みんな自分の影を探している。ノルウェイの森評

村上春樹のこの作品はおとぎ話だ。みんなが持ち合わせている昔のちょっとした思い出。だいぶ記憶は飛んではいるが1つの場面ははっきりと覚えている。直子はそんなみんなの思い出にずっと残っている記憶のようだ。私のことをずっとおほえていてほしいの。と彼女はいう。きっと彼女は知っているのだ。おとぎ話は忘れさられていくだろうと言うことを。だからこそ主人公の感受性のあるワタナベに恋人のキスギと自分が存在していたことを強く求める。20歳のバースデーの日にワタナベと結ばれて以来彼女は苦しむ。その瞬間は自分もおとぎ話から抜け出してこっちの世界で愛する人と生きられると思っていたのにやはり何も変わらない。ワタナベもそんな直子を見てますます愛をつのらせる。彼はおとぎ話の中に行きかける。何度となく。

ミドリは活発な女のコだ。ワタナベが住んている男子寮に超ミニスカートで言っちゃうような天真爛漫な女のコ。でも両親を病気で今まさになくそうとして現実に必死にしがみついている。彼女の家での近くの火事を見ながらのキスは大好きなシーン。お互いに惹かれていく、

もう一人必死に現実にしがみついているひとがいる。直子の病院のルームメイトのレイコさんだ。昔プロピアニストを目指していたが1度は周囲のプレッシャーから、立ち直った頃に今度は近くに住んでいたサイコパスな女の子に心を壊される。

直子は自ら命をたちおとぎ話の世界に戻っていった。どん底のワタナベを救ってくれるのは現実にいきているミトリでありレイコさんだ。最後ワタナベとレイコさんが愛し合うシーンは救われる。

生と死は対極ではない。死は生の一部として存在している。この物語の登場人物に限らず自分の影を追い求めている。現実に生きていればイヤなこともたくさんある。ワタナベの先輩の永沢さんのような人間もたくさんいる。。そんなときやはりひとりひとりのおとぎ話を思い出してみる。直子はみんなの心の中にいるのかもしれない。

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