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仕事はじめる日記(2022年秋)

修行

入社3ヶ月目。

いつもの美容師さんに「まだ何もできない」と話したら、「3ヶ月なんだから、そりゃそうだよ」と笑ってくれた。

滋賀でお米をつくっているおにいちゃんにも「そりゃあ3ヶ月だもん」と言われる。

それはやさしさであり、仕事に向き合う職人のようなきびしさを映した言葉だとも思った。

そんな簡単にできるものじゃないんだから、続けるしかないよって。

決める


石垣島のさらに離島・小浜島で友だちがリゾートバイトを始めたとのことで、週末に那覇から会いに行った。

私はあちこち移動するからか、行動力があるように思われがちかもしれない。でもそれはたぶん違う。

「人」が理由になるときに基準が変わるだけで、普段は行動力がまるでない。行きたいなと思いながら行かないままであることも多い。

でも今回は、友だちがいてくれたから石垣島に行けた。さらに友だちと会う前日は一人だったから、プランも泊まる場所も移動方法も、ぜんぶ自分で決めた。

強烈なスコールに降られて見事にびしょびしょになったり、泊まったホテルにアリがまあまあいたり、おじゃましたカフェが求めているものとちょっと違ったり、買いたかったものが買えなかったりした。

でもそういう全部が、ちゃんと自分で決めた結果だったから、すごくいいものだなと思った。

誰のせいでもない、自分のせいで起きていったこと。それは成功でも失敗でもなく、自分で選んだ道の先に遭遇した出来事だ。

始めたばかりの仕事で失敗を恐れていた気がしていたけれど、もっともっと挑戦してしまえばいい、と思えるようになった。気持ちがずいぶん、かるくなった気がした。

もちろん翌日、友だちに決めてもらったり友だちと一緒に決めたりしながら動いた1日も、自分だけで選んだら起こらないことばかりで、また違う楽しさがあった。とってもいい休日になった。


後日、友だちにお礼も兼ねて、沖縄の本を選んで送らせてもらった。

私自身が沖縄に出会っていくことに難しさを感じていたのと、沖縄のことを本当の意味で話せる相手はなかなかいないので、沖縄に興味を持っている友だちにいろいろ共有したくなってしまう。おせっかい。

そしたらこんな動画をあげてくれていた(観たよ!)。月桃の鍋敷きも、一緒につくったもの。

いい土日だったねぇ。

思い出

友だちに会いに、静岡に行った。

毎年似たような顔ぶれで開催している、年に一度の旅行。

滞在中の東京に帰れば、もうあっという間に日常がはじまった。静岡で買ったお菓子と紅茶が手元にあること以外は、ほとんど全部いつもどおり。

でもひとつだけ違うのは、友人たちと過ごした時間や聞いた言葉を、ふとした瞬間に思い出すようになったこと。

転職したばかりの今、この旅行を開催することに少しの迷いがあったけれど、何よりも人が原動力になる私にとって、大切な友人たちと共に過ごすべき瞬間は今だったんだな、と思った。

思い出が、自分を前に進めてくれるから。

友だちの口癖でそれぞれ、ひとりは「そういう論点もあるね」、ひとりは「アジェンダに入っている」と何回も出てきて、仕事柄が表れすぎていておもしろかった。頑張ってるんだなぁ。

密度

オフィスの周りのビル密度が高すぎて、隣のビルの壁が日光を反射して座席に日光が直撃してくるの、東京って感じだ。

東京にいる期間の予定が、気づいたらわりと詰まっていた。沖縄にいる日常の何倍もいろいろなことが起きるから、その非日常感に気持ちも日記も追いつかない。これも東京って感じだ。

寝ているけれど体力も気持ちも追いつかないみたいで、毎日死んだように眠り、それでも毎日眠い。

かろやかに

夜、もうすぐ東京を去ろうとしている友だちと会った。4時間くらいサシで話すなんて初めてだったんじゃないかな。

私は飲めない人だけど上野の飲み屋街に連れてってもらいました。ありがとう。

最後はコンビニで買ったお茶でバイバイした。これから上野駅に来るたびに、この夜のことを思い出すだろうな。


帰り道、友だちと話したことをぐるぐると思い出しながら歩く。

「きくちは戦いすぎ。侍じゃないんだから」と言われた理由をずっと考えていた。

「いい仕事をしたら、きっとまた会える」と思って生きてきたし、これからもそうだと思っていた。

たしかに戦いの最前線に立ってきたと思うけれど、と前置きした上で、「いい仕事なんてしなくたって、会いに行っていいじゃない」と言ってくれた。

私たちの共通の知り合いである先輩たちは、みんな人生を決め切る覚悟を持った人たちだ。

そういう人たちに相対して、先輩たちが死に物狂いで得てきたものを後輩としてなんの苦労も渡していただいている以上、こちらも覚悟を決めるべきだと思ってきた。

それは彼らの後輩でいさせてもらう姿勢として、自分で決めてきた生き方のようなものだった。


わかる、わかるけどさ、「ただ一緒にいたっていいじゃない」と友だちは言った。

それは私にとってずっと難しいことで、だからこそそう言ってくれる人の存在がだいじだと思った。

何回も「軽率に」って言ってくれたから、帰り道は軽率に、今日会った友だちに心の中身を吐露したし、他の友だちにもできていなかった転職の報告をした。


責任をちゃんと持てる、でもかろやかに歩いていける大人になりたいんですけど、どうすればいいんでしょうね。



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菊池百合子
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