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【イベントレポート】「キキ、迷っています!」小さな「問い」を大切に。キキ3周年イベントで振り返る、キキのこれまでとこれから

2023年3月4日、合同会社キキは創業3周年を迎えました。

キキは2020年3月4日に「こうありたい日常を、​自らの手でつくり出す。」をフィロソフィーに掲げ、九里美綺、川向思季の二人によって創業されました。

「ミキとシキ」によって生まれたキキは、少しずつ関わる人や仲間を増やし、木々が枝葉を伸ばすように成長してきました。創業記念日の「キキの日」は、キキの周りのひとびとに感謝しながら、少し先の未来について話し合う日。

3周年の節目となった本年も、これまでキキがお世話になった人、これからのキキを一緒に考えてほしい人、はたまたふらっと当日に縁あって訪れた人たちと一緒に、キキのこれまでとこれからを話し合いました。

ここからまた「キキの森」に風が吹き、新しい芽吹きを呼ぶような気配を感じさせる、あたたかい春の一日の様子をお届けします。

キキが迎えた3度目の春。みんなの「春になったらしたいこと」は?

会場となったのは長野市内の県ビル。到着した参加者たちは、2つの大きなテーブルに分かれて座ります。参加者が揃うまで、それぞれ自由におしゃべり。

「はじめまして」、「今日はどこから来たの?」と自己紹介をし合う参加者もいれば、「最近どう?」、「今何してるの?」と近況報告をする顔見知り同士も。どこかそわそわした、でもわくわくする空気感です。

参加者が揃い、いよいよ「キキの日」のスタートです。ファシリテーターを努める、キキメンバーの小宮山文登(こみやまあやと)の「今日はキキの日!キキは今日で三歳です!」の一声に会場から拍手が上がります。

キキメンバーの一人である小宮山(画像左)は「キキの言いたい放題担当」として、「ミキとシキ」の二人で始まったキキをかき混ぜ、新しい空気を入れてきました。春になったらしたいことは、友達たちと庭を作ること。

イベントを始める前に、代表の九里美綺(くのりみき)より「キキの日」の趣旨が説明されます。

九里 「キキは元々二人で立ち上げた会社ですが、私たちが目指しているのは木々や植物が育ち、動物たちが集う『森』です。これからも、たくさんの人を巻き込みながら、会社を作っていきたいと考えています。『キキの日』は、周りの人に感謝しながら、少し先の未来について話し合う日です。

ミキとシキの二人は、会社を立ち上げようとしたわけではなく、「こうありたい日常を、自らの手でつくり出す」という目的を達成するために会社という枠組みが必要でした。

そこで、毎年3月4日には「組織としてのキキはこれからも必要なのか?」、「来年はどんな形になっていったらいいか」を、お世話になっている人たちやこれからキキと関わっている人たちを招き、一緒に話し合っているのです。

今日のイベントの構成は下記の通り。

オープニング
①キキの最近の事業の振り返り&そこから見えたものや期待
②キキメンバーのこれから
③フリーセッション
④クロージング

参加者の机には、「気づいたこと/仮説」と「問い」を書き込むポストイットが。イベント中に出た話について、気になったことや聞きたいこと、考えたことをメモしておき、最後のフリーセッションで話し合います。

まずは参加者のチェックインから。キキメンバーを含む参加者それぞれが、「かんたんな自己紹介」、「キキとの関わり方」、「春になったらしたいこと」を一人ずつ共有していきます。

キキの「秘書」担当、県立大学四年生の長谷川真希(はせがわまき)。入学時からシキに憧れを抱き、キキが法人化したタイミングでキキのスタッフに。春になったらしたいことは、お花見をすること。
参加者にコーヒーを振る舞ったODDO coffee(オッドコーヒー)店主の小倉翔太(おぐらしょうた)。長野県立大学1期生。同じ大学、同世代として共に励んできた従兄弟的な存在。キキが運営するシェアハウスの住人でもある。春になったらしたいことは、冬にパンクした自転車を直して走ること。
元県立長野図書館館長の平賀研也(ひらがけんや)さんは、立ち上げ時からキキを見守ってくれていた人。ミキやシキが書生として、伊那の住居に住み込みしていた時期もある。春になったらしたいことは、「生き残る」こと。
同じく立ち上げ時からキキを見守っていった、一般社団法人ローカルイノベーションイニシアチブ 共同代表であり長野県立大学 非常勤講師を務める瀧内貫さん(たきうちとおる)。春になったらしたいことは、長めの海外旅行。
この春からキキメンバーとなった県立大学3年生の矢野叶羽(やのかなう)。入学時からキキは身近な存在だった。春になったらしたいことは、セントラルスクエアでのピクニック。

キキ立ち上げの頃からキキを見守ってきた人もいれば、キキの二人と同じく長野県立大学で自分なりの活動を行う同期や後輩たち、当日や前日に「キキってなに?面白そう!」と飛び入りでやってきた人も。それぞれの立場から「キキの日」に参加します。

「最近のキキはどんな感じ?」自社事業から委託事業まで、キキが携わった事業を紹介

キキのイメージカラー・緑色の服に身を包んだシキ(画像左)とミキ(画像右)。

自己紹介が終わり、あらためて全員で「キキの日」をお祝いしました。二人で仲良くローソクを吹き消した後は、みんなにケーキを切り分けておすそ分け。

ここからは、今日のイベントのメインであるキキの最近の事業の振り返りと、今後の事業のあり方についての発表。九里と川向から、それぞれの担当する事業の紹介をしていきます。

①シェアハウス事業

「キキ」発足のきっかけでもあるシェアハウス事業は今年で四年目。はじめは手探りだった運営は、これまでの経験の蓄積により仕組み化が進んできました。今後は、二人の手を離れても誰もが対応できるようさらにフローを整理していきます。

また、もう少し先の未来では下北沢の大規模なシェアハウス「SHIMOKITA COLLEGE」のような場所を長野に作ることが目標です。

②インターンシップ事業

インターンシップ事業は、塩尻市のNPO法人MEGURUに協力し、長期の地域実践型インターンシップで4社、取材型短期インターンシップでは9社と学生たちをつなぎました。また、自社事業でも約4ヶ月間の長期インターンシップの実施に挑戦。

③「さとのば大学」との連携

2024年からは、キャンパスを持たず、地域をフィールドとして学ぶ市民大学・「さとのば大学」との連携を開始。春から4名のさとのば生が長野市にやってきます。今後、ラーニングジャーニーの主体はキキメンバーの矢野が担当。長野市で「暮らす・働く・学ぶ」仕組みを一緒に作っていきます

「さとのば大学」との連携は、学生時代から学校経営に関心があったシキにとって念願の事業。

④はたらく・アントレプレナーシップ支援事業

キキの周りには「なにかを始めたい人の一歩を応援する」カルチャーがあることから、起業に興味のある若者の相談を聞くことが多かったそう。今後は事業として整備し、よりゆっくりと話を聞き、適切な支援をする方法を模索中です。

みんな真剣に、時には笑いやリアクションも交えながら話を聞いています。

⑤はたらく・〜事業

「最近の若者はどうして病むの?」、「どうして最近は若い男の子も化粧をするの?」など、中小企業等の経営者から投げかけられる「今の若者が考えていることを知りたい」という相談と、長野の若者をつなげる事業を構想中。

⑥多世代の繋がり作り

多世代のつながりを作り、お互いを知る機会を深めるために、長野市子どもの体験・学び応援事業「みらいハッ!ケン」プロジェクトの地域コーディネーターとして参加。地域の子どもたちが、周りのかっこいい大人や、自分のまちとの接点を作るにはどうしたらいいかを考えています。

また、昨年に引き続きロータリークラブと大学生の交流会も実施。「採用面接では聞けないような若者の価値観が聞きたい」という要望から、哲学対話を取り入れたじっくりとした話し合いの場を設けました。今後も、「同じ街に暮らす先輩と後輩」という関係性で互いの話を聞き合う関係性を様々な形で作る方法を考えます。

創業から三年。やりたいことが変化していく中で生まれた「問い」に向き合う


最後に、それぞれがこの一年間を振り返り、そこから生まれた「問い」を会場に投げかけました。

九里 「学生のための事業が多かったところから、子供や上の世代、企業など、幅広い人たちとの接点が一気に増えた年でした。今後は南信に拠点を移そうと思っているので、種まきをできた1年間だったと思います」

九里からの問いは、「選択肢が増えるのは、いいことなのか。その責任はなにか?」。子どもたちに体験活動を、学生たちに出会いを、とさまざまな選択肢を提供する中で、「選択肢を増やすということは、それだけ迷いが増えることではないか?」と立ち止まりました。

九里 「これまで何も考えなくて良かったところに選択肢が増えると、どちらに向かって走ればいいか迷うことも増えるということ。『迷う』はいいけれど、『困る』人もいるんじゃないかとこの一年間すごく考えました。何かを提供することに伴う責任の重さを感じています

カワムカイ 「私はもともと人が学ぶことに興味があったのでてシェアハウス事業・インターンシップ事業を進めていく上で、長野のまちに短期〜長期で暮らしながら学ぶ土台ができつつあるのは大きな喜びです」

カワムカイからの問いは、「個性が生かされるために、組織としてHoldすべきことは何か?」。キキは、「会社組織を作る」ためではなく、「シェアハウス事業をやりたい」という二人の思いを形にする上で、法人化した方が動きやすかったために生まれた会

カワムカイ 「『それって個々でやればいいんじゃない?』ということと、『とはいえみんなで作った方が面白そうだよね』という二つの境目が掴みきれていなくて。個々を生かしながら、組織として動いていく上でで押さえておくべき点を考え直したいです」

「問い」を場に投げかけ、それぞれが考えていることを丁寧に言語化していく時間

ここで一度ブレイクタイムとして、ここまでの発表を聞いて気になったキーワードや自分の中で生まれた問いをそれぞれ書き出し、テーブルごとにわかれてシェアする時間を取ります。

「どうしてシェアハウス事業をはじめたの?」、「なぜ働く大人はスーツを着るんだろう?」など、素直な問いが場に投げかけられていきます。キキメンバーも輪に加わり、ざっくばらんに互いの疑問や問いを話し合いました。

ブレイク後、改めて小宮山から全体に「あなたが所属しているチームが、個々を活かす組織になるために、どうあったらいいのか?」という問いが投げかけられます。

キキは、ゆるやかにメンバー同士や関わる人たちがつながり、互いに影響し合いながら組織を形作っています。今後「キキ」がどういうあり方をすれば、自分たちや関わる人が心地よくいられるのかを再びテーブルごとに別れて話し合いました。

九里「最近、お互いのやりたいことがちょっと違うよね、という状況が増えてきて。でも、『キキはこういうことをやる会社だから、この人のやりたいことは違う』ではなくて、『キキの中でそれぞれがやりたいことができた方がキキっぽいよね』と私たちは考えています。でも、それって会社としてはどうなんだろう? 組織であり続ける必要はあるのかな?」

大きな問いに対し、参加者から「『キキ』としての人格はありますか?」、「シキとミキはそもそも仲がいいのですか?」、「3年も続いたのはどうして?」、「キキメンバーの共通点は?」、「そもそも心地よさってなに?」と小さな問いが投げかけられていきます。

盛り上がりを見せるそれぞれのテーブル。

その小さな問いを一つひとつ噛み砕いていくことで。キキメンバーたちの頭の中にある考えやイメージが言語化されていく時間となりました。

今考えていることは?やってみたいことはある?キキメンバーのこれから

いよいよイベントも折り返しに。ここまでは、「キキのこれまで」を振り返り、一度立ち止まってみる時間でしたが、後半では「キキメンバーのこれから」を改めて参加者に伝えます。

これまではコーディネーター的な立ち位置で地域に関わることが多かった九里は、「『〇〇屋さん』という立場になればもっと地域の中でできることが増えるのでは?」という思いから、現在は宅建の資格を勉強中。南信を拠点に、今後もより深く地域に関わっていきます。

カワムカイはこの春に大学院を卒業予定。次の大きなステップとしては、パートナーへのプロポーズを計画中。また、いろいろなところへ旅に出る一年にしたいと意気込みます。やってみたいことは、「女性経営者の生きづらさを支え、助け合う仕組みを作る」こと。

小宮山が今興味を持っているのは、自分の地元である山梨での暮らし。長野での活動は続けつつ、暮らしの拠点の一つは山梨に置き、コミュニティづくりを行っていきます。

接客に惚れ込み、「ここで働かせてください!」と直接お願いをして八幡屋でアルバイトをはじめた長谷川。

2023年9月までキキスタッフとして活動してきた長谷川は、キキの中の人から外の人へ。2024年の4月からは、これまでアルバイトやインターンシップで関わり続けてきた八幡屋礒五郎に就職します。

最後に、2024年2月から本格的にキキに関わるようになった矢野叶羽。よく弾む声で「キキにジョインしました!」と挨拶をし、これからメインで担当する「さとのば大学」のラーニングジャーニーへの意気込みを語ります。

「キキ、迷っています!」これからどんな森を作る? キキの未来を考える

それぞれの発表後、カワムカイと小宮山から改めて「キキチームとして考えていること」を発表。

これまでの3年間は、様々な人たちとの出会いを経て「ミキとシキ」の会社から「キキ」へと成長した時間でした。この先、九里は南信へと居住拠点を移し、川向も海外に拠点を持つことを視野に入れています。さらに、長谷川の就職、小宮山の引っ越し、矢野のジョインと、キキメンバーそれぞれに転機がありました。

川向 「長野市を起点にはじまったキキですが、東信・南信へと活動範囲を広げ、それぞれの拠点が移り変わる中でキキの範囲はどこまでなんだろう?と考えることが増えました。また、私も九里も学部を卒業し、今後ライフステージが変わっていくに連れて、キキを離れたり休んだりすることもあるかもしれません。私たちがキキを離れるとどうなるんだろう?キキは誰のためにあるの?という問いが生まれていて」

会社としての様々な変化や成長に伴い、キキは今年の春には代表・役員周りの交代を検討しています。そのため、キキは今「キキは誰のための会社なのか?」、「今後どのように中の人・外の人と関わって行くのか?」という問いに向き合う段階に来ているのです。

「キキ、迷っています!」

小宮山 「キキは、みんなと木を植えて森にしていきたいと思っています。でも、どういう森にしたいかがまだわかっていない。みんなの目線で、キキをどんな森にしたいのか、そのためにためになにが必要なのか?どんな木を増やして、どんな土壌にしていくのかを今日は一緒に考えたいです」

最後は全体を交えたフリートーク。キキチームから問いかけられた大きな問いを元に、「キキはどんな森になっていくのかな?」、「自分にとってキキとは?」、「今後キキとどうやって関わっていきたいか」をそれぞれ自由に語り合います。

長野駅前に自分のお店を持っている小倉さんは、これまで、「駅前をどうしたいか?」に向き合ってお店づくりをしてきましたが、今後はより人々の「暮らし」に寄り添うために住宅街へお店を移します。

小倉さん 「どこに森を作るかによって、集まる生き物の層も変わってくるはず。組織というのは『誰がいるか』に加えて『どこに拠点があるか』も大きいんじゃないかなと僕は思います」

立ち上げ当初からキキを見守ってきた瀧内さんからは、「ミキとシキ二人の手元に落ちていないことは、キキとしてもはっきり言葉にできていない気がするね」と指摘が。

瀧内さん 「キキが会社として成長していくプロセスは、『家業』が『企業』に変わっていくことと一緒なんじゃないかな。これからキキが二人の手を離れても会社として続いていくように、ミキでもシキでもない『キキさん』という人格を作っていけたらいいのかもね

ふるさとワーキングホリデーで長野市に滞在中の大学四年生・あさひさんは、自身のまちづくりの研究から、論文の一例を紹介。

あさひさん 「異質なもの同士が、ひとつの場にそれぞれの資源を持ち寄ると、まったく新しいものが生まれるという研究があって。そのためには、強い骨組みと、その骨組みから外れないものは許す、という受容が必要らしいんです。全てを一緒にやらなくても、なにかを共有できる環境があれば組織としては一緒にいられるんじゃないかな

約15分間のフリーセッションは、キキメンバーと参加者全員が前のめりに参加し、あっという間に終了時間に。「まだまだ話し足りない!」という空気を残しながらも、キキメンバーから参加者へのお礼の言葉でイベントも終わりを迎えました。

九里 「ずっと2人でもやもや迷っていたので、悩んでいることや考えていることを改めて皆さんの前でお話できてすっきりしました。これからも、皆さ
んにバシバシ入っていただきながら、キキとしてもいい形に進んでいけたら」

川向
「いろんな人に相談して、みなさんの頭を貸していただくだけですごく嬉しいです。『もやもやしている』と言いながらも、わけもわからずこうして話す時間をキキは大事にしていきたいんだと思います。3周年を皆さんと共に迎えることできて良かったです。今日はありがとうございました!」

最後に全員で記念撮影!

「ミキとシキ」の二人で始まった「キキ」。

組織として関わる人が増え、大きくなっていくにつれて、悩むことやモヤモヤも自然と増えていきます。ですが、それと同時に、キキと一緒に立ち止まって「キキの現在地はどこだろう?」、「これからのキキをどうしていきたい?」と考えてくれる仲間も増えました。

これからキキがどんな森に育っていくのか。時には自分自身が木になったり、ちょっと木陰で休んでみたり、遠くから眺めてみたり。それぞれの心地よい関わり方で、キキと共にある仲間たち。

三周年目の「キキの日」は、「キキの森」がこれからどんなふうに育っていくのか、モヤモヤの中にあるワクワクを見つけていく一日でした。集まった人々からの小さな「問い」や「気づき」はきっと、これからの「キキの森」で新しく芽吹く種になるはずです。四年目のキキも、どうぞよろしくお願いします!

執筆・構成:風音
撮影:丸田平



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