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心から表現したいと願うあなたに、最高のステージを用意したい──2018年5月

5月はずっと暗やみを手さぐりで這っていて、前に進んでいるのか後ろに進んでいるのか、なんにもわからなかった。

とにかく、今までの人生で一番仕事にのめりこめていない、力を出しきれていない期間だと感じている、いま。フリーランスになってからの、この4ヶ月。

ついに、ほとんど人生ではじめて、自分のことを信じるのさえ難しくなっていたのが5月。なかなかの苦悶を抱えながら走った日々でした。


そんな日々って、仕事以外でひとと会うのも少なくなりがち、なのだけれど。私の心に光を差し込ませてくれたのは、私の「本当はこれをやりたい」というかすかな心の声にもう一度耳をかたむけさせてくれたのは、紛れもなく、ひと、でした。それも、本気で表現しようとしているひと。

ふっと風が吹き込むように連絡をもらった2つのお誘いにのっかって。そこで見せてもらったもの、送ってもらった言葉が、私の心を大きくふるわせて、ぼろぼろ泣いた。


ひとつは、友だちが出演したミュージカル。これはもう、そんなはずじゃなかったのに、最初から最後までずっと泣きっぱなし。

初対面のアマチュア100人が100日間でつくりあげるミュージカル。心から「表現したい」と願い、隣にいる仲間を信じて、きっとあなたに何かが届くと信じて、全身で表現すること。ひとつの作品をつくりあげること。こんなにも、うつくしいのかと。こんなにも、ひとの心を打つのかと。言葉をかるく超えて、心に直接ひびいてきて。

同時に、過去を思い出していた。同じように、アマチュアかプロかなんて関係なく、いまの自分が本気で伝えたいことを全身で表現するステージ。だいすきだった中高の文化祭。そのとき私がやっていたのは、みんなが存分に表現できるように、信頼している仲間たちと一緒にステージを用意する仕事。

そう、わたし、こういう仕事をしたいんだ。わたし自身が何かを表現するよりも、誰かの「表現したい」を実現するためのステージをととのえる仕事。

本当にやりたいこと、そして表現しているひとの美しさを思い出させてくれて、ありがとう。


もうひとつは、私に届いたメッセージ。

5月の暗やみで、私はあなたの幸せを祈ることさえ忘れかけていたのに。

会うことすら一時期はむずかしいという特殊な状況にあった後、ほんとうに偶然会えることになって、そのあとにくれたメッセージ。

ひさしく会っていなくて私の状況を知らなかったはずなのに、あなたがくれた言葉。

“菊池さんには人を幸せにする力が備わってますよね”

自分のことを信じるのがむずかしくなるなんてはじめてで、もう何のために仕事をしているのか見出しづらくなっていたちょうどそのときに、もらった言葉。いちばん信じられなくなっていた力を、全面肯定してくれた言葉。

メッセージを開いてみたら、ほんとうにほんとうにびっくりして、泣きました。自分を信じてくれているひとがいる。その気持ちをこうやって届けようとしてくれた。それがどれだけ私の心を癒やしたことか。

そして、こんなにとうとい記事を私はつくれているのかな、と。ひとのことを本気で想って、ただひとりのためにつむいだ言葉はうつくしいのか、と。こんなにも心を打つのかと。

自分をもう一度信じてみたいって思えるきっかけと、最高にしあわせな形でひとのためにつむいだ言葉のうつくしさを教えてくれてありがとう。




そうやって、表現をまっすぐに心に届けてもらったことが、結果的に私を暗やみから引っ張りあげる最初のきっかけになってくれた。


そう、本気で伝えたいことを胸に全身で表現することは、ほんとうにうつくしい。

だから、魂で表現したいひとが最高の表現を届けるために、そのひとが立つためのステージをわたしはつくりたい。そういう仕事がしたいんだ。

そのために、心を入れて表現することのうつくしさを、わたしがきちんと信じていたい。そう思った5月。



「今でも、はたらきたくないです」 そう言っていた、糸井重里さん。

「ぜんぜん、つくりたくない」 そう言っていた、鈴木敏夫さん。

この言葉に救われる夜もある、よね。つくりたくないひとには、つくらない側の仕事と場があっていいのよね。ステージをととのえるのだって、仕事よね。

というわけでもう3分の1過ぎていますが、頑張らないようにしましょう(と言われた)。6月。

自分のためのメモ:5月の軌跡

3月に滋賀へ初めての出張にお伴して、完成した3本の記事。一部写真を使ってもらっています。やっぱり小松崎さんの写真がとてもきれいで、繊維のやわらかさと感触が伝わってくるようで、すごいなあってしみじみ。

何もかも新しい景色の中で、まだどんな記事になるかもわからないママに、必要なカットを即決してそのときしか撮れない瞬間を逃さない。出張はそういう時間が凝縮されていて、準備がどれだけできているかが決断スピードを速めてくれることを実感した琵琶湖畔。

ディレクションの機会をいただいているFUJIFILM『写真と、ちょっといい暮らし。』、とにかく初めてづくしでぽんこつディレクターながら、一緒につくってくださっているみなさんのおかげでなんとか形にできた初めての記事。

ひとりじゃ何にもできないし、やっぱり全員の「これをやりたい」と「これが好き」と「これをできる」をくみ取りながらチームを組んでいくのが好き。じっくりチームをつくっていく過程に私が意味を感じがちだから、Webとの相性にはずっと自信がないけれど。

灯台もと暮らしで編集を担当している【今日の一枚】シリーズ。他のメディアではたぶんできないくらいに、じっくりと時間をかけて原稿をつくりあげています。1本あたり丸1ヶ月。佐田さんから原稿が送られてくるのがいつも楽しみで、ポストにエアメールが届くのを待っている気分。

これまでの半年間、佐田さんがお付き合いくださっているおかげで私の理想の編集ができている【今日の一枚】。半年やりとりしているからこそできるコメントってぜったいあって、こうやって長くライターさんとお付き合いできる編集をやっていきたいなあ。そのとき、そのひとにしか書けない作品を、じっくりやりとりしながらつくっていきたい。

今回も小山内さんと取材してノマドの記事ができました。互いの違いを大切にしているとてもすてきなカップルで、小山内さんがもう言葉にならないかんじでこっちを向いて、「ね〜〜〜〜〜〜〜!」と言っていたなあ。そして今までの取材で一番、ずーっと爆笑した。ひとを楽しませよう、っていう稲沼さんの心意気を感じた。

写真。しゃしん。しゃしん…自分の仕事をとりあえず無事に終えなきゃという必死さが写真にあらわれてしまう。

そして、十和田2泊3日。ここにたどり着くまでにそもそも私が行けるように力を注いでくださった方々がいらして、本当にありがたかったです。気を張りすぎたのか出張前と出張中の睡眠時間がいきなり短くなり、へとへとになりかけ、出張は本当に体力勝負だなと実感。なんで5:46に散歩の投稿をしてるんじゃ。出張に仕事を持ち込みすぎるのもNGと実感。

のだけれど、そんなことは置いておいて、十和田湖と奥入瀬がものすごくきれいでしあわせだった。あと、十和田のみなさんと話しているのが本当に楽しくて、だから、記事がんばらねば。

左下の写真はアレックスさんが「ぜったいに身体に悪い」と言いながらくれた、アメリカのグミ。

豪雨のさなかに開催された座談会を撮影。夜の暗めの部屋の中での撮影をきれいに編集できない。。

写真編集した。十和田で。っていう思い出だけ書き留めておきたくて。

5月はアマノも編集担当しました。ライトなノウハウ系・おすすめ系の記事を今までやってこなかったので、さじ加減がすごく難しく感じる。とにかく生きている段階でのイカの写真がかわいいのと、いただいたイカがとってもおいしかった…!

写真編集しました。私は「つくれない」と思っているひとなので、この記事すき。

月末は今回も【今日の一枚】で。これから物語が動き出す、そのあふれ出す疾走感が好きな一本。

そしてまた佐田さんがうれしい編集後記を書いてくださって…ありがたい。この前はじめて画面越しにお話したときも私の編集方針を肯定してくれて、私の編集って気持ちが重すぎて一歩間違えると負担になりかねないので、すごい救われた気がした。

同じような方向に向かって一緒に走れるつくり手さんがいるっていうこと、それだけで私は伴走者として、とてもうれしい。そうやって一緒に走りたいひと数人と出会えたら、私の編集者人生はそれだけで十分なんじゃないかなと思っていて、すでに佐田さんと小松崎さんと出会えているので、もうとてもしあわせな編集者人生なんじゃないかなと思う。2人の作品づくりをこれからもフォローできるよう、がんばりたい所存。

【今日の一枚】はこれで一区切りだけれど、次につくりたいもののお話ももう出てきているので、私自身これからもとても楽しみです。迷いながら進むひとりのあなたに、届けばいいな。


さーてと、6月はすでにひっちゃかめっちゃかですが、頑張らないでいきましょう。(もう一度)

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