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ネタバレ「東の海神西の滄海」+「漂舶」

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記事「ネタバレいっぱい海神再読」をまとめました! 「十二国記」の「東の海神西の滄海」の感想文、全章に渡って全伏線を拾ったつもり。クライマックス八章2と続編「漂舶」の謎を解け!
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2023年9月の記事一覧

ネタバレいっぱい海神再読 海神の謎に挑戦!

はじめまして。樹狐と申します。よろしくお願いします。 早速ですが、これから十二国記「東の海神西の滄海」(以下「海神」とする)のネタバレ再読感想文を始めます。 感想文といってもすごい長いです。各章の各区切りごと、ところによってはかなり長くなっています。あと海神の他の章のこととか、シリーズの他の話のこともでてきたりします。 なんでそうなるかというと、海神を綿密に伏線を張った精密機械みたいな物語と思ってるからです。ネタバレありありなんで、初読の方はシリーズを出来たら全部、最低「月

ネタバレいっぱい海神再読第二回 序章.何故このタイトルになったのか?

あらすじ:虚海の東と西とで子供が親に捨てられた。 ●東のこども西のこども …てのが海神のタイトル案だったそうです(1994/3/30発行「京都私設情報局 通信第8号」より)。つまり、二人のこどもが出ることは初めから決まってたんですね。 さて序章。東のこども、六太は親に捨てられるのを仕方がない事として許している。八章4の回想では小松が滅んだ直後の尚隆を、小松の全滅はお前のせいではないだろうと同じように許している。運命に抗わない姿勢は海神では一貫している。幼い六太が人ならぬも

ネタバレいっぱい海神再読第三回 一章1.作中最大の敵はこいつらじゃないの?

あらすじ:延麒六太は新王尚隆を荒廃した雁国に連れて来た。 ●敵その1、荒廃。 物語は荒廃に痛めつけられた雁国の描写から始まる。 荒廃は… ・荒れ果てた緑のない大地 ・崩壊した畦、崩れ焦げた石垣、瓦礫と化した里の建物…といった壊れた建造物 ・火に焙られた里木だけに守られて、しかし動く力もない民 ・飢えて落ちる妖魔 …というように具体的に描写されてる。 荒廃は、この話だけでなくシリーズ全体の真の敵役ではないかと思うんだけど、最もまとめて描かれてるのがこの物語のここなんじゃない

ネタバレいっぱい海神再読第四回 一章2.尚隆は何故、漉水の治水の裁可をくださなかったか

あらすじ:二十年後、朱衡・帷湍登場。尚隆と六太に漉水の裁可を求める。 ●尚隆は何故、漉水治水の裁可を下さないのか 二十年後、王宮。緑の増えた地上を雲海の上から見下ろす六太。尚隆の側近、朱衡が苦情を述べる。 朱衡の苦情の要点は三つ ①尚隆が漉水の治水の裁可をくださない。(「治水が至らねば台輔がただいまお喜びの緑の農地も、悉く沈んでしまうのです」) ②尚隆が朝議に来ない。本来毎日(月に三十回?)あるはずなのを月に十度にしたのは尚隆なのに、月に一度しか来ない(ちなみに六太は

ネタバレいっぱい海神再読第五回 一章3.尚隆の治世の才について

あらすじ:朱衡・帷湍が側近となった経緯、王としての尚隆の才について語り合う。 ●雁の気候について 雁の季節は風にもたらされるらしい。 夏は西の内海黒海から吹く冷たい風で涼しく、冬は北東の虚海の戴国から来る乾いた冷たい風で寒く、間の秋が作物の生育に適した気候らしい。いまは夏の終わりで秋の始め。秋の終わりに一月ほどの雨期が来る… 気候設定の創り込みが素晴らしい。海神は時間が入り組んでるけど、作中の「いま」は秋の始めから終わり、すなわち雨期の始まりに向かって突き進んでいくんだよ