見出し画像

なんにもない町だけど君が好きそうだよ

 偽文書作成で有名な江戸時代の文書偽造名人椿井政隆さんの治めていたとされる地、椿井郷へ行ってきた。
 結論から言うとあの場所には何もなかった。あるのは民家と森とぐらいで見どころは椿井大塚山古墳くらいだろうか、行く道中に寄ったコンビニでレジのおじさんに「どこ向かってるんや」と聞かれて椿井郷と答えたら「え〜あんなとこ行くんか」と驚かれるレベルで何もない。それでも、私にとっては楽しい場所だった。
 偽文書で百年二百年人を騙し続けた偽文書作成の天才がそこに住み、飲み食いをし、呼吸をしていた土地だ。そして、この小さな村の中で作られた偽文書が今も多くの人を騙し続けている、ロマンの塊だ。ここで様々な絵のタッチと色々な人の筆跡を学び、偽文書ごとに絵のタッチや筆跡を変えられるまでになり、楽しみながら人を騙していたのだから。
 昔からあるという道祖神や最近できたという道を見比べつつ昔を想像した。山の麓の集落であるからやはり上の方に家があったのだろうかとかこの神社に参っていたのだろうか、とかとにかく感動が止まらない。偽文書工房があったと噂されるためその工房がどこにあったのだろうかとか想像するのもかなり楽しかった。
 きっと何も知らねば全く何もないただの村なのだが、歴史的偉人がそこにいてその人と同じ空気を吸えているだけで幸せをかなり感じた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?