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ネタバレいっぱい海神再読第二十五回 五章5. 斡由は何故民の敵となったのか

あらすじ:民が次々と王師に志願する。

●女性は何故斡由を敵としたのか

関弓。五章2で民へのおふれが出された二日後。民が国府に押しかける。王や麒麟を心配する者、戦を危ぶむ者の中に、兵となって元と戦い王を守ると言う女性が現れる。何故そうするのかというと、荒廃の時代に妹を口減らしの為殺されたから。殺した者は仕方なかったと生きてるが、自分は忘れない。
だから自分の子供の将来を守り富を恵んでくれる王の為に戦う、と。次々賛同者が現れる感動の展開…なんだけど。
斡由推しの私には正直キツかったです。斡由の悪行が暴露される七章よりもずっとキツい。何故かというと、理不尽だから。
女性が憤ってるのは、荒廃の時代に弱者は仕方ないと妹が殺され周囲の者に見殺しにされたから。
では斡由は荒廃の中で民を見殺しにしただろうか?違うでしょ?父を幽閉し父の命令を偽造してまで荒廃と戦ったというのに、戦わなかった者への憎しみを叩きつけられる、この理不尽。

●一州しか守れないなら意味はないか

もちろんこの女性は悪くない。斡由が守れたのはたかが一州、他州の民には関係無い。
でも、たった一州しか守れないならなんの意味もないのか?そんな事はない、一州の民だって数であり命だ、とか思っちゃうんだけどな。更に、女性は王だけが荒廃から民を守れるとしてるけど、斡由のような莫迦が各州にいたらどうだったか。見殺しになる民は減ったんじゃないか。
つまり女性は斡由とは本来対立しないはずなのに敵として否定してしまってる、というのが理不尽なんだな。そうはいっても、十二国記は元々理不尽な展開のある物語だ。陽子が騙されまくるのも高里の使令の暴走も、理不尽でやりきれない。そんな理不尽にキャラがどう対応するかが肝心なんだよね。

●王は絶対正しいか

ところで女性が言う天意を受けた王は、恵み深く絶対的に正しい存在だ。王を守る戦いに対し懐疑的な老爺が居たけど、ひょっとして梟王を知ってる世代なんだろうか? そんな人は少数派で、そういう時代の流れを読めなかった斡由は莫迦…なんだろうか?道を失う王がいる事を我々読者は知っているのに?

●尚隆は何故、漉水の治水の裁可をくださなかったか

も一つ、尚隆の治水放棄は全く話題になってない。普通の民は災害が起きない限り災害対策なんて意識しないものだろう。まして荒廃からさえ守られなかった民にとっては、自分の身に大災害でも起きない限り、治水なんてやらなくたってなんの問題もないし気にもしない。抗議するのは荒廃にそれなりに抵抗してきた元州の民だけ。
だから尚隆は治水の裁可をくださなかったのか?(流石にそれはないだろうけど)
そんなことにこだわった斡由はどうしょうもない莫迦…なんだろうか?
斡由は乱について、治水は必要だし奏上したし州の自治は太綱にもあるから民に理解されるだろうと思ってて、でも民にとっては起こるかわからない災害より、法より何より尚隆の情報戦略のが上だった、てことか。シビアだな〜
では元州の民はどうだったのかは七章以降やっていきますね。

●麒麟誘拐事件

最後にこの台詞。「もしも元州が台輔を殺せば、王も斃れるということではないの」 …誘拐ものなんだよね、海神って。

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