数万円とかするODがゴロゴロしていて、勿論素晴らしいんでしょうけどこういう使い方なんで意図が違いますしあんまり興味無いです。
とはいえ試してみたいし欲しいですけどね(笑)。

(5)KSD Surf Grinder

私の為に設計されたハイゲインFuzzです。
Trikoronaサウンドの要です。
私の理想の歪みはFuzzにDistortion的なニュアンスがほんの少し入った感じ、Fuzzなんだけどメタルのブリッジミュートを刻んでも音が崩壊しないギリギリの境界みたいな音です。
かつて私は古い日本製Fuzzに入れ込んでいて、これで大分近い所まで追い込んだ感はあったのですが音痩せ等不満もありまして。
その辺のリクエストを踏まえて製作された本機。
金子氏曰く基本は往年のTonebender Mk3、そこにBig Muffのニュアンスを取り入れた…と彼は言い張ってますが、実はパクリ元があって私は所有してるんですけど名誉の為に公表できません(笑)。
しかしながら、非常に禍々しい音に加え独特のエッジとコンプ感があり、そのパクリ元とは別物に仕上がってるとは思います。
基本私のOrangeアンプの為に結構ドンシャリ気味に調整されていますが、Toneツマミのいじり方によってはマフ系、国産Fuzz系、もっとピーキーなFuzzへと幅広い音作りができる良いエフェクターだと思います。もちろん激歪Fuzzなんで使う人を選びますけど。
これ売れて欲しいんですよね。
只今、是枝リクエストによるより使いやすい後継機を開発中との事ですが…

(6)KSD 2loop Box with boost

空間系エフェクター制御の為のループBOX。
loopAの(7)のCE-1とloopBの(8)~(10)のペダル群をここで切り替えます。CE-1は音痩せが著しいのでloopAのみ後段に金子氏設計のBoosterが仕込んでありここで音量を調整します。

(7)Boss CE-1

Boss初期の超名機といわれるコーラス。
所謂ジャズコーラスのch2に入っているコーラスをペダルで再現したらしいんですが回路は別物のようです。
まあこれは超名機と言われるだけあってネットとかでも簡単に逸話は出てくるかと思います。
因みに最近Bossが技シリーズで出したCE-2Wがこの音出ると謳っていますが、全く別物です。
CE-1を2台所有している人が言い切りますよ(CE-2W自体は買って損の無い、凄く良い音だと思いますけどね)。
兎に角古くさい80年代前半バリバリのアナログコーラスの音ですが、コーラスモードとヴィヴラートモードの両方とも抜群に使える揺れ。
設定によってはフランジャー的な音も出せます。
まあ音痩せも激しいしなんか雑な音です(笑)。
でもこれが無いと気分が乗らない。
名機故にレプリカやシミュレーターを含め再現したエフェクターは数えきれませんが本物のあの感じと同じ臭いがするのは今のところ出会った事ないです。

(8)Bootleg Dee spider

トレモロ。
かつてトレモロは相当な機種を試しましたがほとんどダメでした。
求めたのは
1. 速い
2. 音量が下がらない 
の2点。
まずそもそもトレモロは古いFenderアンプに内蔵されていたエフェクターなのでそれを再現しようとするエフェクターばっかりなのです。
その往年の揺らぎを追求した機種が多いため、速さを出せる機種は今でもそんなに無いのではと思います。
でも自分は昔からブラストビートみたいな速さを出せるトレモロ求めてたんですよ(笑)。
そして(最近の機種では改善されているかとは思いますが)音量を上げ下げする効果故に、ONと同時に激しい音痩せに悩まされるのがこのエフェクターのジャンルだと思います。
Dee spiderはこの2点をクリアしています。速さは通常のトレモロの4倍速以上は出ます(そんなには要りませんけど…)。
音量差も全く気になりません。
Fenderアンプの音みたいな暖かさみたのは無くやや冷たい音ですが本機はデジタルでは無いようです。
もう15年以上は使ってるんですが特に不満も無く、トレモロにはこれ以上の余計な機能を求めないので使い続けています。

(9)KSD Phader War

Ross/Phase distortionのフェイザー部分に金子氏独自の解釈を加えた物です。
オリジナルはdepthとspeedノブだけですが、それにpre gainのノブを追加し音量を調整できるようになっています。
さらに2ch仕様になっておりspeedを2通り切り替えられるのも本機の特徴でしょう。
chによって音も違いがあり、ch1は若干あっさり目、ch2は音がエグ目という感じでしょうか。
そしてオリジナルよりもspeedノブで速さが上げられます。
オリジナル機はベースにもつかえる程に太くて音痩せしない名機だと思ってますが、あんまり有名ではないですね。
低域成分に独特なクセがある強い音が特徴なんですがPhader Warでは高域倍音がプラスされてバランスが良い音になっているかと思います。
是枝仕様と門馬仕様ではツマミの構成や回路が若干異なります。

(10)VOCU CTE-2000

このサイズですが本物のテープエコーです。
電源を入れるとテープが回り出します。
ライヴで最前列にいる人や、会場のスタッフの人によく突っ込まれますね。
その為に置いてるようなもんで。
まあ実際音は…アナログディレイとしてはそこそこ程度じゃないですか。
ちゃんと発振もしますが、さりげない感じの自然な音です。
ちょっと地味な感じですが引っ込む訳でもなく。
中身の構造がもう脆弱で、足下に並べたり大音量による振動とか考えて設計されてないような気がします(笑)。
しゅっちゅう壊れるのであちこちに金子氏による修理と改造が施してあります。
まあ本物を足下に置く事に意味があると言う事で(笑)。
これも因みにですが、アナログディレイで私の中で最高峰はElectro-HarmonixのDelax memory manです。
私が所有してるのは90年代末の復刻モデルですがこれには全然太刀打ちできません。

(11)Digtech RV-7

本体最終段に置いているのはデジタルリバーヴです。
このエフェクターがなければ頭からケツまでアナログで完結するんですけどね。
元々シューゲイザー的な音を求めて導入しましたが、リバースモードというのがありコレがえげつない効果音を出すので手放せなくなってしまいました。
音は基本冷たい硬質なデジタルの残響系です。
でもこれ以外をアナログで固めているからか非常に丁度良い効果が得られます。

(12)KSD 2way selector

(1)の簡易版2ch仕様、所謂ABセレクターです。
ここではテルミンのon/offの為に使用。
本来は別の目的で作ってもらいましたが。

(13)KSD Theremin custom

テルミン。
たぶんKSDの中で一番売れた作品です。
音程が取れるようなムーグとか高価な機種からすると完全にオモチャなんですが、飛び道具的な感じで使うには十分です。
ただこのクラスの他のテルミンと比べると圧倒的に音は太いと思います。
通常verにはないトレブルカットのノブを付ける改造が施してあります。

(14)Hotone Tape EKO

テープエコーのシミュレーターだそうです。
近年流行の極小筐体なので使っているだけです。
音は可も無く不可も無く…まあ暫定と言った感じで使用中。
ハイカットされたデジタルディレイという感じかな。
これもリバースモードが付いているので買ったのですが、それはあんまり面白くなかったです。

(15)Xotic Bass RC Booster

ベース用のプリアンプ。
私のCoffins時代の後半で大活躍してくれた機種ですが、今はテルミンの音質補正用です。
手頃な大きさのEQが無かったので使用してるだけで、何か良いのがあったら換えるでしょう(マイクスタンドにこれらの機材を固定する為、小さいのが良いのです)。
Xoticの製品は凄くベース用もギター用も音をうまく纏めてくれていいと思いますよ。


門馬:ベース本体はSpirit BY STEINBERGER XT-25というヘッドレス5弦ベースを使っています。

2017年からは元々搭載されていたピックアップを除去し、LACE TRANSENSORの4弦ジャズベース用リアピックアップを一つ搭載して使っています。
EMGピックアップを載せたアクティブベースを長年使用していましたが、近年自分のピッキングする指の力が強くなり過ぎたためかライブ中に音が出なくなる事態が頻発、電池不使用のこのベースを使うようになってそのようなトラブルは鳴りを潜めましたが現在も試行錯誤中です。


エフェクター:

(1)MASF PEDALS SWAN SONG

SWAN SONGは作動させるとベースの太い音が全て消え失せ、何をどう弾いても「ピーキュウィィィィィィィイイイイイイ!!!!」という甲高い音に変換されてしまいます(今販売されているものは原音ブレンドコントロールが付いているはず)。
ペダル操作である程度音域変化がつけられます。
ベースとしては全くもって必要ない機材ですが自分は「片輪の馬車(カタリンノバシャ)」の間奏部分やライブ中の曲間などで多用しています。
以前はmoogerfooger MF-107 FREQBOXで甲高い音出してたけど、こっちの方がコンパクトで好みの音が出ますね。
HAIGANやノイズセッションでも必ず使っている感じです。

(2)MASF PEDALS RAPTIO custom

RAPTIOは、作動させた瞬間に鳴ってた音をバババババ!と連打ディレイしてくれて、それに演奏被せていける感じです。
ベースで音の隙間をぐちゃぐちゃに埋めたくなったら踏みます。
市販品はスイッチ踏んでる間だけ作動なんですが、これは踏む度にオンオフ仕様、あとエクスプレッションペダル接続端子なんかをカスタムで付けてもらっています。
いまトリコロナの昔の曲練習してて、後半部分でこれ使ってみようかと画策中。

(3)Guyatone BE2 BOTTOM EQUALIZER

イコライザーは1kHzを増幅してベースをバンドサウンドの中から多少浮き出させるために使用。
トリコロナは中音域に様々な困惑サウンドが犇めいているのでこれは重要機材です。
グヤトーンのマイクロシリーズは丸っちくて可愛いデザインなので好き。

(4)KSD SURFGRINDER with BLENDER custom

ある日、金子が是枝にファズ作って持って来たんです。
「え、こいつエフェクター作れるのか?意外だぜ」世界に一つだけのシグネチャーモデルを手にご満悦なギターリーダーを見て羨ましくなり、音も確かめずに「俺にも作って!」と。
当時使っていたBASS BIG MUFFは原音ブレンドモードだと全体音量のコントロールが効かなかったのでその辺りを解決した仕様で、と心の中で思いつつ、実際には「ブレンド機能付けて~」「この斜めってる筐体(エフェクターのボディ)で作って~」とオーダーしました。
当時金子は原音ブレンドコントロール回路を作った事無かったみたいで試行錯誤したようですが良い感じで出来ましたね。
BASS BIG MUFFより粗いドンギャリ!なサウンドとベース原音をバランス取って出力、最高!カネコ凄え。
恐らく今後も不動のメインファズ。
鉄製の傾斜が格好良い筐体はタミヤカラースプレーとマスキングテープを駆使して自分で色塗りしました。
もうボロボロですが。

(5)Charlie Stringer’s SNARING DOGS with MASF PEDALS LAVENDER HEAD

ワウファズはファンク大魔王ブーツィー・コリンズのシグネチャーモデルです。
ペダルコントロール範囲がかなり広くてワウ音&見た目が派手ハデで最高!
ファズはBIGMUFFをショボくした感じでイマイチだったのでMASFに依頼してラベンダーヘッドの原音ブレンド機能付きを代わりに載せてもらいました。
原音にブーストかかる機能も付いてて最近多用気味。
「Soil」の最後で両方踏んでます。
ワウは適当に普段使わない場面でも酔っ払って踏んじゃったり「治らない風邪」の間奏でも踏んだりするかな?
ファズは最近「蝮」の演奏中踏みっぱなしでジャパコアみたいな荒々しいベースサウンドを出しています。
ワウはあまり興味無かったんですがある日仕事帰りに日比谷公園の辺りを通りかかったらゆらゆら帝国がライブしてて、しばらく立ち聴きしてたら「ロボットでした」の間奏がサイケワウファズギターで物凄くて。
「サイケになりたい、ワウ買わねば!(ベースなのに)」と思い立ちそのまま御茶ノ水に向かって閉店間際のシモクラセカンドハンズに入って中古のこれを見つけて即買いしましたね。
重さ2㎏近くあるのだけが欠点ですが、サイケサウンドツールとして、また己の好きなファンクミュージックスタイルの発露の一環として今後も使い続けるつもりです。
俺のワウに関しては今のところKSDの出番は無いかな。

(6)KSD Phader War

フェイザーも最初金子が是枝に作って持って来たのを見て「俺にも!(二回目)」てな感じで入手しました。
それまで使っていたMXR phase90よりも低い音域から「ジュワン!」と派手にかかり、中音域の押しが強いのがお気に入り。
音量調整出来るのも良い。
低音寄りモードと中音域強調モードが切り替え出来るんで、「蒲団」で各モード使ってます。

(7)YAMAHA FL-100B BASS FLANGER」(DOD FX72 BASS STEREO FLANGERに交換する場合も有り)

ベース用とされているフランジャーは「シューワアアアア」なエフェクトサウンドに原音多めに混ぜて出力してると思うのですが、まだ決定版に出会ってない感じです、カネコ何とかして。
シュワシュワサウンドは好きなので「意識の高い豚」の間奏とか「蒲団」の最後フェイザーに重ねてかけたりとか、色々な局面で踏んでます。
ヤマハのは原音重視、DODは派手ハデにシュワシュワ。

(8)MASF PEDALS life convulsion custom

オクターブファズはノイジーになりたいときに適当に踏むものです。
ビー!な感じで五月蝿く。
最後に音をギャリーン!なファズ味に染め上げる危険調味料。
どこで使うとかあまり考えないけれど、ふとした拍子に突然。
これも原音ブレンド機能付けてもらってますが最近はファズサウンドのみ出力してるかも。

1kHzを増幅させたBOTTOM EQUALIZERと、歪み最大設定でベースの原音を多めにミックスしたSURF GRINDERを常に作動させて基本のベースサウンドとし、低音域を過剰に侵食してくるギターサウンドに強めのフィンガーピッキングで対抗しつつ、要所要所で他のエフェクターペダルを踏んで変な音を出します。
4弦ベースより低い音域がある5弦ベースを使用していますが過剰に低音を増幅することはせず、ピッキングアタックを少し強調し、バスドラムよりやや腰高に定位させたベースサウンドでハードコア的スピード感を損なわないように努めていますが、なかなかうまくいきません。

最近演奏してないけど「盗まれた階段」のイントロとか「泥濘」の後半とかをライブでやるときはこの8台全部スイッチオン!とか普通にやる感じですね。インプロヴィゼーションとかアドリブとか即興演奏とか格好良く言い訳して、「ビーガガガジュワジュワシュイーン!」という雑音に酔いしれる。
あと常にKSDサーフグラインダーが作動しているので、ラベンダーヘッドやオクターブファズを作動させると「ベースにファズ2台掛け」な状態にしばしば陥ります。実はファズダブル状態なら、通常のサウンドシステムを擁する会場では卓也のギターサウンドに絶対負けない自信がある!
でもこれを常用するとトリコロナサウンドのメリハリが無くなるからライブの一部でのみ使用に留めております。


・エフェクター選びのコツはありますか?

門馬:エフェクター選びの基準は「派手なサウンド変化」「作動させたときに音量が下がらない&明らかに損なわれる音域が無い」「見た目の良さ」以上三点。

エフェクターの音の傾向や値段の善し悪しは、とにかくピンと来たものを買って手元に置いて使ってみてとしか言えません。
YouTubeなんかでエフェクター試奏動画見てもお店の片隅で試奏してもその機材と自分との本質的な相性なんて見極められないと思うので。
手元に置いて練習&ライブで何度も使ってようやく音の傾向が掴め、これを様々なメーカーの新品中古エフェクターに対し繰り返すことでメーカーや機種毎の自分なりの費用対効果が定まってくるはずなので。
物事全て近道など無い。
でもこの行程が楽しい。
まあ最近は自分のサウンドシステム持ち込んで試奏できるお店とか試奏品を郵送貸し出ししてくれる仕組みもあるから、21世紀の利便性を各自有効活用してください。

こやつらを接続するライブ会場のアンプ&スピーカーキャビネット、これ次第でサウンドキャラクターは激変します。
永年使い倒された低出力でガリガリと異音が混ざるアンプヘッド&低音域再生に特化した大口径スピーカー(劣化ボヨンボヨンで張りのある中高音域再生は絶望的)………こんなのに出会ったらどんなエフェクター繋いでも意味なし、目の前真っ暗です。

これを読んでる皆様、エフェクターなんてものに投資する前にやることがあるはず。
「エフェクターに頼らず練習しろ」「良質な楽器本体を買え」「良質なアンプ&スピーカーキャビネットを買え」「これらを運べるハイエースを買え、もしくはライブ毎、練習毎にタクシーを呼ぶ財力を確保しろ」

以上です。
皆様健全な機材ライフをお送り下さいませ。


・ベースでエフェクターを多用している理由とポイントを教えてください。Napalm Deathのシェーンが何かのインタビューで「ベースにディストーションをかけるとヘビーになる」と言っていたのですが、僕は以前、ベースにディストーションをかけた時に思ったのは「音が軽い」でした。でも、言わんとすることは何となくわかります。ベースの音の太さとディストーションで得られるヘビーさはトレードオフだと思うのですが、何かポイントがあるのでしょうか?

門馬:エフェクターを多用しているのはアンプ直結では出せない「ドギャジュワリンビキイイイイゴルルッピークワァァァァァァァンン!!!」みたいな音を出すためです。トリコロナで使っているベースサウンドの大部分は今のところ二つのエフェクター(KSDのファズとGuyatoneのイコライザー)で出せるのですが、状況によって上記のような音を出したくなるので。
トラブルなどでエフェクター全部取っ払ってベースアンプ直結でトリコロナのライブやった事もありますが、やはり足元の操作でジュワリンゴルルゴー!ピーピーピー!と音を変化させたいのです。
たとえそのような行為/役割をベースとして求められていなくとも、己の内なる欲求に従い、やらねばならんのです!

ベースサウンドを歪ませると音が軽くなる、というのは数多くのベース用歪ませエフェクターの登場で大分解決されたんじゃないですかね。
自分が初めてエフェクター買った1997年頃は、楽器屋さんに常時置いてあるベース用歪みペダルってBossのベースオーバードライブかロジャーメイヤーのVoodoo Bass(正確にはベース用ではない)くらいしか無かったけれど、いまはネット販売含めて数十種類以上あるから良い時代ですね。

「ベースの音の太さ」と「ディストーション(歪み)で得られるヘビーさ(派手な音色)」のバランスはそれぞれの音のブレンド具合でバランスを取っている感じです。
自分の使っているベース用歪みペダルは三つとも原音ブレンド機能付きのファズです。
オーバードライブよりも派手な音色で、ジャー!なディストーションよりもガギャー!と粗く/荒く歪むファズ。
その歪みコントロールを最大にセットしつつ、原音 / 歪みのサウンドバランスをブレンドコントロールで7:3~8:2くらいに調整しています。
歪ませていてもこのように原音多めなサウンド構成なので、ベース本体の音色、特にピックアップの性能が重要となります。

トリコロナでのベースサウンドの変遷は、

1. EMGピックアップのフルレンジサウンドの高音域をカットしてから歪ませる方式で長年音作り(メインの歪みペダルはAMT FATAL TUBEからelectro-harmonix BASS BIG MUFFを経てKSDに固定)してたのが、年々荒く力強くなるフィンガーピッキングに音途切れエラーを起こすようになりそれまでのメインベースの使用を断念。

2. ベースをスピリットXT-25に持ち替え音途切れは無くなるが、Low-B弦音をちゃんと拾えない非力なピックアップサウンドにイラつきながら1年ほど試行錯誤(この頃エフェクターの接続順を現状に変更)。

3. ピックアップをLACEに交換し、トーンを絞ってちょっとジャコパストリアスみたいなサウンドを歪ませる事に光明を見出す。

みたいな感じです。

ベースって歪ませてギャリーン!みたいな音にしてもその派手な音域がギターやシンバルの音域と被って打ち消されてしまいがちなので、楽器全部が同時に鳴ってるときに派手な部分がなるべく生き残るようにファズの粗い歪みを選んで使ってますがほぼ徒労に終わっています(最初に使っていた歪みペダルFATAL TUBEのキメ細かな歪みサウンドのときは本当にギターサウンドに全部喰われてました)。
で、バンドで必要とされそうなベースの太い音域は原音ブレンドで確保しておく感じです。

ちゃんとしてるバンドだったらギターの低音域カットしたりベースもボーカルの邪魔しないように中音域の特定の部分カットしたりするんでしょうが、トリコロナはそれぞれやりたい放題鳴りっぱなしです。
みんな音域も音量もカットじゃなくブーストで考えてぶつかり合う感じ(ライブ会場の機材&電車で運べるだけの手持ち機材を駆使して)。
整理されていない音の交通事故。
だから汚い音になってるんでしょうね。
歪んでる倍音はギターに打ち消されても雰囲気づくりの生贄と割り切る。
ギター鳴って無いときに自分の好きなベースサウンドが鳴ってれば良いかなと。

Napalm Deathのシェーンはたしかワーウィックのベース使ってたのかな?
自分の経験からするとワーウィックやG&Lのベースは強力なピックアップを搭載しているためか、歪ませても低音域が削がれず、ヘビー且つ派手なサウンドになった覚えがあります。
低音が主張し過ぎな感じが、自分がトリコロナで出したい中音域重視なベースサウンドと微妙に隔たりがあると感じたのでいまは使用してないです。
ドゥーム、ファンク、ヒップホップやるならワーウィック良いだろうな。もちろんドリカムやメシュガーも!


・PCでアンプシュミレーターを使っているとのことですが、何かオススメはありますか?

是枝:正直ありません(笑)。
おすすめでは無く使ってるやつの感想とおじさんの意見を。
Line6のPODのオーディオインターフェースと同梱されてたの使ってます。
最新とかでは無いです。
以前、ちょっとオンラインでの音の提供が必要だった事があって安価だったので買ったに過ぎません。
もっと使い易い機種とか、レコーディングで突き詰められるのも他にあるのではないでしょうか。
あとLine6はシミュレートしてる機種がややマニアック過ぎるとか言われてますので。
とは言え現実ではありえない機種同士の、特にアンプのヘッドとキャビの組み合わせとか、名機と言われるエフェクターに本来ないパラメーターをいじれたりして楽しいとは思います。
クセもそれなりに再現してると思います。
OrangeとかマーシャルのJCM800とかVOXのAC30コンボとか。
あとエフェクターでいえばRATとかうまく特徴とらえてんなと。
最新機種とかはもっとリアルなんではないでしょうか、十分遊べます。
しかし、これはおじさんのおせっかいですけど、デカいアンプでデカい音鳴らしてみないと設計した人の本来の意図は理解できないんじゃないでしょうか?
音を知ってる人が面白えなーと関心するだけで本物じゃない訳ですから。
2017年現在の時点でもまだ若干の乖離があるように感じます。
いきなりこういったシミュレーターからスタートした若い人が作る音を否定はしないですし、むしろ興味はありますよ。
実は私もレコーディングでも使った事ありますし。
ギター本体のシミュレーターとかも登場しているし、これがここ10年前位からのスタンダードだと思うので。
要は方法論関係無く格好いい音になればそれが真実で勝ちですから。
シミュレータースタートの人が例えば私のOrangeの爆音聴いてどう思うのか聞いてみたいですが怖いところもあります。


・チューニングも教えてください。

是枝:ギターがドロップD(レギュラーチューニングの6弦のみ1音下げ)、ベースは5弦のレギュラーチューニングです。
弦楽器隊2人でチューニングが違うのは苦労していますが、音作りの秘訣だったりもします。

服部:ヘッド張ってボトムはユルめにしてますがこれでいいのか自分でもあまり分かってないです(笑)。


・機材の情報は何から得ているのですか?

是枝:以前は雑誌等書籍でしたが、今はネットが中心です。
ほぼ毎日いくつかの店舗や通販のサイト、ネットオークションにはざっとですが目を通しています。
また対バンの方々の使用機材は大体チェックしていて、気になった場合は話聞いたりしてますね。

門馬:インターネット、雑誌、ライブ会場など。情報収集はここしばらくさぼり気味です。


・たくさんの機材を使ってまで目指したいこと、こだわりたいことは何でしょうか?

服部:基本練習にスネア持ってかないしライブでも仕事の後だったりするとめんどくさくてペダルしか持っていかないんで自分はそうでもないけども弦楽器隊は大変だなーと

是枝:身も蓋もないですが、バンドとして特にはありません。
まああれだけライヴにエフェクター並べてたらびっくりはしますよね?その程度です。
たまたま機材を好き過ぎる人がパワーヴァイオレンスのバンドでギター弾いてる、といった感覚でしょうか。
レコードコレクターや古本蒐集家に似たところがあります。
傷とか無視してガンガン踏みつけるのでちょっと違うかもしれないですけど。
なので必要最低限な機材でプレイしているドラムの服部との落差も説明がつくと思います。
その辺はアンプの山を積んで大口径のシンバルを持ち込むdoom / sludge / stonerのバンド達とは違っているでしょうね。
ただ、各自音の理想のスタイルを持っており、それがぶつかって化学変化起こしたり、時には妥協したりする事で、着地点を探っています。
あるいは試行錯誤自体を公開しているのが拘りなのかもしれません。


・目指している、参考にしているバンドや作品はありますか?

是枝:とりあえずGaspの1st album「Drome Triler of Puzzle Zoo People」。
基本はコレです。
全てではないですが。


・機材には月にどれくらいお金を使っていますか?

是枝:以前はかなりの金額掛けていたと思いますよ。
毎月エフェクター買ってましたから。
ただ金子氏に足元を委ねるようになり、最近はそうでも無いです。
とは言え年に数個はエフェクター買いますし、金子氏に支払うギャラとギターとアンプのメンテナンス、弦などの消耗品で年間15万位でしょうかね?

門馬:ここ数年金欠なので機材にお金をかけて無いです。
昔は1ヶ月あたり数万円使ってたなあ。
試奏やネット動画見ただけじゃ判らんので、買って手元に置いて使ってみて良ければ足元に組み込み、ダメならバイバイを相当数繰り返した結果、エフェクターに関してはとりあえず現状がベスト、かな…。


・練習はどれくらいの頻度で1日何時間くらいしているのでしょうか?

是枝:バンドでは月に3回位2時間ずつです。
本当はもっと入りたいのですけどね…
練習が少ない分、各メンバー新しいアイデアが出たらライヴ本番でも試します。
新曲もある程度は未完成のままガンガンやります。
その辺りはインプロバンド的な感じもあります。


・機材が多いと練習が大変ではないですか?

是枝:無茶苦茶大変です。
でも好きな事ですから…
中年なので身体鍛えてると思えば少し気持ちが楽です。
因みに上記の機材一式を基本電車で運びます。
東京からこれ持って新幹線で大阪には時々行きますし、飛行機で高松にも行きました。

門馬:自分の機材セッティングは以前よりかなりコンパクトにしたのでまあ大丈夫です。
横のギターの人を見ていると、重くて嵩張るアンプなどの輸送、準備、終了後の地獄の片付け(別名:消えないテトリス)、大変だなあと毎度思います。


・家で音を出すときに気をつけていることや苦労していることはありますか?

是枝:家では殆ど生音でしか演奏しません。
家庭用のアンプも持ってますがケーブル類の緊急チェック用で殆ど使いませんね。
オーディオインターフェースでPCにつないでアンプシュミレーターからヘッドフォンでモニターする事はたまにありますけど。
生音でも嫁にうるさいと怒られますけどね…。
なじみのスタジオが2駅隣なので本格的な機材のチェックや音作りはそこで行います。
大音量で自分のアンプで鳴らしてみないと分かりませんので。

門馬:これまで隣がずっと空き部屋だからと問題なく過ごしていましたが、最近誰かが入居したようなのでどうしましょ。
まあ週に30分だから大丈夫だと思います。
音楽聴くときも機器のボリュームだいたい10くらいなので。

服部:パッドをトコトコ位なんで別に。
つか最近それすらしてなくてヤバいです練習します。


・身も蓋もない話ですが、聴いてる方としてはバンドが一生懸命ペダルの操作をしている割には音の変化を感じないのですが、そこに込めた想いを教えてください。

是枝:まあ、そういう並べるパフォーマンスではあります。
上述の通り、エフェクターをはじめとした機材が好き過ぎるので。
でも自分の中では明確な違いがあり(笑)、気分とか感情で踏み分けたりとかしてるんですよ。
特にアナログディレイとフェイザーには凄く拘りがありましてね…。
因みにですが、常時ONにしているエフェクターは4つで、実はこれだけしか使わない曲も多々あります(笑)。

門馬:YouTubeに上がってるTrikoronaのライブ動画観て、自分としては十分ビキギュワ出せているので問題ないです。
「ここのピュワって音、ギターやテルミンじゃなくて俺が出しているのだ!」などと声高らかに主張する気もないなあ。
…で、少し脱線してライブ現場でのトリコロナベースの話ですが、ギターとベースそれぞれが音域整理をろくにしない爆音を被せ合い打ち消し合ってるような感じなんで、PA設備がシンプルな会場やベース音量の控えめな会場(結構多い)などでは音の変化(場合によってはベースサウンドそのもの)が満足に伝わらない場合があるのですが、しょうがないと思います。
「バンドで満足出来る音が出せないなら演奏しない」よりも「なんとかやってみっか!」のほうが色々な場所で良い思い出が作れるはず(都電荒川線とか)。他ジャンルに比べて肩身が狭く演奏出来る場が少ないハードコアな界隈に身をやつしている我々ですが、色々な場へのお誘い、お待ち申しあげておりますm(_ _)m


・アナログディレイとフェイザーのこだわりを教えてください。僕は素人なので全くわからないのですが、アナログということはデジタルディレイがあるのですか?違いは何でしょうか?

是枝:アナログディレイとデジタルディレイについて。
すごく簡単に言えばカセットとMP3の違いみたいな(笑)。
そうじゃない機種もありますが、基本アナログは甘く太くやわらかい、悪く言えば濁ってこもった感じ。
一方デジタルは冷たくクリアで硬質な感じです。
また、デジタルの物は色々な機能がある物が多く自由度が高いですが、アナログの物は基本一つの効果しかなくて頑固一徹という感じでしょうか。
私はこのアナログ独特の音に取り憑かれてしまいました。
アナログ特有のちょっと濁った暗めの音というのが心地よいと思います。
あと、アナログはその特性からプレイヤーの手癖とかアラとかが誤魔化されてイイ感じになっちゃうんですけど、デジタルはその辺がモロに跳ね返って来る感じでしょうか。
この辺は好みだったり、やってる音楽によって使い分ければいいんじゃ無いでしょうか?
とは言え、最近のデジタルのやつは古いアナログ機種のシミュレートとかでアナログ感出せるのも多いです。
またアナログを謳っている製品でも実は中身はデジタルだったりとか。
逆に初期のチープなデジタルディレイを再現した機種なんかも登場したりして面白いなと思います。
余談ですけど、私が使用しているVOCU CTE-2000は正確にはBBD素子を使用したアナログディレイではありません。
本当に内蔵テープが録音と再生を繰り返しているさらに原始的な回路の機種になります。

フェイザーについて
揺れ物エフェクターは他にコーラス、フランジャーなんかがありまして。
特にフランジャーは原理は違えどフェイザーと似たような効果なんで区別も難しいんですけど。
どちらかと言えばフランジャーは繊細で高域が立った感じ、フェイザーは音が雑で乱暴なイメージで中低域から持ち上がる感じ。
乱暴・雑・エグいを多用してますが、やっぱり私はCombatwoundedveteranmみたいにエフェクターでも変なのが好きみたいですね(笑)。
コーラスに関してはBossのCE-1という一つの究極に出会ってしまった事で他の機種に興味があまり沸かなかったのですが、同じ揺れ物のフェイザーはもっと良い機種があるのでは?と思い古いのを中心にかなりの機種を試しました。
自分の中では「さわやか系」と「エグい系」の2つに分類してまして、どちらも良さはありどう使うかですね。
前者は自分が今所有しているのだとGrecoのPhase tone(たぶん中身はmaxonでしょう。金子Mod済)。
後者はRossのPhase distortionが一番かな?


バンドについて

・以前、服部さんに「Trikoronaも今のパワーバイオレンスブームの恩恵受けてるの?」って質問をしたところ、「全くない」とのことでした。バンドが取り巻く状況がバンドメンバーと外の人では見え方が違うと思いますが、Trikoronaは今のシーンの流れをどのように感じているのでしょうか?ちなみに、僕は僕が思っている以上にTrikoronaって人気、知名度がなさそうに感じます(以下、それを前提で質問をします)。

是枝:よくパワーヴァイオレンスがリバイバルしたよな~と思います。
時代の流れっていうのは分からないものだと。
単純に嬉しいです。
でもうちらはリバイバルバンドでは無く、かと言ってオリジネーターでも無い。
独自の解釈と他のジャンルからの影響もまぜこぜにした上、10年以上も熟成してしまいました。
恩恵はあまり無いです。
でも別にいいかな~と思ってます。


・僕がTrikoronaを知ったのはmyspace時代ですが、初めて聴いたときに「この人たちはCombatwoundedveteranとGaspが好きなのかな?」と思いました。このようなサウンドスタイルを選択した理由を教えてください。あの時代はそもそもパワーバイオレンスが下火の時期でした。

是枝:Gaspの「Drome Triler of Puzzle Zoo People」と、Combatwoundedveteran はOrchidとのSplit 6”、「What Flavor Is Your Death Squad Leader?」7”を初めて聴いた時は脳が揺れました。
その初期衝動は未だに私の音楽の心臓部です(まず、よくそれをTrikoronaの音から見抜いたと関心しております)。
当時、自分は学生で高円寺20000Vなどを中心にライヴハウス通いに夢中でした。
沢山の素晴らしいバンドのライヴを観る事ができたと思っています。
その経験は今でも糧です。
しかし、この2バンドには今まで音楽に求めていた全て「激しさ」「速さ」「五月蠅さ」「重さ」「変態さ」が別のベクトルであるじゃないかと本気で思いました。
ある意味で、今まで聴いた事の無い音でした(Gaspに関してはコンピやらsplitなどで聴いてはいましたが、アルバムは別物でした)。
自分の中では99年いっぱいまではパワーヴァイオレンスは下火という印象はあまり無く、むしろ最先端であるが故に難解で理解されてないハードコアという印象でした。
そういう解釈でGaspの1stを聴いたので、これはある種ハードコアの集大成なのでは無いかと勝手に確信してました。
そしてそのGasp解散。
その影響もあり、自分の中では2000年に入ると急激なパワーヴァイオレンスの終わりを感じましたよね。

Combatwoundedveteranについては後の質問にて。

それと当時私はCurtain Railというバンドでベースを弾いていました。
このバンドも奇妙なパワーヴァイオレンス解釈をしたバンドだったのですが99年の正月にUS西海岸ショートツアーを敢行しています。
そこでCapitalist CasualtiesやLack of Interest、Society Of Friendsなんかと対バンしました。
オリジナル世代の空気を生で吸うことがギリギリできた影響も非常に強いです。
そういった理由からパワーヴァイオレンス、エモヴァイオレンスを踏まえた上での+αを追求してみようというのが事の発端です。
Orchid及びその周辺のバンドの影響も強く受けて、以後自分の中でこのスタイル以外考えられなくなりました。
Curtain Rail 解散の2000年くらいからその気持ちは固まっていました。
2004年Trikorona結成時点、というか2017年現在でもその気持ちは変わらずと言った状態です。繰り返しますが、リバイバルとかじゃ無くて単純に時代遅れなんですよ。

服部:元々USコアとかSxE系とかLos Crudosとか好きでその流れで代表的なパワーバイオレンスは聴いていましたが、実はこのバンド始めるよってなってからこのテのをコレエダ君に色々聴かせてもらったのであんま偉そうなこと言えません(笑)。
このようなスタイルがあるんだなってのは後から知ったカンジです。


・僕がTrikoronaをCombatwoundedveteranっぽいな、と思った理由の一つにドラムのリズムもあるのですが、服部さんはこの手のバンドを是枝さんに教えてもらったとのことですが、影響を受けているのですか?

服部:ハードコアバンドとしては先にSpymasterやってたんでハードコアドラムのスタイルとしては影響つうと80年代HCのがデカいですかね。
Combatwoundedveteranは割とスラッシーに走るところ多いし共通点はあるかもです。
あとは聴き始めてから影響受けたカンジですね。


・DiscogsにCombatwoundedveteranはパワーバイオレンスの最初の世代とは違うスタイルのバンド、と紹介されていて「なるほどな」と思ったのですが、同時に彼らが活躍していた時期はパワーバイオレンスが下火だったと思います。Combatwoundedveteranを好きという人と出会ったことがありますか?僕はTrikoronaのスタイルが伝わらない理由の一つだと思っています。ついでなのでGaspが好きな人も。日本中のCombatwoundedveteran、Gasp好きを集めたらTrikoronaになってしまい、結果、誰もいなくなった、という可能性もあるんじゃないですか?

服部:そうかも知れないです。
あーでもkoronaの頃、断食(pre-Fasts)と対バンしたときにギターのバンチョウに「Combatwoundedveteranみたいですね!」ってツッコまれた記憶がありますね。
あと友人に詳しい人はいるにはいますね。

是枝:「最初の世代とは違うスタイルのバンド」というのは納得ですね。
当時それを感じました。
Combatwoundedveteranの音に古い頭のやつらに「俺たちの音なんかわかってたまるかよ!」みたいな勢いを勝手に感じてましたね。
後のHoly Mountainの音を聴くとそういう訳ではなかったのかも知れませんけど。
Gaspはまだしも、Combatwoundedveteranの影響を公言している人ってほぼ会った事無いです。
ごく数人がTrikoronaってGaspの影響あるでしょ?って聞いて来た事ありました。
うちのメンバーですら、私が吹聴してなかったら聴いてないと思いますよ。
2000年代前半位、この2バンドのLPの中古盤は300円とかの捨て値で売られてたので、私は見つけては買って無理矢理友人に配るという啓蒙活動をしていました笑。


・僕がTrikoronaからCombatwoundedveteranとGaspを感じた理由なのですが、Combatwoundedveteranのノイズはディストーション全開でハウリまくっていて無秩序なんですが美しさがあり、逆にGaspはノイズを人の手でコントロールしている整合性の美があります。「ロウ」と「カオス」の関係だと思っています。CombatwoundedveteranとGaspが表現した逆方向のノイズ表現を両方同時に成立させようとしているのでは?というのを感じました。CombatwoundedveteranとGaspが活動していた時期のハードコアはギターのノイズ表現は一つのトピックだと思っていて、スタイルは違いますがDisembodiedもやっていることは同じだと思っていました。当時のハードコアの流れを知っていればTrikoronaからCombatwoundedveteranとGaspを感じることはそんなに難しいことではないと思っていて、だからみんなCombatwoundedveteranとGaspを知らないのかな?ということを思っていました。

是枝:まさに私がやりたい事はそういう事です。
その通りでCombatwoundedveteranとGaspは両方とも凄くノイジーなんですけど方法論が違いますよね。
自分は前者にガレージバンドやB級以下初期パンクとかのロウさと熱さを感じていて(でも彼らは全然ロックンロールしていない笑)、後者はハーシュノイズとか実験音楽っぽくて冷たい感じがします。
両者ともに別の方法で雑音を料理してるんですよね。
この温度差を両立したかった。
まあ両立というより、自分の好きな音を集めすぎて整理できてないんですけど、そのまま放出する事で偶然生まれた物が面白いかなと。
そう考えると少しだけCombatwoundedveteran寄りなんですかね?
しかし、やっぱりこの2バンド知ってる人は本当に限られていますよ…。

服部:あとはSuppressionなんかも入るかもですねその辺。
とにかく汚くて速くて気持ち悪いつう。
やっぱMan Is The Bastardの流れだし今どきのバンドに比べて90年代はノイズの要素って大きいと思うんですよね。


・現在はパワーバイオレンスブームといっても「Crossed Out系」か「ビートダウン系」しかいない二極化だと思います。この状況に何か思うことがありますか?

服部:自分からリズムのアイデア出すときは結構その辺も意識してたりするんですが大抵全然違う感じのリフが被さってくるので結果違ったものになってるのが乗り切れないところかなと(笑)。
思うところつうか、USコア好きでずっとドラムやってきたので今のブームで新バンド出て来たりレジェンダリーなバンドが来日したりで刺激的ですね。
このブームの先にGasp的な新バンドが出てくるのかなってのは興味あります。

是枝:特に若い人が間違えてくれるのは嬉しいですよね(笑)。
特にCrossed Out系は大好物ですので。
かっこいいバンドが増えてくれることを望みます。
でも確かに、Spazzのフォロワーとかあまり聞いた事ないですよね。
それとMan Is The Bastardとか昔のCromとかSuppressionみたいなちょっとよくわかんないのもパワーヴァイオレンスなんだぞ、と掘り下げてくれる人がいるともっと嬉しいです。
確かにTrikoronaは波に乗れてません。
でも別にあまり感じるところはありません。我々はこの音を続けるだけなので。
たぶんですが、一部の特殊な人を除いてのTrikoronaをパワーヴァイオレンスと認識している人って居ないんじゃないでしょうか?
前述の通り+αの部分でパワーヴァイオレンス以外のジャンルの影響もとても強いので曲によってはそれが色濃く出てしまうところもありますし、今後ますます逸脱するかもしれません。
私は日本でTrikoronaを紹介する時はカオティックハードコアと言ってます。
それでもTrikoronaの事をパワーヴァイオレンスやエモヴァイオレンスと解釈してくれる人がいると燃えますけどね。


・ちょうど先日、ある人から「若い人はミスをしたがらない」という話を聞いたところでした。つまり、間違わない結果、今のパワーバイオレンスのスタイルが決まっていると言えるのかもしれません。そう考えると、おじさん達の想いとは裏腹に若者との想いにすれ違いがある可能性があります。そこで思ったのは、「Trikoronaのメンバーは感じていない重い十字架を背負っているのではないか?」ということです。自分が若い時に衝撃を感じるほど「格好良い!」と思ったものが、時代を過ぎると若い人は良いと感じない、ということってあると思いますか?仮にそれが本当なら、ある一定の年代から生まれた子供は「オギャー!生まれた!90年代カオティックハードコアはダサい!」って思わないと辻褄が合いません。つまり、Trikoronaは「人が選択しないものを選択してしまった」という十字架を背負っているのではないか?ということです。

是枝:十字架ってほどじゃないですけど(笑)、単純にひねくれてるので王道とは少し違うのを続けるという意識はあると思います。
あるいは意地かもしれません。
例えばですけどこういったニッチなジャンルでも、演奏も完璧で圧倒的なライヴパフォーマンスを見せるようなスーパーバンドが出てくれば、若い人は当然良いと感じるんじゃないでしょうか。
しかし、そういう実力主義じゃ無いところ、間違いとか勘違いみたいなのから偶然出てくる格好良さがある音楽もある訳ですよね。
訳分かんないけど何か凄いぞっていう感覚を発見出来るような耳はミステイクを繰り返さないと当然育たないでしょう。
ただそんなのばっかり聴いてると耳腐ってくるんですけど(笑)。
とはいっても、今の若い人だからって訳じゃないと思いますよ。
自分が20代の頃もそんな考えしてましたし。
上記に挙がったようなバンド名を挙げても反応してくれる人は当時私の周りには居ませんでしたよ。
だから若くても特殊な情熱持った人はどこかにいるはず…なのです。
まあ時代が変わっても良い作品は良いし、変な曲は変なままだと思います。
ただ解釈ってのはある程度流行ありますからね。
このアンダーグラウンドシーンであっても。

服部:ウチら特にコレエダ君なんかは重箱の隅つつくのがすきでやりつづけてたら結局こういうスタイルに落ち着いてたという認識ですかねー。
日本でこんな事やってんのウチ等くらいだろってやってて結局未だに他に居なくて「やっぱりね」つう(笑)。
順当に聴いてればConvergeとかに行きつくと思いますし。


・Trikoronaを「カオティックハードコア」と定義するのは面白いし納得するのですが、そこで思ったのは、Combatwoundedveteranとスプリットを出した同じくフロリダのScrotum Grinderはアルバムが見向きもされないPrankの隠れ名盤でクズ箱の常連、という話のネタをたまに友人とすることです。Scrotum GrinderもTrikoronaが定義する「カオティックハードコア」だと思います。そう考えると、90年代リバイバルはずーっと続いているのに「みんなが忘れた何か」が多い気がします。そこに何かを思うことはありますか?

是枝:Scrotum Grinderも勿論好きなんですよね。
リフ複雑でリズムがカッチリしてるんだけど硬質な感じになりすぎないっていうのが絶妙で曲も基本すぐ終わっちゃう。
アルバムは音も分厚くて名盤だと思うのですけど…やっぱり300円とかの中古盤買って配ってました(笑)。
まあ、この辺のバンドに限らず、どんなに優れていても、時代の陰の部分というか淘汰されてしまった音楽というのは存在してるはずですよね。
私も未知のジャンルでもいる筈で。
それを引っ張り出すのもレーベルの仕事だと思いますけど、これだけ音源が売れない時代になってくるとレーベルもそんな余力は無い訳ですかね。
みんなが忘れた何か、というより当時も「気がつかなかった方法」みたいな感じですか。

服部:あー、Scrotum Grinderもデカいっすね忘れてた。
エサ箱常連バンド多いっすからねあの辺(笑)。
リバイバルの順序がその辺に回ってくる日はあるのかというとどうなんスかねー。
そういやエモバイオレンスって言いだしたIn/humanityも昔Deep Slauterがカバーした位であんまその後の影響ないような。


・以前、ある人からTrikoronaがOrchidの影響を受けているという話を聞いて「何を言っているのだろう?」と思ったのですが、アルバムを聴いたら納得しました。TrikoronaはOrchidというバンドの視点から見られたり語られたりしないと思うのですが、Trikoronaに対するOrchidの影響を教えてください。

是枝:かなり影響受けてます。
あのバンドはCombatwoundedveteranより影響受けていると思いますよ。
オクターブを駆使したコードとかちょっとだけメタリックなリフなど未だに参考にしています。
特に1stですね。
音もちょっとバランス変ですよね。
ドラムが引っ込んでて、ブラスト叩いているのかシャッフルみたいな事してるのかよくわからない謎の音塊。
そこにクサクサなエモいリフが乗ってきて、でも音は汚い。
こんなのアリなんだ!と当時思いました。

服部:影響の点はコレエダ君に任せるとして実はJerry’s Kidsの発展形なんではないかと。
MAのバンドってだけじゃなく、あのテンションとか鳴りっぱなしのギターとか軽くて手数多くてナニやってるか聞き取れないけど勢いはすごく伝わってくるドラムとか。
特に「Is This My World?」に共通するとこがある気がします。


・Orchidの影響についての話はすごく納得したのですが、Orchidというとみんなはオクターブをメインに考えると思うので、同時代だとReversal Of Manの流れになり、同じフロリダでもCombatwoundedveteranは選ばないな、と思いました。なるほど、そう考えると、Trikoronaは「90年代フロリダ系カオティックハードコア」ということになりませんか?

服部:あんま考えてこなかったけども汚い・速いカオティックつうのを志向してたらそっち寄りになるのかもですね。

是枝:そうかもしれません。
実は先日、Tokyo Unlearned FMで安藤さんが我々の事取り上げて下さったんですが、フロリダの臭いがするバンド、と言っておられまして。
そういや自分の原点のひとつだったよなあと再確認しました。
Reversal Of ManとかPalatkaとかも当然影響受けてます。
Radonとかメロディックなのはあまり聴かなかったですけど。
当時だとLocust一派みたいなサンディエゴのバンドにも凄く影響受けてるんですが、確かに強いのはフロリダのバンドですかねえ。


・ほぼほぼ印象なのですが、最近では「激しい激情」を「エモバイオレンス」って言っているように感じます。そういう違和感はないですか?90年代ではCombatwoundedveteranがエモバイオレンスに組み込まれかねない言葉のニュアンスでした。僕の記憶ではThe End Of The Century Partyなんかもエモバイオレンスって言われていた気がするのですが今だったらエモバイオレンスに組み込まれない気がします。

是枝:昨今のブラッケンドとかネオクラストとかのバンドを指すのはちょっと違いますよね。
好物だし、似た要素はあるんじゃないかと。
勿論スクリーモのバンドとかその辺りとは明確に違う気はしますけど。
当時の印象ですが、CombatwoundedveteranもThe End Of The Century Partyもエモヴァイオレンスだと思ってましたよ。
Combatwoundedveteranは凄え汚いOrchidみたいな解釈してました。
互いに共通のスプリット相手がいたし。
というかこの界隈の音の事を何と言っていいのか最初わかりませんでした。
激情系なんだけど汚くてブラスト使う人達アメリカにいるじゃん?みたいな感じで。
エモヴァイオレンスって言葉知ったのってGuyana Punch Lineの2ndが出たあたりだった記憶あります。
なんていうか…ちょっとだけユーモアがある感じ、でもファニー過ぎず、かと言ってナーバスというかストイック過ぎず…みたいな塩梅だった気がします、あの時代のバンド達。
当事者達はどうだったのか分からないですけど。
エモヴァイオレンスってあの時期特有の音を指してるかもしれませんね。
あとEMOって言葉使うと欧米だと結構、タフなメタルやハードコアの人達に馬鹿にされるんですよ。
多分スクリーモ以降のバンドの事指してるんでしょうけど、一緒くたにされるのは心外ですよね(笑)。
エモヴァイオレンスって言葉はそういうジョークというか皮肉な意味もあったのですかね?

服部:今エモバイオレンスって言われてるのはネオクラスト・エモクラスト流れの黒くて速い激情系みたいのを指してて、当時、言われてたものとはちょっと違ってるかなーってのはあります。
つか、Trikoronaは結成時からのコンセプトとして「汚い速いカオティック」ってのがずっとあってCombatwoundedveteranやThe End Of The Century Partyやはそっちに近いかなと。
近年だとIron Lungなんかもそっち寄りかなと思います。
今後も「エモ」よりも「バイオレンス」に重きを置きたいです。


・エモバイオレンスですが、(ブラッケンドやネオクラススなどの)好きなスタイルのサウンドなのに「自分が違う」と思う意味で定義付けされていると否定的に捉えないといけないのは気持ち悪いと感じていて、「全てbandcampのタグが悪い」くらいに思っています。これは、「ジャンルを間違えて定義するとスタイルが消える」といえるのですが、逆を言えば、Trikoronaが自分たちのスタイルを定義したらリスナーが認識しやすくなったり、同じようなスタイルのバンドが増える気がしますが、どうでしょうか?

服部:なんか良いタグあればそうかもですが最近の曲エモ要素薄いしどう言えば良いんだろつう。

是枝:こないだ友人と話していて、思いついたんですけど「Shoegaze Violence」とでも名乗ろうかなと(笑)。でもエフェクターいっぱい使っているだけで、別にShoegazerにそんなに入れ込んで無いのでそっちの人達に突っ込まれたらどうしようかなって感じですけど。
もう一つくらい同じようなバンドいるといいんですけどね…。Calpa Miaっていう東京のバンドがうちら以上にGasp意識してたんですけど活動停止してしまってて。
https://culpamia.bandcamp.com


・昔はEbullition RecordsのKentを始め、日の目が浴びなさそうだけど個性的で知的なバンドを積極的にリリースしていたように感じます。しかし、現代ではウケが悪いからかわかりませんが、そういうバンドはあまりリリースされず出会う機会が少なくなっているように感じます。Trikoronaはこの流れに飲み込まれているように感じますが、スタイルを貫く苦しみはありますか?また原動力みたいなのはありますか?

服部:昔はこういうスタイルってのをを意識してたけども今はこのメンバーだと他にできんなと。
どうしてもこうなるなってカンジになってあまり意識しなくなりました。
まあ状況についてはなるようにしかないかな。HELLO FROM THE GUTTERみたいなスタイル問わずに個性的なリリースしているレーベルから出せたりしてるんで今後もそんなスタンスで行ければ。
あと原動力は酒です。
http://hellofromthegutter.com

是枝:Trikoronaは自然体でこういう音楽やって来たので、その点で鈍感です。
音の説明は困りますけど…それは聴いた人の印象とか解釈で構わないと思ってます。
持論ですけど、ジャンルのカテゴライズが出来ないようなバンドって近年は受け悪いですよね。
ことこういったラウドミュージックでは。
私が知らないだけかも知れませんが特に欧米でそれを感じます。
語弊があるかも知れませんが、特定ジャンルに所属しているという名刺が無いと窓口を開いてくれないように思います。
まだ日本のライヴハウスには「どこからこんなの思いついたんだ?」っていう出自が見えないバンドが時々います。
彼らも集客やリリースなどで苦労していると思いますよ。
我々は幸い、2年に一度位のペースではリリースできているので理解ある人が周りに居ることに本当に感謝してます。


・冒険をしない音と出会えないのは、「冒険をしないバンド」「冒険をしているバンドをリリースしないレーベル」「冒険をしているバンドを聴かないリスナー」のどれが悪いと思いますか?

是枝:「流行らない音=売れないからレーベルにとってお荷物な訳で、バンドもフックアップしてほしいからその流れに迎合する」って事ですよね?
でリスナーはネットが発達した故に好きなのしか聴かないから、隣のジャンルも知らないみたいな。
難しいですね、どれも繋がっているというか、鶏が先か卵が先かみたいな。
まあ、いつの時代も突然変異的なバンドは必ずいるはずなんで、それを取り上げるのはレーベルの仕事のような気はします。
なのでレーベルやディストロの人が非常に大変なのは分かってますし尊敬してます。

服部:質問の答えではないですが「冒険している」「革新的」な音楽やそのリスナーって今後所謂バンドっつう形態のシーンからは出てこないんじゃないかなーと個人的には思ってます。


・昔は「ハードコア=革新的」「メタル=保守的」でしたが、今は「ハードコア=保守的」「メタル=革新的」と図式が変わったように思います。Trikoronaをプレイしていて時代の流れに何かを感じたりはしていないですか?

是枝:成程、確かに。
あまり詳しく無いですが特にここ10年間位のブラックメタルが一番好き勝手やってるように思います。
まだ日本では少ないでしょうけど。
誤解しないで欲しいのですが、自分は保守的なバンドも好きです。
自らのジャンルにプライドを持って、それを突き詰める。
音だけじゃなくてファッションだとか。
その姿勢は尊敬します。
ただ、突き詰めすぎるとコピーバンドになってしまうと思うので独特の解釈は必要ですよね。

服部:トシですかねー。
メタルはなんだかんだで若いの多いし。
ハードコアも今は初期パン的な聴かれ方をされる時代になってるトコロはあるんじゃないでしょうか。
個人的にメタリックなのはともかくメタルそのものは好きじゃないんであんま進んで聴かないですが。。


・是枝さんは以前Coffinsでプレイしていましたが、海外のメタルファンにTrikoronaのことを聞かれて説明に苦労はなかったでしょうか?

是枝:Coffinsで交流あった人達には「変なパワーヴァイオレンスだ」と言って説明しましたが、(言い方が悪かったのか英語力が無かったからか)食いついてくる欧米人はほぼ居ませんでした。
音源も色々な人に渡しましたが、反応ほぼ無いです。
思うに、色々なジャンルの要素が混ざったタイプのバンドは特に欧米の人には理解されにくいです。
一方シンガポール、マレーシア、タイなどアジアの人達は日本人と感覚が近いのでしょうか?割と良い反応がありました。
最近、ある意味ハードコアの最先端は東南アジアだ、と聞きます。
革新的な音、変わった音が求められてるのかもしれません。


・バンド活動にしてもなんでもそうですが、「楽しけりゃいんだよ!」が基本だと思います。でも、その楽しいは「音を合わせて楽しい」や「一体感を得られて楽しい」があれば、「道」を求めるような苦行のような行為に楽しさを感じたりもします。Trikoronaは機材もたくさんあって物理的な負担もあり、針の穴に糸を通すような行為に楽しさを感じているように思えるのですが、その楽しさの先に何を求めているのでしょうか?バンドやっている人にとって答えのないテーマなのかもしれませんが…。

是枝:他のメンバーはこういう事言うと呆れるんですが…端的に言えば、新しい音楽を作りたいのです。
それが評価されるかどうかは別として。
上記に挙がっていたようなバンドからは強力な影響を受けていますが、あくまでそれを踏まえた上での強いオリジナリティを出したいと思っています。
現状はまだまだだなあと思いますけどね。

服部:まーでも基本的にはこういうのが楽しいって人間が集まってやってるバンドなんでその先つうのは自分はあんま考えたことなかったですね…。
まあこんなことやってる気持ち悪い人たちが居たんだよってのを作品でもlive見た人の記憶でも残せれば…良いのかなー。


・ありがとうございました。最後にメッセージがあればよろしくお願いします。

服部:てなわけですごい熱量の質問ありがとうございました!ワタシ長い文が書けないので物足りない回答になってしまったかもですが、我々の音を聴いてここまでつっこんでくれて有難い限りです。
まだリリース予定があって後は曲溜めて2ndアルバム録りたいですね。
その頃には打ち込みになって音楽性がTrapになってる可能性もありますが今のところはこの調子でやっていこうと思ってます(笑)。

是枝:我々のようなニッチなスタンスでやっているバンドに取材をして頂いたことに感謝しております。
大分突っ込んだ内容は答えているこちらも楽しかったです。
何を目指しているのか、何の影響を受けてきたのかよく分からない、と言われがちな我々ですが、意図を少しは紐解く事ができるのではないでしょうか?

以上です。ありがとうご ざいました!


以下、脱線

・話の流れでHinckleyを思い出したのですが、知っていますか?
Hinckley
https://www.discogs.com/Hinckley-Hinckley/release/1808301

調べたら95年のリリースみたいです。
このレコードがものすごく狂っていて好きなんですが、知っている人と出会ったことがないのと、この手の音のルーツとして扱われてもおかしくないな、と思っていたので。

服部:これ知らなかったです。メチャカッコ良いっすね!当時もdistro箱やエサ箱の隅っこに残ってたんでしょうか…

是枝:このバンド初めて聴きました。
なんですかねこれ……結構衝撃でした。
Swansみたいな感じから唐突にcombatwoundedveteranみたいになったりしますね。
ただオレンジに黒インクのシルクスクリーンのジャケット見たことあるような気がします。
どこかの中古盤屋で掘った時に出会ってたんでしょうか?
だとすると非常に勿体無い事してますね…。


*Gaspちょっとイイ話笑。
是枝:実はGaspのギターのMike Nelsonに会った事あるんですよ。
2009年にCoffinsで出演したLA murder festでなんと彼が楽屋を訪ねてきました。
当時、彼はGravehill(A389から再発されてます)っていうDeath Metalやってて、Coffinsのギターと交流あってトレードとかしてたんですね。
それで当時、私は彼が元Gaspだって言う事知らなくかったんですよ(笑)。
そのときは挨拶少しした位で、それを知ったのは数年後でした。
非常に勿体無い事をしてしまったんだなあと…向こうはCoffinsの事好きだったみたいで、変なところで世界はつながってるんだと実感した次第です。

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