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ネタバレ「東の海神西の滄海」+「漂舶」

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記事「ネタバレいっぱい海神再読」をまとめました! 「十二国記」の「東の海神西の滄海」の感想文、全章に渡って全伏線を拾ったつもり。クライマックス八章2と続編「漂舶」の謎を解け!
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#更夜

ネタバレいっぱい海神再読 海神の謎に挑戦!

はじめまして。樹狐と申します。よろしくお願いします。 早速ですが、これから十二国記「東の海神西の滄海」(以下「海神」とする)のネタバレ再読感想文を始めます。 感想文といってもすごい長いです。各章の各区切りごと、ところによってはかなり長くなっています。あと海神の他の章のこととか、シリーズの他の話のこともでてきたりします。 なんでそうなるかというと、海神を綿密に伏線を張った精密機械みたいな物語と思ってるからです。ネタバレありありなんで、初読の方はシリーズを出来たら全部、最低「月

ネタバレいっぱい海神再読第二回 序章.何故このタイトルになったのか?

あらすじ:虚海の東と西とで子供が親に捨てられた。 ●東のこども西のこども …てのが海神のタイトル案だったそうです(1994/3/30発行「京都私設情報局 通信第8号」より)。つまり、二人のこどもが出ることは初めから決まってたんですね。 さて序章。東のこども、六太は親に捨てられるのを仕方がない事として許している。八章4の回想では小松が滅んだ直後の尚隆を、小松の全滅はお前のせいではないだろうと同じように許している。運命に抗わない姿勢は海神では一貫している。幼い六太が人ならぬも

ネタバレいっぱい海神再読第三回 一章1.作中最大の敵はこいつらじゃないの?

あらすじ:延麒六太は新王尚隆を荒廃した雁国に連れて来た。 ●敵その1、荒廃。 物語は荒廃に痛めつけられた雁国の描写から始まる。 荒廃は… ・荒れ果てた緑のない大地 ・崩壊した畦、崩れ焦げた石垣、瓦礫と化した里の建物…といった壊れた建造物 ・火に焙られた里木だけに守られて、しかし動く力もない民 ・飢えて落ちる妖魔 …というように具体的に描写されてる。 荒廃は、この話だけでなくシリーズ全体の真の敵役ではないかと思うんだけど、最もまとめて描かれてるのがこの物語のここなんじゃない

ネタバレいっぱい海神再読第四回 一章2.尚隆は何故、漉水の治水の裁可をくださなかったか

あらすじ:二十年後、朱衡・帷湍登場。尚隆と六太に漉水の裁可を求める。 ●尚隆は何故、漉水治水の裁可を下さないのか 二十年後、王宮。緑の増えた地上を雲海の上から見下ろす六太。尚隆の側近、朱衡が苦情を述べる。 朱衡の苦情の要点は三つ ①尚隆が漉水の治水の裁可をくださない。(「治水が至らねば台輔がただいまお喜びの緑の農地も、悉く沈んでしまうのです」) ②尚隆が朝議に来ない。本来毎日(月に三十回?)あるはずなのを月に十度にしたのは尚隆なのに、月に一度しか来ない(ちなみに六太は

ネタバレいっぱい海神再読第七回 二章1.六太の過去について

あらすじ:六太は戦乱に巻き込まれて捨てられた過去を思い出し、もうひとりの子供を思い出す ●梟王の暴虐続き 王宮の人手が薄いのも梟王のせいだった! ●応仁の乱 応仁の乱は1467〜1477、六太の回想では、京の街が乱で焼かれた結果として捨てられたのが四才のころだから、六太が生まれたのは1463〜1473の間。よって尚隆が王になったのは1476〜1486の間ってことになる。 海神の『いま』はさらに二十年後だから1496〜1506の間。だからどうしたですが、西暦にすると当時

ネタバレいっぱい海神再読第八回 二章2.六太は何故更夜を拾わなかったのか?

あらすじ:六太は十八年前に出逢った更夜のことを思い出す。 ●更夜の謎 ①妖魔に乗って空を飛んでいた。 ②六太より少し年下。 ③親に捨てられ里人に捨てられたあと、妖魔に拾われ養われた。 ④妖魔にお願いすることができる(聞いてもらえない時もある)。 ⑤妖魔は人を食べる。子供は食べない。妖魔にも食べないでと言うが聞いてくれない。 ⑥蓬莱(=日本)に父がいると母から教えられ、蓬莱を探している(が、それは嘘だった。六太から人は蓬莱へは行けないと教えられる)。 ⑦妖魔と一緒に人に攻撃

ネタバレいっぱい海神再読第十回 二章4.六太は何故更夜に甘かったのか?

あらすじ:更夜が六太を訪ねてやってきた。六太は更夜に誘われて一緒に王宮を抜け出す。 ●六太の気持ち 更夜がたずねてきたと聞いて ・信じられない ・二度と会うことはないだろうと思っていた。 ・生きてはいないかもしれないとさえ思っていた。 ・更夜を友だといい会いに行く。 ●更夜の態度 一方更夜は、 ・深々と叩頭する。身なりは整っている。言葉も鳴き声ではない。 ・敬語を使って訪ねてきた経緯を話す。六太が許すまで、態度を崩さない。 ・六太が許したら…そばで見降ろしたりするんだ

ネタバレいっぱい海神再読第十一回 二章5.亦信は何故犠牲となったか?

あらすじ:妖魔の大きいのに会うため郊外に誘い出された六太。だが随身の亦信は妖魔に殺され、更夜は拐ってきた赤子を人質に取る。更夜は斡由に遣わされた誘拐犯だったのだ。 ●亦信 六太の護衛官で、もともと成笙の麾下。成笙が投獄されると麾下の多くが辞職を願い、自宅に謹慎して成笙が牢を出るまで一歩も外に出なかった。その何割かは惨殺されたが、生き残った者もかなり居て、亦信もその一人。 …つまり梟王末期から尚隆が王になるまで五十年近く、大勢の優れた仙が妖魔も倒さず災害とも戦わず閉じこもっ

ネタバレいっぱい海神再読第十二回 三章1.斡由は何故更夜を拾ったのか?

あらすじ:18年前、更夜は斡由に出会い、妖魔ごと斡由に拾われた。 ●更夜の孤独 六太と別れてからの更夜。 ・夢みてた蓬莱には行けないと教えられた。 ・でも人恋しい。だから更夜という名前を忘れたくない。でも妖魔の大きいのは呼んでくれない。 ・大きいのに人を襲わせたくない。だから自分で狩りをして人以外の餌を与える。 ・でも大きいのといると自分も妖魔として攻撃される。 ・大きいのと離れれば六太のところに行って人とともに暮らせるだろうか。 ・でも大きいのとは別れられない。この妖魔

ネタバレいっぱい海神再読第十四回 三章3.赤索条の謎

あらすじ:尚隆の牧伯、驪媚も囚われていた。更夜は六太・驪媚・赤子に赤索条をかける。 ●赤索条の謎 麒麟の力を封じる赤索条。使い方はこう。 ・六太の額の角の箇所に白い石を当てる。 (六太は苦痛を感じる) ・石に赤い糸を渡して頭に結び押さえ、結び目に呪を唱える。 (苦痛はやみ、体の中に空洞ができた気がして麒麟の力が封じられた) ・赤子の首にも赤い糸を巻きつけ結んで呪を唱える。 ・驪媚の額にも白い石が赤い糸で括られている。 (麒麟の角のように仙も額に第三の眼があるが、それを封じ

ネタバレいっぱい海神再読第十八回 四章2.六太のトラウマ

あらすじ:議論を受けて、六太と更夜は語り合う。 ●六太の負い目 六太は更夜に身の上話をする。応仁の乱のトラウマのこと。王探しから三年間逃げてたこと。 ここで引っかかるのは「無為に過ごした三年の月日」「帷湍は王を責めるが本当に責任あるのは六太のほう」という独白。麒麟が王探しから逃げるのは民にとってどういう事か解ってて、うるさ型の帷湍には言わなくて更夜に言う。その頃母に捨てられて妖魔に拾われなければ生きていなかったかもしれない更夜に、自分が辛かった話として。 麒麟には天

ネタバレいっぱい海神再読第二十三回 五章3.「私もです、台輔」

あらすじ:現在、頑朴。六太と更夜、そして斡由は漉水を見ながら語り合う。 ●尚隆は何故、漉水の治水の裁可をくださなかったのか もうすぐ雨季。今年も治水は間に合いそうにない。漉水氾濫への恐怖が元州の民を謀反に追いやった、と六太はこの時点では認識してた。この恐怖をもたらしたのは尚隆。尚隆は漉水流域の元州の民の命を脅かす事で斡由を操ったともいえる。つまりこれも人質の一種? ●麒麟誘拐事件 六太誘拐の策を授けたのは斡由だと告げる更夜。更夜と斡由は共犯者なんだよね。 ●民は数か

ネタバレいっぱい海神再読第二十八回 六章2. 斡由は何故光州を信用したのか。

あらすじ:舞台、頑朴城。露台から元州を見下ろす斡由と警護する更夜(と大きいの)。そこへやってきた白沢。王師が民を加え続けていると報せる。更に同盟州光州の裏切り。 白沢は言う、自分たちは天命の威信をあまりに軽んじていたのかもしれない、と。 梟王を持ち出し反論する斡由。 しかし「民はそれを信じているのです」 その時更夜の懐で赤索条が切れる。 ●下界を見やる斡由 こうして元州を、頑朴を雲海を通して見るのが好きだったんだろうなあ。 ●斡由と白沢と更夜 更夜はこうして二人を警護

ネタバレいっぱい海神再読 第二十九回 六章3. 斡由の信じたもの

あらすじ:牢屋に駆け込む更夜。赤索条から解放され、しかし驪媚の血を浴びて意識不明に陥る六太。 更夜の報告を受けた斡由と白沢の問答。斡由はまだ信じていた、民も説明すれば解ってくれる、と。 ●麒麟と血の穢れ 大きいのの警告にもかかわらず六太に駆け寄ろうとし、使令に襲われかけたにもかかわらず六太に呼ばれたら迷わず駆け寄る更夜はいい奴だ。 六太は血に弱い。血に触れたわけでなくても、近くで怨みをもって流血して死んだ者がいたら亦信の時のように熱を出して寝込むんだから、自分の身に血を浴