仕事はじめる日記(2023年 年明け)
置いてけぼり
あるお知らせをいただいてから、ようやくたどりついた金曜日の夜。
ひさしぶりに過去の日記を手にとったら、本格的に地方取材を始めてからの日々のことを、思っていたよりもずいぶん詳しく書いていた。
ふだんは記憶の表面に浮かんでこない、でもとってもだいじな瞬間の数々も、こぽこぽと泡のように思い出される。
山の斜面でコアジサイが一面に美しい花を咲かせていたあの日の記憶を、ずっと、忘れないでいる。
自分がもらってきた愛を、ちゃんと、心にしまっておく。
おげんきですか
仕事以外の連絡でお返事をすることが、もうずっとずっと、苦手である。
のだけれど、あなたのことを思っていますよ、という自分の気持ちは、相手に伝えなければ届かないことをもう知っている。
もしかしたら、ずっと届けないままさよならになってしまうかもしれないことだって、大人になった今ならわかっているつもり。
でも「ひさしぶり、げんき?」なんてメッセージしても、自分で送ったくせにその後お返事するのが得意じゃないから、思い立ったときにお手紙を書く。
お手紙だったら好きなときに書けばいいから返信のペースも気にしないし、気にさせないし、とりとめもない話もすらすらと語りかけられる。
てなわけで、新居での生活も落ち着いてきた週末にお手紙を書いた。
たまたま、北海道へのお手紙と沖縄へのお手紙が隣にいた。ここからそれぞれの場所に届いていくことを想像すると、やっぱりわくわくする。
自分が何を送ったか忘れてしまうくらいがちょうどいいし、ポストを開けたらお手紙が届いていた日には心がとびはねる。
というわけで、今年もお手紙で、よろしくお願いします。
あらわす
お手紙を書いた翌日、お手紙と、あとはお手紙のようなメッセージが舞い込んだ。
もちろん昨日出したお手紙がすぐに到着したわけではなくて、別の方からのおたよりなのだけれど、こういうことはタイミングが重なるものらしい。
ポストにお手紙が入っているのを見つけるのは、日常のなかでもとびきり嬉しい、たからものみたいな瞬間だ。
自分の土台が整っているときにしかお返事を書けないけれど、たいせつに心にしまっている。
メッセージは、転職の報告に対するお返事だったのだけれど、送ってくださった言葉がその後もずっと、語りかけてくれている。
自分はライターでなくなって、表現の仕事からは離れたのだと思っていた。
転職を伝えるたびに、「これからも書き続けますね」「表現を続けますね」と添えていたのは、「自分の今の仕事は、表現することではない」という意識の裏返しだったのかもしれない。
でも、いただいた言葉は、そういう思い込みや葛藤をまるごと、包み込んでくれた。
言われてみればたしかに、わかりやすくコンテンツを世に出す「表現」をする仕事かどうかに関わらず、これまで出会った人たちに、ものすごくたくさんのものを受け取ってきたじゃないか。
生き方で、誰かに伝えられるものがある。
この言葉と気づきをもらえたことは、これから先の自分の支えになるだろうな、という予感がした。
スクリーンショット
アンケートに答えたら選書してもらえる、という取り組みがあったので、申し込んでみた。
友だちが選書してもらった本をSNSにアップしていて、「この友だちにこういう言葉を贈る人に、選書してもらえたら嬉しいな」と思って申し込んでみた。選書をお願いするのは初めてだ。
アンケートなのについ長く書き綴ってしまって、その結果選んでいただいたのが、こちらの4冊。きっと、今の自分の写し鏡。
お会いしたことのない本屋さんからいただいたお手紙も、とても丁寧に書いてくださっていて、うれしかった。
「ことばと向き合う真摯な姿勢が、よいご縁やよい仕事をたぐりよせる」
そんな言葉をくれました。またたび文庫さん、ありがとうございました。
言葉をつむぐための時間をよいものにするために、もしくはすきなひとたちを応援するために使わせていただこうと思います!