見出し画像

札幌市 みんなの気候変動ゼミ・ワークショップレポート

日本列島を襲う台風、大雨。10月12日に日本へ上陸し、激しい爪痕を残した台風19号は記憶に新しいのではないでしょうか。

明確に災害が発生するものだけでなく、比較的長い年月をかけて「変化」は起こっています。世界の平均気温は確実に上昇を続けており、海水温も上昇、北極海の海氷は有意に減少。

もっと身近に、たとえば北海道の気温はどうでしょう。札幌管区気象台によると、北海道内7地点の平均気温は、ここ100年あたり約1.6℃の上昇が観測されています。このまま21世紀末を迎える頃には、冬の最低気温が4℃程度上昇し、最高気温30℃以上の真夏日は年間10日程度増加すると予測されているようです。

では、どうするのか?対話から見えてくる市民の声

このような地球環境の変化を、「気候変動」と呼びます。キコーヘンドー。聞き慣れない言葉かもしれません。だけどそれは間違いなく、私たちや次の世代の生活の質に影響を及ぼすものです。

では、どうするのか?私たちに何かできることはないのだろうか?

なにかを実現するためには、まず知ること、そしてみんなで考えることが大切です。この気候変動ゼミ・ワークショップは、気候変動について「ガチ」で考える場所として開かれました。

画像1

全8回にわたり開かれる本プロジェクト。第1回のテーマは、「気候が変動するってどういうこと?」。参加者は30名程度、中学生から年配の方まで幅広い層が集まりました。今後は第2回「札幌市の気候変動対策って何をしているの?」、第3回「気候変動に伴う北海道人の実感」と続いてゆきます。

ここでは一般的な講演とは異なり、「対話」という方法が使われます。対話とは、一言でいえば「みんなが大切にしていること」をはっきりさせるための営みです。自分の中にあるけれど、普段は忙しくて中々表に出てこない、大切なこと。本当の話。これを少しでも社会に反映させていくためには、対話することが必要になります。

画像2

代表ファシリテーターは、一般社団法人サステナビリティ・ダイアログ代表の牧原ゆりえさん。

留学先のスウェーデンで学んだサステナビリティ戦略フレームワークをもとに、対話を使って当プロジェクトをホストしていきます。

「対話で課題解決するわけではありません。いま見えている課題は氷山の一角で、その根っこにはパターン、根本的な構造、考え方があります。その『モト』をさぐり、働きかけることが大切です。」

世界の今と未来。後戻りのできない「気候変動」をつかむ

画像3

対話の準備が整ったら、気候変動に関する「ゼミ」の時間になります。

猛暑や水害の影響で今までのように農作物を育てることが難しくなってしまった未来を描いた、環境省制作の映像作品「2100年 未来の天気予報」。まずは全員で「気候変動とは何か」のイメージをつかみます。

https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/2100weather/

地球温暖化対策が実らず、平均気温が最大4.8℃上昇した世界。環境に関する話題は規模が大きく実感しづらいものですが、長期的にみるとハッキリと影響が出てしまうことがわかります。

画像4

続いて、札幌市役所職員から気候変動にまつわるイントロダクションが行われます。

地球温暖化は温室効果ガスが蓄積することで引き起こされるものであること、CO2濃度が急激に上昇していること、そして気候変動は不可逆であること。世界の現在と未来が、数字をベースに淡々と述べられます。

「直接感じられないこと」への回路を開く

画像5

突然頭に流れ込んできた膨大な情報量。参加者から笑顔が消え、真剣な眼差しへと変わっていきました。

ひととおりの解説を受けたら、手を動かす時間。お話を受けて「心が動いたこと」「なるほどと思ったこと」を付箋に書き、思考や思いをシェアします。

「気温上昇数が1.5℃であるのと2℃であるのでは全然違う」「対策している国は、具体的に何をしているのだろう」「科学は信用できるのか」……

これらの意見は、参加者それぞれが感じたことであり、聞こえたこと。そこに正解や不正解はありません。

画像6

画像7

最後に行うのは、同時進行されているグラフィックレコーディングのポスターにシールを貼る作業。今日語られたことの中で興味を持った部分はどこか、自分に問いかけながら貼り付けます。

これにより「場の興味」を可視化したところで、第一回目はクローズとなりました。

画像8

気候変動をはじめとする環境問題は、「今すぐ、身に危険を感じる」ことが難しいテーマです。つまり、直接的には分からない、感じづらいもの。しかし、もはや「危ないから避ける」といった感覚に頼っていられない段階に突入しています。

「もし気候変動が本当でないなら、これだけ集まって考えたことが無駄になってしまうのではないか?」そう考える方もいるかもしれません。確かに、地球温暖化に関する懐疑論が存在することも事実です。しかし、もし気候変動が進み、取り返しのつかない状況になったときに「やっておけばよかった」となることは避けたい。

世界の様々な状況、私たちの大切にしたいことをゆっくり学び、みんなで賢くなる。そして私たちにできることを探り、実行する。全8回の開催を通し、持続可能な社会を作るための方法を生み出していきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?