横浜バレエフェスティバル2018
2018/7/21土 15:00- 神奈川県民ホール
夏はバレエのガラ公演がたくさんありますが、その初っ端が今年は横浜バレエフェスでした。なかなか楽しかったです。今年は一回公演でチケットも完売はしていなかったと思いますが、それでも暑いなか会場に詰めかけた観客は楽しんでいました。プログラム構成も、若手からベテラン、クラシックからコンテまでとバランスがよく、招聘ダンサーにはちゃんと交通費も支給されるそう。芸監の遠藤さんはじめ、運営の方のご尽力と才覚に感謝。
以下、演目ごとに感想を。
★第1部 フレッシャーズガラ
◇「スーブニール・ドゥ・チャイコフスキー」
振付:遠藤康行 *新作
川本真寧 縄田花怜 中村りず 竹内渚夏 丸山萌 ※ジュンヌバレエYOKOHAM
◇「エスメラルダ」よりアクティオンのヴァリエーション
森春陽
◇「眠れる森の美女」第3幕よりオーロラ姫のヴァリエーション
升本果歩
◇「SOLO2」 振付:遠藤康行
橋本杏梨 生方隆之介 ※ジュンヌバレエYOKOHAMA
◇「ドン・キホーテ」よりグラン・パ・ド・ドゥ
栗原ゆう 松浦祐磨
第一部で印象的だったのはやっぱり松浦君ですかね。彼今年のYAGPで一位だったのですか。高いテクニックとエレガントな身のこなし、そして愛嬌のあるお顔。今後は英国ロイヤルバレエ学校への留学が決まっているとのこと、今後が楽しみ。
★第2部 ワールドプレミアム
◇「Dido and Aeness」
振付:シディ・ラルビ・シェルカウイ *日本初演
オステアー紗良 加藤三希央
背中を向けて登場してきた瞬間から、黒いドレスを着たオステアー紗良さんに目が釘付け。上品で大人っぽく、かつ大きな存在感のあるとても素敵なダンサー。加藤さんも黒いパンツに赤いガウンで(柳本さんがボクサーって言ってたけど確かに^^; )、今回は大人っぽい役どころでした。ストーリーは男女の別れなのかな?という程度にしか分かりませんでしたが、リフトも含めてシェルカウイ独特のねじりの入った動きが面白く、引き込まれてしまった。私、ほんとにシェルカウイの舞踊言語好きだなあ。
◇「What We Did for Love」
振付:柳本雅寛 *新作
柳本雅寛 八幡顕光
柳本さんがおっしゃる通り「休憩」の感がある、彼のトークが入ったコント的な作品。でも、八幡さんに振付している(?)シーン面白かったな。「スワンレイク、バットマン・・・」。作品を創るときというのは、ああいう感じなのでしょうか。作品中で「思い出のアルバム」を歌うシーンがあるのですが、八幡さんがめっちゃ歌上手くて驚きました。今アメリカ拠点に活躍してらっしゃるし、もしかしてミュージカルを視野にボイストレーニングされてる??
◇「グランパ・クラシック」
金原里奈 二山治雄
二山君が昨年よりもかなりエレガントになっていて驚き。今パリオペで勉強中とのことですが、パリオペのスタイルが染みこんできてるのかな。金原さんも上手い!パートナーの二山君が背が低いのでサポートは多少苦しそうでしたが、その分彼に頼らず自分で立つわ!的な男前な心意気が感じられました。が、難しい振付もあくまで涼しい顔で完璧。
◇「シルヴィア」よりパ・ド・ドゥ 振付:ジョン・ノイマイヤー
菅井円加 ニコラス・グラスマン
円加ちゃんのシルヴィアが素晴らしすぎて、涙をにじませながら観ておりました・・・。シルヴィア役、オレリーでDVDも発売されていますが、オレリーの役作りとは全然違う。なのに、まるで円加ちゃんのために振付けられた作品なのかと思うようなはまりっぷり。もちろん、ニンが合っているというのはあると思いますが、でも彼女の場合は与えられた役を自分のものにする力が本当に凄いなといつも感じます。私の敬愛するサーシャもそう。これぞノイマイヤー・ダンサー!
オレリーのシルヴィアは凛々しくはあるが、高貴でかつ色っぽい。一方、円加ちゃんのそれは、「アマゾネス」という言葉が似合いそうな野生児(あの滞空時間の高いジャンプも効いてる!)。獲物を追う姿はワイルドだけど、でもそれが溢れる生命力を感じさせ、アミンタが惹きつけられたのはそこなんだろうなと納得してしまいました。そのシルヴィアが初めて男性という存在に出会い、「何だこの感覚は・・・?」と自分の感情に目覚めていく様がまた見事!
短い時間ではありましたが、そこにいたのは菅井円加じゃなくてシルヴィアそのもの。こういうふうに、振付を踊るだけでジョンのこめた物語を感じさせることができるダンサーって、今現役に何人いるだろう。未だ現役のサーシャとシルヴィアに加えて、ちょっと前にはロイドもブベニチェク兄弟もいたのに、今ハンブルクで主役級を重用されているダンサーにはそういう感動を与えてくれる人が少ないんです・・・(T_T) 私が円加ちゃんを応援したくなるのは、単に彼女が同郷だからではないんですよね。彼女は間違いなくハンブルクで日本人初のプリンシパルになるに相応しい人だと思います。頑張れ!
グラスマンはまだコールドのダンサーなんですが、なかなかよかった!ハンブルクのダンサーはコールドといえどノイマイヤーの精神が息づいているのだなと嬉しくなりました。
★第3部 ワールドプレミアム
◇「半獣」
振付:遠藤康行
小池ミモザ 遠藤康行
再演とのことでしたが、私は初めて拝見。音楽はドビュッシーの牧神で、音楽にマッチした印象深い作品でした。遠藤さんは上半身裸で袴にも似た黒いパンツ、ミモザさんは赤い袖なしのシャツ。お互い半身ずつ衣装をつけている形で、タイトルも半獣となっていますが、本来この人達は二人で一人という存在なのかなとも。途中までは二人とも腰につけたベルトで繋がったままなのですが、繋がれたままであんなに動けるのだなぁというのが面白かった。遠藤さんの体は美しかったけどうっすら脂肪が乗った感じで、この作品踊るために絞ったのかな?なんて思ったり。ミモザさんは本当に日本人離れした存在感のある人ですね。
◇「ロメオとジュリエット」よりバルコニーのパ・ド・ドゥ
振付:アンジェラン・プレルジョカージュ
津川友利江 バティスト・コワシュー
個人的なベストは円加ちゃんのシルヴィアだったんですが、次点がこれでした。音楽はプロコフィエフ。ジュリエットは上下に分かれた白い衣装で現代的ではありますが、清楚なイメージ。一方ロミオは破れたタンクトップにアーミー調ともとれるパンツ。振付からしても、ロミオはどこかのいいとこのぼっちゃんではなく、明らかに下層階級または肉体動労者か軍の人、といった感じでした。
プレルジョカージュ作品はル・パルクしかちゃんと観たことがないのですが、この作品では、手足や体のラインではなく、移動したり上下したりという身体の移動で感情を表現するような舞踊言語なのが面白かった。
ロミオの迫り方が物凄く強引で、今にも押し倒してしまうのでは・・・という荒っぽさ。でもジュリエットが自分を受け入れてくれると彼の方もピュアになる、というのが私の印象。去年エク版のロミジュリを観たときも思いましたけど、コンテの振付は、より感情表現が生な感じがするのでロミジュリなんかは共感性が高くなるなあ。
津川さんとコワシュー、二人とも凄く素敵なダンサー!津川さんは強靭な筋力を感じさせるけど、アジア人独特の繊細なニュアンスがあって好き!コワシュー、逞しい体でちょっと前半は怖くもあるんだけど、実は一本気なんだろうなということを感じさせる表現が素敵でした。プレルジョカージュのロミジュリとか、全幕観たいよぅ・・・。
◇「パリの炎」よりグラン・パ・ド・ドゥ
近藤亜香 チェンウ・グォ
このフェス常連のお二人がトリ。グォさん、体のラインが美しく、動きもエレガントでテクニックもしっかりしたいいダンサーですねー。近藤さんも、日本人らしからぬ、古典で堂々としたお姫様役をやれる存在感がある方。パリの炎、盛り上がりました!
来年の横浜バレエフェスティバルは8月開催予定とのことです。
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