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『”不妊症”の当事者って誰だろう』ーデータで見る”不妊症”の動向と自分の関係について考えてみませんか?ー

皆さん!こんにちは!
産業保健師&性教育認定講師&不妊カウンセラーの🦒きりん🦒です。
(もはや、ただの資格ゲッターのようにしか見えない件はさておいて下さい…)

今日は、久々に”不妊症”について記事を書きます。
コロナで数年間、各所属学会をオンデマンド参加していた🦒
ようやく、現地での参加が出来るようになり(&子育ても少しだけ手放せるようになり)5月の学会月間で様々な刺激を受けて参りました。

”不妊症”について、
・自分自身が経験し痛感した世界
・高度生殖医療の総本山と呼ばれる病院で看護師として働いて見えた世界
・産業保健の現場に来て見えて来た”組織”や”企業”の世界
様々な角度から、見て聴いて感じて考えるようになりました。
そんな私が出来る事について絶賛模索している最中ですが、
発信できることをどんどん発信して行こうと思い、今日はその初回

「ま、まずは現状を私も学び直し共有して行こう」
という想いから
『データで見る”不妊症”の動向と自分の関係について考えてみませんか?』というサブタイトルを付けて記事を書きました。
主題【”不妊症”の当事者って誰ですが?】
という問いを、この記事を読み終わった後に、読者の皆様が考える1つの機会になりますと幸いです。
*このシリーズは全5回で着地予定です*

では、今日も参りましょう!

1.そもそも”不妊症”って何ですか?

「不妊」とは、妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間妊娠しないものをいいます。日本産科婦人科学会では、この「一定期間」について「1年というのが一般的である」と定義しています。

公益社団法人 日本産科婦人科学会 HOME > 産科・婦人科の病気 > 不妊症より

"一定の期間"が「1年」とされている理由は、諸外国の定義(*1)を受けて設定されたようです。
(※2015年頃に2年→1年に変更されています!ここもアップデートですね!)

(*1)WHOでは2009年から不妊症を「1年以上の不妊期間を持つもの」と定義しており、さらに妊娠を考える夫婦の年齢がより高い米国の生殖医学会でも2013年に、「不妊症と定義できるのは1年間の不妊期間を持つものであるが、女性の年齢が35歳以上の場合には6ヶ月の不妊期間が経過したあとは検査を開始することは認められる」とを提唱しています。

日本産婦人科医会HP 2.不妊症の定義・分類・治療法より

しかし、年齢や基礎疾患(元々持っている病気)によって、妊娠率は異なる事から、”一般的”というような表現にをしているのだと思います。

では、よく聞く”年齢”に少し着目してみましょう🦒…。

男性・女性ともに健康や生殖機能に問題のない二人が排卵日付近に性交渉を行った場合、
1周期(1回の排卵)当たりの自然妊娠率は20 歳前半で 30%、30 歳で 20%、35 歳で 10%程度と言われています。

公益社団法人 日本産科婦人科学会 HUMAN+第二版より

そして更に年齢を重ねて行くと、妊娠率は低下していきます。
え?20代って妊娠するんじゃないのか⁉1回の排卵で30%なの?

と驚いた方も居らっしゃたかもしれませんが、意外と人間って妊娠しにくい生き物のよう…。
※脱線しますが月経周期毎の妊娠率、ウサギは90%マントヒヒは80%というデータもあるみたいです。(*3‗P.37より )

元々妊娠率がそんなに高くない人間。
社会情勢からも分かるように晩婚化により妊孕性(にんようせい:妊娠するための力)の低下を伴うようになれば、”不妊”に悩む人が増えることは必然ですよね。
シリーズ別の回にて、この点(妊孕性の低下について)は詳しくお伝えして行こうと思います!
参考までに、こちらもどうぞ👇

2.データで見る不妊症

では、実際に不妊症について、どのくらいの人が心配を抱え、治療や検査を受けているのでしょうか?

【約4.4組に1組】
日本では、不妊を心配したことがある夫婦は39.2%で、夫婦全体の約2.6組に1組の割合になりま す。また、実際に不妊の検査や治療を受けたことがある(または現在受けている)夫婦は22.7% で、夫婦全体の約4.4組に1組の割合になります。

厚生労働省不妊治療と仕事の両立サポートハンドブックより

(図1)不妊の検査や治療を受けたことがある夫婦の割合

心配に思う人も、検査や治療を受けたことがあるという人も徐々に上昇している事が見受けられますね。
しかし、”不妊の検査を受ける”という行動は、ブライダルチェックという意味合いもありますので、🦒の中では、ヘルスリテラシーの向上した結果も含まれるのではないか?と思う所も…
ですので、捉え方による所もあるかなと個人的には思います。
(「卵子も老化する」:卵子老化の真実(河合 蘭 (著))というワードが日本を震撼させ、年齢が上がると妊孕性が低下するというのが世に大きく知れ渡ったのが10年前になりまして、その現実にも震撼する🦒)
上記の書籍により、広く「妊孕性は加齢と共に低下する」というのが知られ、危機感のみならず、リテラシーの向上に繋がっていると🦒は思うのです。

では、実際に生殖補助医療(ここでは、体外受精と認識して頂いて良いかと思います)で産まれた子供はどのくらいいるのでしょうか?

(図2) 全出生児に占める生殖補助医療による出生児の割合

2020年に日本では60,381人が生殖補助医療により誕生しており、これは全出生児(840,835人) の7.2%に当たり、約13.9人に1人の割合になります。

厚生労働省不妊治療と仕事の両立サポートハンドブックより

2020年のデータでは、約14人に1人の割合で体外受精によって児が誕生したようですね。
この中には、一般不妊治療(タイミング療法や人工授精)は含まれませんので、不妊治療により誕生した児は更に多いと考えられます。

また、上記は”出産”(児を迎えたケース)であり、その裏には多くの”生産児(児が生きて生まれる事)を得られなかったケース”が存在していることになります。

そう思うと、どれだけの人が”不妊症”に悩みながら治療を受けているのかなんて、計り知れないですね。

よく使われる例えに
クラス(恐らく小学校の学級単位?)で2人は体外受精児であると表現されます。
そう考えると、その子の親(父/母)は不妊治療を実際に受けた人。
(2×2なので1クラスに4名以上)
その他にも、体外受精以外の不妊治療を受けた人、2人目/3人目不妊で実際に治療を受けている人もいるかもしれないと思うと、
クラス単位でも非常に多くの人が不妊に悩んでいる可能性が見えてきます。

🦒心の声

”不妊症”というセンシティブなワード。
心に秘めて働いている人が皆さんの周りにはどれだけいるでしょうか?
(読者さんの中には現在治療中の方も、私のように過去に治療を受けた方もいらっしゃると思います。更に、友人や家族でもいらっしゃるのではないでしょうか?)

今日、皆さんが仕事でお話した人の中にも、”不妊”に悩んでいる/過去に治療を受けたことがある/実は将来悩むかもしれない/周囲の人が悩んでいる”
という人がいても何ら不思議ではないのです。

働く世代を対象に業務を行う我々産業保健職。
私たちが”不妊”について知っておくことはきっとどこかで何かの役に立つのではと🦒は思います。

3.”不妊症”の当事者って誰だろう

さて、今回のnoteテーマ”当事者”について、考えて行きましょう。
お決まりの”定義”から。

とうじ‐しゃ〔タウジ‐〕【当事者】
その事柄に直接関係している人。
ある法律関係に直接関与する人。

デジタル大辞泉 「当事者」の意味・読み・例文・類語より

”その事柄に直接関係している人”か…。
狭義では、”不妊治療を受けているカップル”であると思います。
(勿論、パートナーが居ない時に卵子凍結を行う場合も有ります)
脱線しますが、卵子凍結についてはコチラをどうぞ👇

敢えて、”カップル”と書いたのは、不妊症の原因の半分は男性にもあるという事があまり知られていないので、そこも知って欲しいという願いからです。👇
不妊症の原因

日本受精着床学会・倫理委員会:非配偶者間の生殖医療に関する生殖補助医療に関する不妊患者の意識調査.日本受精着床会誌 2004;21:6-14より

詳細は、こちらも参照下さい。

そして、広義では…?
”不妊治療を受けている人とその周囲の人”とも読めるのではないかと個人的には思います。
それは、家族(ご自身の兄弟やお子さん)、友人、会社の同僚や上司、治療と仕事の両立支援をする人(医療者)…。
非常に多くの人を指します。

女性の社会進出による晩婚/晩産化、妊娠・出産に伴うキャリア形成のetc,など含むと社会全体が当事者と言っても全く過言ではございません!と🦒は思います。

我々産業保健職も”不妊症”を知って
(いや、頭の片隅に存在して、必要な時に引き出せればヨシッ!)
企業人として、どのように付き合っていくのか、
一緒に考えてみませんか?

4.まとめ

今回はシリーズの初回。
”不妊症”って何?どれだけの人が悩んでる?
人は意外と妊娠しない。
妊娠出来る年齢は限られている。(年齢を重ねると妊孕性が低下する)
女性だけでなく男性にも原因がある場合もある。
カップルで向き合って行く(る)ものである。
(だって、2人の子なんですもの)
そして、社会全体でも向き合って行くものである。
当事者は誰でもなりうる、いや社会全体が当事者だと思いませんか?
という事を押さえて頂ければヨシッかなと思います🦒。

シリーズの全ての回で共通して🦒がお伝えしたいのは、
「妊娠を望んだ人(カップル)が。望んだ時に、望んだ相手と、望んだ形で子を迎えられるよう。ご本人(カップル含む)も、支える周囲の方も知識がどっかで生きればヨシッ!」という事です。

次回は、不妊症に悩む人々の心の負担について、データを見ながら考えてみようと考えています。

今日も、ありがとうございました🦒…!

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