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日常に発生しうる芸術 東京都現代美術館「豊嶋康子 発生法──天地左右の裏表」感想

東京都現代美術館「豊嶋康子 発生法──天地左右の裏表」を見てきました。
楽しい展示だったので感想を書いていこうと思います。

日常に取り囲まれたもの元の機能・システムを改めて見つめ直す作品たち


入口にあったのはジグソーパズルを1本につなぎ合わせた作品。本来はつなぎ合わせることで絵柄を作るものだけど、その作るという流れを変更したものです。ジグソーパズルをやるとしても遊び方なんて見ることもなく、何も疑わずにパッケージに書いてある絵を目標に組んでいくはずのものだなということを気付かされる作品でした。今回の展覧会では、そんな染み付いてしまった、見慣れてしまった物事の様々な姿が見られるような作品が多かったです。

器の一部から元の器を作る作品

編集された情報と、編集されない情報と


競馬場のオッズの変化をすべて記録した作品では、その瞬間だけ表示され消えていくはずの情報を表現されていました。展覧会のポスターの裏に相撲の星取表を書いた作品では展覧会の時期と相撲の時期の結びつきと、私の記憶(上林という山形出身の力士が書かれていて、山形の実家に住んでいた頃地元のニュースで取り組み結果見てたなとか、前田懐かしいなとか)とも結びついた情報の表現には、工夫を入れることによる新しい発見がありました。
 一方で、作者本人の通知表や、もらった賞状がそのまま展示されていました。他人の賞状や通知表は自分にとっては本来どうでもいいはずの情報だけど、客観的に見つめることで生徒を評価するというシステムについて、自分との比較などの視点で鑑賞する事ができる作品となっていました。編集された情報と、編集されていない(とはいえ作品とすること自体が編集なのだけど)情報の両方から新たな発見がありました。

オッズの変化の記録

宇宙人からは面白くない作品かもしれない


…というのはクレームとか文句というわけではなくて、人間社会に生きて取り囲まれていて、特別な説明がなくても過程や結果が予測できるからこその楽しみがある作品だなという気持ちから感じたことです。読んでいる方は人間が多いかと思うのでぜひ行ってみてくださいね。

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