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ネタバレいっぱい海神再読第二十六回 五章6. 尚隆の策について

あらすじ:王宮で三官吏は尚隆の策について語り合う。

●尚隆の策①民から志願兵を集める。

・たった三日で靖州では1,300、靖州以外からも民が次々と集まっている。
・二州が州師を貸すと申し出てるので、物資と兵のみ借りて関弓城の外に配置できる。

人数は確保した。しかし急拵えの軍で戦えるのかという帷湍の疑問への答えは策の④にある。

●尚隆の策②人事異動

・光州の六官ともと州侯は国府の六官と冢宰になるため光州をたった(つまり完全にのせられてる)。
・新しい光州州侯の太師は公金を掠めるより興味のない人間。だからこちらの都合で光州師の物資を押収できる。
・尚隆の小臣、毛旋を六官の一つ軍を管理する夏官長にした。

毛旋の出世ぶり?には笑ったけど、ポストには意味ないって事だね。あくまで実権は尚隆と三官吏が持つ。
毛旋を夏官長にしたのは、一応軍事の長官だからで、光州からきた夏官長が軍議に加わって来ない様にだろう。光州の州六官の夏官長は着く前にクビ…こんな扱いでよく騙されたな光州…ていうか気付く間もない人事攻撃。
小松尚隆は人事とかは父任せだった印象だけど、内心色々考えてたのを今実行してるんだろな。
これで光州は片付けて、物資もある程度確保。

●尚隆の策③潜入

・浮民のふりをして尚隆自身が元州州師にもぐりこんだ。

禁軍将軍は悪くない、にも笑ったけど、痛快時代劇ではベタな展開だけど、それだけなのか?

●尚隆の策④頑朴付近の漉水に堤を造らせる

策の①への帷湍の不安の答えがこれ。民の志願兵には戦闘をさせるつもりはもとからなかった、ということ。

帷湍)どうしてあいつは、いままでなまけていた付けを、この非常時に払おうとするんだ!

などと言ってますが、これ計画的作戦でしょう。それもかなり前からの。漉水に堤があったら出来ない作戦だからね。

●尚隆は何故、漉水の治水の裁可をくださなかったのか

堤作戦というか治水妨害作戦の目的は、その後の段取りの良さからいって斡由を引っ掛ける事、てのは確かだけど、引っ掛けた目的は何だろうか?
この時点での尚隆は斡由が父を幽閉してたことや囚人を始末してたことは知らない。斡由は治水の件でうるさく騒いだ挙げ句に謀反を企んだ者、と思ってたはず。
で、必要な治水をさせない政策に抗議する者としない者だと、どっちを尚隆は評価するかというと、前者じゃない?誘拐は良くないにしても過去荒廃と戦って民を守りもした。そういう奴を引っ掛けて、尚隆はどうするつもりだったのか?

この物語で尚隆は「民に幸いを恵む理想の王」と「逆賊を必ず処刑する梟王の様な怖ろしい王」と2つのイメージをまとってる。
尚隆が「理想の王」な場合、その理想は小松尚隆の理想だ。小松尚隆は自分が死んでも国が滅んでも、民が敵の民になって生きられればいいとか思ってた人なんだよね。 それが荒廃と戦って民を生かした過去の持ち主を全否定するとは思えないんだ。
そんな奴が何者なのか直に確かめたかったんじゃないか、白沢たちに後にしたように、できたら自分の側にひきこみたかったんじゃないか、 もし尚隆が「理想の王」の状態だったら。
しかし尚隆が「怖ろしい王」な場合、民を荒廃つまり災害から守った者を、自分に逆らうからという理由で、災害から守るための堤を使って叩き潰したかったんだということになる。尚隆がそんな事するはずがない、だろうか?では何故天災から民を守る治水の裁可をくださなかったのか?
これが解けないと尚隆は解けないと思うんですね。
私がどう思ってるかと言うと、尚隆自身迷ってたんではないかと思う。二つの自分の間で。

●麒麟誘拐事件

尚隆の作戦で唯一対応出来ないのは人質。

成笙)台輔を害されてしまえばそれまでだからな。

だから策③潜入の第一の目的は六太の救出だろうね。斡由を自分の目で確かめたい、とか、自分の身を危険に晒したい、てのもあったかもしれないけれど。

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