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人生に芸術があるということ 洲之内徹『気まぐれ美術館』

本日は洲之内徹の『気まぐれ美術館』という本を読んだのでご紹介。

著者の洲之内徹のことをどれくらいの人が知っているだろうか。洲之内は小説家から画商となり、その画商としての経験も踏まえた美術のエッセイを書いた。絵を売る職業でありながら、本当に気に入っている作品は売ろうとしないという一面も持ち合わせていた。

そんな彼のコレクションは彼が亡くなった時に散逸の危機にあったが、結果として宮城県美術館に収められることとなった。私はそんな洲之内コレクションを見て彼のことを知ったけど、これまで本は読んだことがなかった。

普通、美術についての文章を書くとなった場合、どんなことを書くだろうか。作品がいつ、誰が描いて、、、という客観的な情報を入れるのが基本になると思う。しかし彼の著作は極めて主観的だ。作者やその家族や遺族と直接やりとりをした作品、モデルとなった風景を訪れた作品、一見関係のなさそうな思い出から作品に繋げていくものまで、あくまで自身を起点にした美術の文章が続く。

そして、文章に臨場感がある。〆切が近いからとりあえず書き始めたけどなんかなかなか絵の話にならないなあ…というのは私の感想ではなく文章に出てくる。

そんな文章が面白いのかというと…めちゃくちゃに面白い。美術に関わる人の悲喜交々が実感と共に伝わってきた。靉光や松本俊介など、ちょうど好きな近代画家の名前が続々と出てきたのも嬉しいポイントだった。

ただ、本当に主観的な視点から書いているから、ある程度名の知れた画家だと何の説明もなく話がグングン進んでいったりしてしまう。ただ、これは知識がある人向けに書いているというよりも、そんな知識はどうでも良くて、作品自体を見て欲しいという気持ちの現れなのかもしれない。

本当に楽しく読んだ本だったけど、文庫本になっているのは一部で、エッセイ全部読めるのは絶版の単行本セットくらいでしか読めないらしい…

というわけでネットで調べて下北沢の古本屋で買ってきたぜ!!!!今日明日で読むかは悩みどころだけど、こっちも読んで感想書きたいなと思っているところ。

洲之内コレクションも見たくなったし宮城県美術館早く休館明けてほしいな。それでは。

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