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幼い頃のルール

子供の頃教えられたルールは、守る必要がなくなったものでも、なぜか残っているような気がする。

昔、まだエアコンがリビングにしかついていなかった頃。当時我が家に設置されていたエアコンは茶色の家具調で、家電の中では特別豪華なイメージを持っていた。

温度調節も今のように省エネ性能が発達していなかったので、少し使うだけでも電気代がはねあがったらしい(具体的にどのくらいかは知らないので、母が大げさに言っていた可能性はある)。母は、子供たちに、留守番中などに絶対勝手につけないように、と口を酸っぱくして教えていた。

もちろん学校にエアコンなんてついてない。小学校にはストーブがあったが、中学校と高校にはそれすらなく、夏は灼熱、冬は極寒の中で授業を受けていた。周りの学校も同様だったので、特におかしなことだとは思っていなかった。

時は流れて現在。エアコンの消費電力は格段に下がっているようで、私が子供だった頃と比較すると半分くらいになっているらしい。また、家庭でも学校でも、冷暖房を利用するのが普通で、夏場などは「エアコンを適切に利用しましょう」なんて、ニュースで伝えられているほどだ。

それでも、私はエアコンをつけることに罪悪感があるのだ。

電気ストーブや電気カーペット、こたつの類はすぐにつける。これは、子供の頃の実家でも使用していたからと思われる。改めて考えてみれば、電気ストーブの消費電力なんて、エアコンとほとんど変わらないのではないか。

温度調節が作業効率に与える影響は大きいし、日々生活していてそれは十分に感じている。寒すぎると動くのが面倒になり、したいことにパッと取りかかれないし、熱すぎるとボーっとして頭が働かない。暑くても寒くても、眠りは浅くなる。消費電力は心配するほど大きくない。もはや、つけない理由は見当たらないというのに。

実家に帰ると、あの家具調のエアコンはもうとっくになく、最近また取り替えたばかりのエアコンが元気に動いている。懐かしのわが母校にも、数年前にエアコンが設置されたと聞く。「エアコンをむやみにつけてはいけない」呪縛にとらわれているのは、いまや私だけである。

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