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#16 本気で社会を変えるにはービジネスと戦う

こうした社会課題の解決の話をすると、個々の自発的な善意に依存するのではなく、ビジネス的に解決すべきだという反論が出てきます。

確かにビジネスが回るように制度設計できれば、その効果は強力です。その仕組みを取り入れることで、より大きな利益を生み出すことができると分かれば、たちまち争うように取り組まれます。獲得した利益の一部を投資に回し、売上を伸ばせます。規模が大きくなればなるほど、効率的に事業運営ができるようになり、利幅は増えます。最初こそうまく仕組みを回すのが大変でも、回すうちにゆっくりと加速してゆき、最後にはとても速い速度で回すことができます。これがビジネスの強みです。

ただしビジネスにも弱点があり、利益が上げられるような、極めて狭い領域しかできません。そして、その行動は利益が上がるから取り組まれているのであって、利益が出なくなった途端に勢い(やる気)を失ったり、当初の目的から真逆に逸れていくことすらあります。また、利益は出ない代わりに社会貢献が極めて大きな方法があったしても、確実に利益を出せるシステムを持っている方が豊富な資金力を武器に、他の取り組みを市場から排除しようとします。

ビジネスは絶対ではありません。利益を上げるのが至上命令になりがちで、その行為の社会的な善悪がほとんど問われることがない怖さがあります。不幸なことに、本来ビジネス的であるべきでない政治の世界は、最もビジネス的になっています(金権政治)。政治家は常に票を意識させられており、支持者への経済的な見返りを絶えず用意することが求められます。地元のことを棚に置いて、国全体のことを考える自由を実質持ちません。47都道府県の議員が、それぞれの地元のことを一番に考えてしまった結果、継ぎはぎだらけの政策が出来上がり、国民がバラバラになってしまったのがこの国です。

ビジネスに対抗するのは至難の業です。同じ穴の狢(むじな)のように、金銭的な見返りを用意するわけにはいきません。金銭的な軸で物事を判断する癖がついてしまった方に、正しく思いを伝えることは相当骨が折れるでしょう。ただ、それでもやめるわけにはいかないと思っています。叶えたい夢、守りたい存在があるからです。

私には子供の頃からの夢がありました。人が、他の生物の存在を脅かすことなく共存できる社会、次の世代のことを自分事のように思いやれる社会です。当たり前のことが、当たり前と認めらる社会です。達成がどれほど困難でも、そういう社会に近づけたのだと、全力で頑張ったのだと、そうやって誇れる生き方を選びたいのです。

この夢を実現するために、何度壁を叩けば良いかも分かりません。一つ山を越えた先に何が待っているかも分かりません。現状目立った成果もあげられず、仲間も作れず、葛藤ばかりの連続です。ひどく落ち込むことがあっても、そのたびに勇気をかき集めながら、過去を背負って前を向こうと思うのです。

現実を知れば知るほど、残酷な事実に気づかされ、苦しむこともあるでしょう。けれど、知らなかった方がマシなんてことはありません。知ることで初めて選択肢は生まれます。困難をあらかじめ予期し、避けることができます。それはかけがえのない前進に他なりません。

変えられないと思っていたものが、いつか変えられると信じて。

2021.8.20


【参考資料】

嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え – 2013/12/13
幸せになる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教えII – 2016/2/26


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