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ネタバレいっぱい海神再読第十五回 三章4.驪媚からみて斡由はどんなだったか。

あらすじ:驪媚が斡由を語る。

●驪媚

尚隆の忠臣。先王の時代からの官吏で、昔は夫と子供がいたが、官吏になる時に別れてしまって消息も知らない…人生を仕事に捧げちゃった人なのだな。
個人的な侍官・下僕もいるが、おそらく皆捕らえられている。

●驪媚からみた斡由

・驪媚たちや他の国遣の官吏に酷いことをするような道を失った者ではない。
・ものの道理を分かっているし、民のことをよく気に掛けている。
・能吏で、ほとんど実権はないのに限られた権の中でよくやっていた。
…とかなり高評価。驪媚は牧伯で、尚隆が州侯・令尹の実権を取り上げてからは代わって州を治めなくてはならない立場で、でも州の実情を知らずに行政はできないから、斡由と組んで仕事してたのかも。仕事相手としてできる奴だと評価してたら、謀反起こされて囚われて、ショックだったろうな。
斡由がなんで謀反を起こしたかについては、

驪媚)主上には主上のお考えがおありなのです。それをお察し申し上げもせず、斡由は短慮を起こしたのでございましょう。

つまり、斡由が尚隆の治水政策をわけが判らない、民のためにならないと思ったとしても、きっと正しいと察して従うべきだったのに、そうしなかった。それは
・臣からも民からも慕われていたのに驕ってしまったから。
と、驪媚は思ってたんだな。
では、驪媚は尚隆の治水政策を分かってるかというと、そうではないらしい。分からなくても従うべきだ、という意見なんだ。

●元侯

斡由は令尹だけど、州を治めるのは本来州侯。州侯である元魁は斡由の父。
驪媚によると元侯は、

①お加減が悪く、城の奥深くに閉じ籠もられたまま、表には出てこない。
②斡由に万事任せている。
③心に病があって政務を執れない。
④未だに梟王を恐れて後宮から出ない。
⑤以前は気分のいい時に官を呼んで指図することもあった。
⑥近頃は世話をする官に対し梟王の刺客と騒ぐので、斡由が手ずから世話をしてる。

後にわかるようにこれは全て斡由の嘘。②と⑤は影武者と斡由が示し合わせて打った芝居で、⑥は影武者が言うことを聞かなくなったのの辻褄を合わせるために斡由のついた嘘。
噂してる諸官も驪媚も完全に騙されてるってことだ。

●麒麟と血の穢れ

発熱してる六太。顔色も悪く、酷い気分で横になってしまう。
それは四半日前に殺された亦信の血に酔ったせい。
しかし六太は女怪に守られたから亦信の流した血には触れてない。血そのものには触れなくても臭いとかでも酔う?
また、「風の万里黎明の空」十一章3の陽子によると、

たとえどんな大義があろうとも、人を殺し、あるいは殺すように命じれば、流された血は怨詛を含んで麒麟にまとわりつく。麒麟は実際、血に弱いが、怨詛の気もまた麒麟を苦しめる。

亦信が死に際に怨んだとしても相手は六太ではなく更夜か妖魔だろう。それでも血に酔うということは、麒麟は血を流して死んだ者の怨詛そのもの(自分以外に対してでも)に酔うのかもしれない。

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