ハンブルクバレエ 椿姫
ハンブルク弾丸遠征2日目は椿姫のマチソワ。キャストごとに感想を残しておきます。
ハンブルク歌劇場
Music: Frédéric Chopin
Choreography and Staging: John Neumeier
Set and Costumes: Jürgen Rose
Conductor: Markus Lehtinen
Pianist: Michal Bialk
Orchestra: Symphoniker Hamburg
2018/5/20日 15:00-
Marguerite Gautier: Anna Laudere,
Armand Duval: Edvin Revazov,
Manon Lescaut: Mayo Arii,
Des Grieux: Jacopo Bellussi,
Prudence Duvernoy: Patricia Friza,
Gaston Rieux: Matias Oberlin,
Nanina: Georgina Hills,
Monsieur Duval: Ivan Urban,
Olympia: Xue Lin,
The Duke: Graeme Fuhrman,
Count N.: Marià Huguet
アンナとエドウィンの椿姫、日本公演ではとても感動したのですが、この日はエドウィンのソロがボロボロで2幕最後のアルマン激怒のシーンで妙に醒めてしまった・・・。さらさら金髪のエドウィンはそりゃ美しいけど、芝居じゃなくてバレエなんだからやっぱり踊りがよくないと興ざめです。
とはいえ、アンナのマルグリットはとっても好き。ハンブルクバレエ女性ダンサーの中では大柄だけど、どこか幸薄い感じがあり寂しげで美しい彼女には、オテロのデズデモーナ同様、マルグリットは、はまり役。そして、エドウィンとアンナのパートナーシップは抜群。リアルカップルだからこそのお互いを想い合う気持ちはこの作品を深くするなぁとつくづく思います。
この日の公演で楽しみにしていたのは、有井舞耀さんのマノン。この日が彼女のロールデビュー2日目でしたが、そうとは思えぬ完成度の高さ!堂々たる安定感で、本当にしっかりしたテクニックをお持ちだなぁと感心したし、さらに感情表現も実にお見事でした。序盤ではマルグリットに挑むような強い目線で情念の炎を持つマノン。そして終盤では、この世ならぬ青くて冷たくて哀しい存在に変わり、マルグリットの悲しみに同化する・・・・。彼女のマノンはシルヴィアやカロリーナのそれよりも感情表現が豊かだったように思います。
しかし、ノイマイヤーの椿姫においてこの「マノン」という役は本当に重要な役なんだなあとあらためて実感。そうそう、日本公演のときに一部の方が気づいていらっしゃった通り、マノンとデグリューのお化粧、一幕・二幕は劇場の役者として出てくるので白塗りで、三幕はマルグリットの想像の中の人物なので白塗りを一旦落として薄くつくりなおすんだそうです。古典作品で公演中にお化粧まで直すバレエってあまり聞かないですよね。衣装替えも多いし、ノイマイヤー作品ってマジ演じる方は大変・・・
2018/5/20日 19:30-
Marguerite Gautier (Guest Artist): Olga Smirnova,
Armand Duval: Christopher Evans,
Manon Lescaut: Carolina Agüero,
Des Grieux: Alexandre Riabko,
Prudence Duvernoy: Madoka Sugai,
Gaston Rieux: Jacopo Bellussi,
Nanina: Patricia Friza,
Monsieur Duval: Ivan Urban,
Olympia: Emilie Mazon,
The Duke: Dario Franconi,
Count N.: Marià Huguet
クリスのアルマンデビュー二日目。本当はエレーヌだったはずの相手役はボリショイバレエからのゲストのスミルノワに。
クリス・アルマン、期待通り凄くよかったです!これよこのアルマンを待ってたの!リフトに不安定な部分を残しつつも、スミルノワの献身的な(と言っていいと思う)自助努力で破綻なく乗り切り、そしてクラシックな舞踊言語でできてる難しいソロを音楽に美しく乗って踊りながら感情を表現してました。クリスは足先がとってもきれいで、それがアルマンの貴族性を表現している気も。彼がこの役を踊り込んでいけばリアブコさん系の疾走感あるアルマンになるに違いない!クリスって、instaなど見てて陽気な人だなと思っていたのですが、役を演じると繊細で影のある感じに見えるのが面白いし私好みだわ。来シーズン中にはプリンシパルに上がるのではないかな。
ところで今回はちょうどコジョカルがバーミンガムロイヤルバレエで日本に来ていたのでその相手役のトルシュのアルマンは観られなかったのですが、トルシュって背が高くないのにリフトが本当に上手かったなとあらためて思いました。来日公演の椿姫はもちろんなんですが、エレーヌと踊ったロミジュリとかも不安を全然感じなかったし。彼は感情表現もとてもストレートでハンブルクらしいダンサーだと思う。私は繊細な人に惹かれがちなので、ストライクゾーンとは少しズレるのですけどね。
スミルノワのマルグリット、踊りは流石でした。前述したけど、リフトされるシーンでは若いクリスを助けるように自分で上がって行っているように見え、何度も心の中で彼女に感謝。演技は、ハンブルクのダンサーとは異質で、あまり本人の素が見えてこない感じ。ボリショイではナマな感情を見せたり役に自分自身を反映させるということは推奨されていないのでしょうね。そのため、一幕二幕は「ちょっと冷たすぎるのでは?」と思ったけど、三幕はそんな彼女が少し自分の殻を破ったのか、役に憑かれたように深い演技をしていて心を打たれました。
私、実は彼女は好きなダンサーの一人なので今回まさかのハンブルク客演で彼女を見ることができてラッキーでした。ボリショイの次の女王は間違いなく彼女だと思う。物語バレエの表現はまだ伸びしろがあるけど27才ですから、年齢とともに表現も深まっていくのではないかな。今後が楽しみです!
マノンとデグリューはカロリーナ&サーシャ。カロリーナのマノンは序盤から徹頭徹尾優しくて、マノンを包み込む母性のかたまりのような存在でした。サーシャのデグリューはもう、ねえ。ぽーんと舞台に登場した瞬間から、うわ全く違う次元の人が降臨した!って感じがあって。ニジンスキーではあまり見られないエレガントに踊る彼を堪能。演技だけじゃなくてあのめっちゃ体幹のしっかりした上半身を柔らかく使う動きが本当に大好き―。彼、背も高くないし細いのに、舞台にいるときに支配している空間が広いなと思います。周囲の空気を一緒に動かしてる感じがあるんだよなあ。
プリュダンスの円加ちゃん、日本公演で観たときより演技が細かくなってたように思いました。三幕でマルグリットとアルマンが再開するときに次々と違う人とすれ違うシーンがあるのですが、すれ違う相手ごとにくるくる変わる表情が面白い^^ あと、二幕の冒頭はもう最高!彼女のリズム感のよい、そして正確で明るい生のエネルギーに溢れた踊りを観るだけで物凄く楽しくなってきちゃって、思わず席でにんまりしてしまうなど。
あと、エミリーのオランピアもすごーく良かった。彼女、役が憑依するタイプで存在感があるんですよねー。日本のファンにこの役でご披露できなかったのが超残念。そして、昼夜とアルマンパパを演じたイヴァンもディアギレフとは違う温かい雰囲気がとってもよかったです。この役は彼の素に近いのではないかしらね。
短かったけれど充実していたハンブルク弾丸遠征の感想は以上。次は7月のバレエ週間に訪問の予定です。
刷新された椿姫のパンフレットの表紙は初演のマリシア・ハイデでした。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?