母との時間③ 京都へ 〜その2
母との京都一泊旅行、二日目。
昨日の夜は、夜中にふと起き出して水を飲んだり暑がったり、
「そして私はどこにいるんだっけ…」
とつぶやくこと数回。
その気配を敏感に察して目覚めるあたり、自分もまだまだ子育てできるなと変な自信を感じた。産まないけど。
朝になると、母はそんな混乱が嘘のようにスッキリと目覚めた。
ゆっくり一時間かけてお風呂に入り、たっぷりオシャレな朝食を食べ、午前中はみなさんと一緒に北山の美術館に向かいながら、車窓に流れる鴨川の紅葉をゆったりと眺める。
あいにくの雨模様だったが、雨の京都もいいよね〜と満足気だった。
よかった。
そのあと、京都市内のタクシーが捕まらなすぎて新幹線に乗り遅れ、指定席チケットをドブに捨てることにはなったけど、そのあとの新幹線が混み込みすぎててグリーン車を予約する羽目にはなったけど、この旅行が楽しい思い出になったのなら本当によかった。
東京についてからも何故かやたらと交通の便が悪く、予定よりずっと遅い帰宅になってしまったけれど、母は最後まで、愚痴どころか「疲れた」の言葉一つ言わなかった。
私のほうが、母を気遣うあまりアクシデントに対して悲観的になったりショックを受けてしまったりして、「大丈夫よ、なるようにしかならないから!」と母に励まされる始末。
そんなときでも、みんないい人たちばっかりだった、すごく楽しかった、最高の経験だった、嫌な思いは一つもしなかった、ほんとうにありがとう、と笑顔で何度も繰り返す母の姿に、改めて自分の未熟さを感じさせられた。
いやもう本当に、いくつになってもこの人には敵わない。
こんなに素敵な人の娘であることを、私は心から誇りに思う。
覚えていられなくても、夢のように忘れてしまうことがあっても、
全てを忘れてしまうことは絶対にない。
たくさんの写真の助けを借りて、幸せを感じた時間を少しでも思い出してくれたら、もうそれだけでいい。
これが最後かなと覚悟していたけど、願わくばあともう少し、
もう少しだけ、一緒に思い出を作りたい。
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