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川原茜、菊池遼「Let me see your…」NEWoMan横浜

2023.9.12

いま参加させていただいているNEWoMan横浜の展覧会では、はじめてアクリル額を使用した展示を行っているのだが、それが作品とマッチしていてとても良いなと思っている。それで、その良さはどこからくるのか考えてみたのだが、「距離が可視化される」からではないかと思った。

〈void〉の作品は鑑賞距離によって見え方を変えるので、「距離」がとても重要なシリーズ。ただし、「距離」ってそれ自体としては見ることのできない、ある種の不可視なものなのだと思う(横に並んだ物と物の距離は見えるが、自分と物との距離は経験的に測られているだけで、見えてはいない)。

で、アクリル額は、その不可視なものであるところの「距離」が、物体化して可視化されているような感じがすると思って、それが〈void〉とアクリル額の相性の良さに繋がっているのではないかと考えた。

あと、アクリル額がつくと、作品が「視覚で捉えざるを得ない(触れない)状態」になるので、〈void〉において目指しているところの「たどり着けなさ(近づくとイメージが消える)」みたいな体験の強度が増幅される感じがした。
なんというか、アクリル額がない状態だと、近づくとイメージは消えるけど、物体としての絵画は残るわけで、その物体としての絵画にはある意味で「たどり着ける(触れる)」。しかし、アクリル額がつくと、その「たどり着ける(触れる)」も不可能になり、「たどり着けなさ」の体験の強度が上がる感じがした。
そうした効果も、相性良さにつながってると思った。

アクリル額って作品にとって消極的な要素であることがほとんどだと思うのだけど、〈void〉においてはそれが積極的な意味を持つことのできる可能性を感じた。

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