工作の沼が日常を脅かす

わが子は、視覚能力が低い。見たものを分析することも、2次元から立体的な造形を浮かび上がらせる作業も苦手。さらには手指の運動機能~脳が考えたことを運動神経に正しく伝達するような能力にも難があると考えられる。

けれど、イマジネーションは尽きないらしい。脳裏に浮かぶさまざまな躍動した世界を表現したいらしい。それに、工作という手段を用いているが、いかんせん不器用であり、立体的な造形を考えるのも、そこに至るまでのプロセスを構築するのも大変。というか、できないことの方が多い。すると、出来ないと言ってぶちギレる。そりゃそうだろう、出来ないって数字が検査からも出てるよ。
そこで、手足となり立体化を実行するのが母であるわたしだ。これをこうしたい、この写真のように作りたいという要望を次々と突きつける。しかもどれもこれもレベルが高い。仮面ライダーの全身コスプレ、スターウォーズの全身コスプレ、ライトセーバーを手作り、自転車を仮面ライダーのバイクに改造したい、などなど。いま!この時にすぐ作りたいと叫ぶわが子の要望を、どうにか実現してあげたいと、夜な夜な100均の道具で工作するわけだが、それが半ばまで出来上がらないうちに今度は興味がまた別のものに移り、新たな工作物をやりはじめて『できない!できない!』と荒れ狂い出す。

結果うちの子どもの部屋は作り掛けの仮面ライダーやらのマスクが10個くらい転がっている。片目だけはいっていたり、目が入っていなかったり、色もなくて真っ白だったり、さながら、しゃれこうべの捨て場所だ。
道具も散乱している
やれヒートガン、ローター、アクリル用のノコギリだ、革手袋に絵の具がたくさん、コスプレ制作のボードの切れはしもダンボール3つぶん、などなど、部屋を占拠している。

不器用に産んでしまったその責任をとり、手となり足となり工作に付き合おうと心に決めたものの、興味の移り変わりで完成しないというジレンマ、実現不可能なハイレベルな要求へのジレンマに、精神的、肉体的な疲労が蓄積する。

工作地獄はいつまで続くのか
わが子が満足する日は来るのか
自分の工作の能力に見合ったものを作ろうという、自己理解が進む日は来るのか…

とりあえず、ボバフェットのコスプレ衣装を求められていて、1ヶ月でまだアーマーと腕の土台しかできていない。
一年後にはもう、いらないと言われるかもしれないが、とりあえず今夜も作業をするしかない。

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