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子どもの目線で描かれる「真実」――『アミ 小さな宇宙人』

 さくらももこさんが表紙と本文のイラストを描かれている文庫本。

「引き寄せの法則」関連の本を書かれている奥平亜美衣さんがすすめているので、かつて手に取ったのだが、最近では元「ブルゾンちえみ」こと藤原史織さんが、「2年前にこの本を読んでからヴィーガンになった」と告白して話題になっており、久しぶりに読み返してみた。

少年と宇宙人の一夜の旅

 10歳のペドロがある夏の午後、一人の少年と出会うところから、物語ははじまる。光の塊のような物体が海に転落してしまうところを目撃し、驚いていると、そこから出てきたと思われる少年が海を泳いで岸にたどり着く。最初は警戒していたペドロも、だんだん彼と打ち解けていく。

 自分の名前は発音できない音だから、という少年は、自分のことを「アミーゴ(友だち)」と呼ぶようにいう。そこでペドロは彼に「アミ」というニックネームをつける。

 最初のうちは、「地球を侵略しにきた」とか「光線銃で攻撃してくる」といったテレビや映画で描かれるステレオタイプの宇宙人を想像して警戒していたペドロだが、子どもらしい素直さで、アミの言葉をだんだん受け入れていく。

 そうして、アミの持つ円盤に乗せてもらうことになったペドロは、地球以外のさまざまな星を訪れ、「宇宙の基本法」について学んでいくのだ。

「愛の強さ=進歩度」という世界

 アミによると、その人の精神における愛の強さは、同時にその人の進歩度をあらわしているという。いくらインテリで博学であっても、愛が少なければ進歩の度数は低いのだ。

 今この瞬間を楽しむことについて、ものを所有することについて、競争することについて――アミはペドロにさまざまなことを伝えていく。主人公が10歳の少年ということで、やさしい言葉で書かれているけれども、ここにはある種の真実があるように思う。

 スピリチュアル的に、ということではなく、こういうものの考え方をしたほうが、人生はもっとラクに生きられる、という意味で、この本にはたくさんのヒントが詰まっている。

「自分と過ごした経験を本にするように」と言い残して、アミは去っていく。そうして書かれたのがこの本というわけだ。この後、続編が2冊出ている。

 しかし、大変残念なことに、この本は現在品切れで再販未定となっているようだ。アマゾンの中古品には、定価の10倍以上の値段がついていてびっくりした。

 翻訳本なので、版権の問題などで再販は難しいのかもしれないが、良書だけに残念。興味のある方は図書館でチェックしてみてほしい。




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