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ヴィジョンクエスト|夜の山で過ごす|05

ヴィジョンクエストはアメリカ先住民(ネイティブアメリカン)の伝統的通過儀礼のひとつ。ラコタ族のことばでは「ハンブレチア」(泣いてヴィジョンを求める、の意味)。彼らは人生の節目、岐路に立つとき、つながる人々につれられて大自然の中に入り、一人きりの特別な時間(ドリームタイム)を過ごす。そこで自分の魂に刻み込まれた生命の意味を飲まず、食わずの究極の状況の中、泣き•歌い•祈り探し求める。そのとき大いなる存在(導いてくれるスピリットや守護動物のスピリット)と出会い、メッセージと力を受け取る。

(マザーアースエデュケーションによる案内文から)

2022年9月に初めて参加したヴィジョンクエスト。3話目以降はリアルタイムでなく、記憶や記録を辿りながら、時系列でなくランダムに書いていきます。


夜の山で一晩過ごすのは今回が初めてではなかった。
だから、なんとなく感覚はわかっていた、というか。何かが起こるっていうのも知っていた。どこか、そのことを期待していたかもしれない。

山のレースで起こってきたこと

2008年10月に日本山岳耐久レース(通称ハセツネ)という山の大会、いわゆるトレラン(トレイルランニング)の大会に初めて出た。コースは71.5km, 累積標高差4582m。制限時間は24時間。

レースは午後1時にスタートする、トップランナーでも男性で7時間台、女性で8時間台という長丁場だ。山の中をほぼ休むことなく動き続けていると次第に辺りは薄暗くなっていく。

そのうち、極度の心身の疲れとランナーズハイが混ざった瞑想状態のような不思議な感覚を感じた。それまでのいろんな人や出来事がフラッシュバックしてくる。元々感情の起伏は激しい方だけど、レースも中盤に入ると前後すぐに他の参加者がいることは少ないし、それぞれの思い出や出来事に思いを馳せて、思いきり泣いたり、歌ったり、感情に浸った。それは大きなデトックスでもあった。

かなり急な山のアップダウンが続いて、膝がヤバいのでリタイアしようと思ったのがゴール前最後の関門。「まだゴールの制限時間に間に合うからがんばって!」と言われてしまってリタイアできなかった。
その後は火事場のなんとかで不思議とからだが前に進み、コース際の応援の声にも助けられて、制限時間の24時間ギリギリ、23時間台でやっとのことでゴールできた。ゴールでは仲間たちが待ち構えていてくれて、この大会は個人的にはちょっとした感動的なドラマだった。

仲間が迎えてくれて感動のゴール!


あるいは2010年のおんたけウルトラトレイル100km。こちらは深夜24時スタート、制限時間20時間の大会だった。ここでもミラクルが起きた。途中の関門までは制限時間ギリギリペースで進んでいたところ、なぜか後ろから抜いてきた他の参加者がわたしのことを抜きながら声かけてくれて関門に間に合うように引っ張ってくれた(そしてその方は関門到着と同時にリタイアしたのにわたしにはレースを続けるよう勧めた)。湧水を飲んだら、シャキーン!と音でもする位にむちゃくちゃ元気が出たのがわかったり、あらゆる山のミラクルを再び体感した大会だった。

そして2011年のハセツネ。これは第ニ関門後のオオダワ(約50キロ地点)でリタイアした。
単純に準備不足だった、けど充分に動き切った、という満足感があった。この先がんばってゴールしても2008年よりもさらに遅いタイムで疲労困憊するだけだと知っていてリタイアを決めて下山しはじめたとき、何かピカーッと頭がクリアになった気がした。
それまで移住や変化することを決めかね、動きかねていたけれど、やっと何かが腑に落ちて「もう信州に移ろう」と肚が、あるいは心が決まったのを感じた。
下山後、ゴール地点に行くと都下在住の知人にバッタリ会った。近況を伝えて「信州に移住しようと思っている」と話した。するとその知人の友人が同じレースに出場していて間もなくゴールする、長野から来ているから紹介するよ、と言われた。ゴールしたNさんを紹介され、少し話してみると、二言目にはなぜか、わたしの東京のパワースポット!?的存在である美容室に彼女はわたしより昔から通っているということがわかった。そういえば美容師さんに以前「うちのお客さんで長野に住んでいてトレランやってる人いるよ」ってきいたことあったけど、なんという偶然!これはサインが来ているな、と感じた。

そのインスピレーションを大事に行動すること数日、あれよあれよという間に、行ったことはあるけど思ってもいなかった白馬に移住する流れが出てきた。

いずれも少し詳しく書いたので長くなってしまったけど、山で何か「ドリームタイム」のような経験をして、それを経た後に変化変容が起きていった、と自分の中では記憶していた。

(長くなったので続く)

タイトル画像は、ヴィジョンクエストでの体験を絵に描いて残したシールド🛡の一部。シールドとは盾であり看板のようなもの。

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