見出し画像

ピスメの土沖の話を聞いてほしい


※このnoteはいわゆる「BL・女性向け」の内容、および作品本編のネタバレを含みます。最初から最後まで土沖です。苦手な方は恐れ入りますが閲覧をお控えください。

幕末期の軍事組織・新撰組を題材としたフィクション作品『新撰組異聞PEACE MAKER』と『PEACE MAKER鐵』の土方×沖田の話がしたいオタクです。

(懲りずに布教その2を書きました。よろしければ⇨https://note.com/kiki_ipatu/n/nac983893e9f9 )

2020年3月に公式で異聞シリーズ全巻の期間限定無料配信キャンペーン(※現在は終了)をやっていて、元々の読者だったこともあり「昔読んでたな〜^^ 」と軽い気持ちで読み返し、さらに追えていなかった続きを読んだら本編が佳境に入っていて更なる地獄の様相を呈していた上に推しキャラの土方歳三と沖田総司を取りまく展開がメチャメチャ大変なことになっていてもう感情があふれにあふれ、オタクだから人に言いたくなり思いの丈を1万字だらだら書きました。10分だけお時間ください。


1.連載中ってことだけでも知って頂きたい

↑の公式ページ(?)で異聞の1話をお試し読みできます。1999年より連載中、主人公は土方歳三の小姓・市村鉄之助くんです。

そうです、ピスメ、まだ連載中です!!!!!! X(Twitter)でエゴサすると「完結したの?」と話題にされているのを見かけますが連載中です…!
(※2020年5月〜休載中です   ※追記 2022年7月から連載再開!隔月で掲載!ありがとうございます! ※再追記 2023年2月〜休載されています)

滅びに向かって進む薄暗い本編(史実)に耐えきれず読めなくなった方、推しが退場して読むのをやめた方、油小路の変のメッチャ途中で長期休載中してる間に二次同人やってた作者に萎えた(禁句)という方、オタクの数だけ事情があるかと存じますけどもまだ連載続いていますし我々も覚悟キメて、思いきって読みませんか? 完結してませんけど、むしろ連載中に読みませんか読みましょう追いかけましょう、完結してから読もうかな…となってる方も…ぜひとも連載中に追いかけましょう…連載中にしか味わえない読書体験を……

ピスメ未履修な方は『新撰組異聞PEACE MAKER』からぜひ!隊士達のキャラ造形はフィクション新撰組モノとしてもいわゆるステレオタイプだし入りやすいんじゃないかなという印象です。一般誌の作品だけど隠す気もなく超絶ブロマンス作風なのでそういうのさえ大丈夫なら「オタク」にささりやすいと思います。お試し読みでピンときた方はぜひ… 読んでて心臓雑巾絞りされるけど……まあ……

再三ですが作中の土方と沖田の関係をBLとしか捉えられない土沖過激派オタクが書いた文章のため、以下も土沖のことしか言及してませんのでご承知置きください…逆カプの方もすみませんが不快に思われるかと…すみません…。土沖に関心が薄いと以下の散文に目を通して頂いてもたのしくないと思うので、念のため…。ピスメには魅力的なキャラが目白押しですが、ここで触れるには力及ばずです…。

読者のSAN値をゴリゴリ削り続けるピスメですが「土方歳三と沖田総司」がすごい。本当にすごい。古き良き新撰組モノ、古き良き時代の土沖イズムを受け継ぎかつ新境地を拓いた土沖の形が、ピスメにはある…。

____________


ピスメ土沖の「ここがすごい!!」ポイントとして、

司馬史観(※)の土方歳三と沖田総司をベースに
① "貴方が私に居場所を与えてくれた"系王道主従関係
②共依存関係
をプラスして描いた

ここらへん、画期的では…?と個人的には思います(あくまで個人の所感です)

※司馬史観ベースの土沖とは:誰もが恐れる切れ者のカリスマイケメン戦術家・鬼の副長こと土方歳三と、天真爛漫殺戮天使なみんなの弟ポジション・夭折の天才美剣士こと沖田総司が互いに心を許す一番の理解者、という胸キュン構図を指します。司馬大先生が生みだした新撰組土沖創作文化の極みです。


そもそもピスメ土沖、『異聞』の時点でヤバいほど””匂わせ””しまくりなんですよね


これ、衝撃じゃなかったですか?


沖田「匂わせ」が過ぎる総司


キャピキャピしながら割とぶっこむ沖田氏、割と尻に敷かれてる土方氏


核心に触れられると「総司ッ」しか言えなくなる土方氏


懐かしの本編から土沖シーンを拝借いたしました…とりあえず2人とも顔がいい。そして何か本当すごいですね何を見せられているんだカップル系YouTuberなのか? これらはほんの一部でその筋のオタクをロックオンした巨大な釣り針が何本もぶら下げられており数多のフジョシが喜び勇んで釣られてるいたことと思います。しかし幸か不幸か長らくの休載を挟み、釣り針もとい散りばめた伏線をどう回収するのかと危ぶまれてもいましたが、およそ15年越しに「土方と沖田」のストーリーがひとつの帰結を迎えていました。よかった〜〜!?!!

「えっそうなの?!」って思った方、ぜひ、今すぐ読みましょう!!読んだ方がいいです!!絶対に!損はしませんから!!!読みましょう!!!読んで………


という懇願がひとりでも多くのオタクに届いてほしいという希望を込めつつ以下、既刊16巻(※当記事執筆時点)までの土方と沖田に関するネタバレをめっちゃ含む っていうかバリバリ核心に触れまくっているのでご注意ください(もしアレでしたら、原作読後にこの記事を読んで頂きたく………)



2.ピスメ土沖を思い出して頂きたい

改めて盛大なネタバレを含む推しカプ紹介、させて頂きます。

ピスメ沖田総司:にこにこ♡きゃぴきゃぴ♡キュートキャラの仮面をかぶった土方命のヤンデレ依存気質の男の美女。作者が「つい女性として描いてしまいがち」とか言ってた。内股でおねえさん座りでオフの日は和菓子買うために開店前から2時間並ぶ。隊内戦闘力ランク最強で刀持ったらバーサーカー。作品を代表するビジュアル担当なのにそこまでリアルにやらんでもなレベルで結核症状を描かれ遂には骨と皮状態の死相ヌードを扉絵で披露し全国の沖田担が流した涙で地球の海面が上昇した。

ピスメ土方歳三:作者の寵愛を一心に受けまくっている二枚目・イケメン・美丈夫・男前。中身も外見も声帯も渋み系江戸っ子色男…かと思いきやある展開をきっかけにびっくりするようなキャラ変を遂げ読者を色んな意味でびっくりさせる(鐵11巻以降を読めば分かります…)。異聞の頃は「肩幅めっちゃ広くない?胸筋すごくない?」って印象がやたら強くてぶっちゃけスカしてただけで特に何かしたわけではなかったけど鐵10巻以降ほぼほぼ主役級の大活躍。結核に対してトラウマ持ち(重要事項)。若かりし頃はかなりの遊び人で沖田少年との初対面時に女の子と勘違いし「あのツラはあと5年も経てば極上の女に育つ」とか言ってツバつけようとした。ドン引き。


そんな2人の関係性を図にまとめてみました


画像1


””クソデカ感情””、響きがばっちいので出来る限り使いたくない言葉なのに使ってしまった。だってクソデカイ感情ぶつけ合っているから……。とにかく巨大な感情矢印を出し合うふたりなのです。コレはマジな現実です。

____________

無駄にもったいぶりましたが、ド直球のネタバレをすると「土方が沖田に生きていく上での存在意義を与え、沖田は土方の病を身代わりに受けた」のがPM版土沖です。
"身代わり"という新解釈(?)をまじえた土方沖田の関係性です。土方のことが大好きで純粋で他人に依存気質なピスメ沖田だからこそ為せる献身なのです。””良””・・・・・・。


3.ピスメ土沖は"すごい"土沖である


順を追っていきます(※しつこいようですが本編ネタバレ注意)


鐵5巻収録の「日野篇」という番外編があります。土沖と近藤さんを中心とした過去編です。

『他の誰より強くなったら俺がお前を必要としてやる』、沖田氏にとっての"救い"であり"呪い"の言葉・・・


己の尋常ならざる剣の才能が災いして実親を失い、幼すぎて家督を継げなかった自責の念に苛まれ深い孤独を抱える沖田惣次郎少年と、若かりし土方さん近藤さんとの出会いが描かれているんですけれど(詳細略)、若土方さんは自分が生まれてきたことを悔やむ、心優しく泣き虫な沖田少年に対して

「剣の腕を磨け、俺達の前で二度と泣くな」

「いつか誰よりも強くなったら、俺がお前を必要としてやる」

と道標を示すことで惣次郎くんに精神的な居場所を与えました。

ピュアな沖田さん、土方さんの言いつけを守り、人前で泣くどころか普段は愛嬌たっぷりにこやかに振る舞い、持ち前の天賦の才能に磨きをかけて剣の道を極め、土方さんの言葉通り誰よりも強くなります。そうすると人に褒められたり認められたり、沖田少年にとっての幸せがたくさんがおとずれるようになったのでまるでヒナの擦り込みのように土方さん𝕃𝕆𝕍𝔼♡になります(※2人の距離が縮まっていく過程は描かれていませんが「大嫌い」から「大好き」の感情の変化は紛れもない事実なんですよ(大声))。

そして上洛前に原因不明の病に倒れ生死を彷徨う土方(※史実準拠でしょうか…)のエピソードが鐵9巻にあるんですけれども、武士になる夢を叶えぬまま死んでたまるか、誰を身代わりにして犠牲にしてでも俺は生きたい、と土方は呻きます。沖田はそんな土方の掌を抱え「神様、私が身代わりになります この人を救って武士にしてあげてください」と祈るのです。

沖田にとって土方を失うことイコール己の生きる意味を失うこと、なので迷いなく自分の命を差し出したんじゃないかとわたしは解釈いたしました。この一連のシーンの美しさ・・・健気さ・・・


池田屋事変後、体調の優れない沖田はかの松本医師から結核と診断されます(鐵3巻)…… しかし自ら土方の病を身代わりすると覚悟したからこそ、喀血する姿を土方に晒すまいとギリギリまで隠しておりました。ピスメ土方さんは母と姉を結核で亡くしたことに対して深い深いトラウマがある(という設定)なので尚更に隠しておきたかったんですね (「結核は土方にとって大切な人達を奪う恐ろしい病気と描写しています」と作者談)。血を吐くぐらい病状が悪化してツライのに、どこまでも土方を思い遣る沖田氏…。喀血する沖田の姿を目撃してしまいあわやショック死寸前の態で取り乱す土方は鐵6巻にあります。

あ、アア、ア…



土方は人知れず「なぜ総司なんだ…」と愕然とします。総司が死病に侵されてしまったのはもしやあの時自分の身代わりを祈ってくれた所為か?という思いがずーーーっとあったのか、池田屋で沖田を見た際の異常なまでの取り乱し振り(異聞5巻)や、沖田が咳き込むたび過保護なまでに心配する描写が随所に見受けられます。いや、身代わり云々のエピソードが無くても土方さんが総司をかけがえのない存在として大切にしていたことは紛れもない事実なのですが…。

土方は近藤、沖田と共に武士になることを夢見て立身出世を叶えようとする野心に溢れた人物として描かれています。""身代わり""を願うという行為なんて単なる迷信、と疑ってはいるものの、己の夢を叶える代償に大切な総司を失うことにつながる…という何とも皮肉な現実となってしまいました。ややオカルトチックなエピソードですが土沖ポイントとして重要です。土沖検定の設問に確実に出ます。

____________

そもそもピスメの沖田は""モノ意識""が非常に強いタイプと言えるでしょう。死病に蝕まれ、弱って戦えなくなった自分は土方たちに必要とされなくなる、切り捨てられる、と信じ込んでいます。前述の通り、沖田は自分の剣才が原因で実親を失い9才までは世間から隠すように育てられたため、自己肯定感がものすごく低い、低いどころか地中深くに埋まっているのです(「愚かで汚れて呪われている」という沖田のモノローグがあります)。誰よりも強くなくちゃ必要として貰えない、と幼い頃に自分を救った土方の言葉に成長してからも雁字搦めになってるんですね(作中では山南敬助が沖田を指して「(土方の)教育の賜物」と指摘している)。
自分の居場所がなくなること、見捨てられることに怯えているため、病で身体を動かせなくなっても「もう戦えない」なんて自分から言い出せない子になってしまいました。それどころか戦場に赴いて戦わなくてはと思い込んでいるわけです。周囲はメチャクチャ労ってるんですけども……涙

大好きな土方さんと近藤さんに褒められて必要とされること、ただそれだけに生まれた意味を見出し幸せを感じる沖田さん…自罰的で盲信的で、もし身近にいたらぶっちゃけ面倒くさいかもしれない……その脆さも含めてピスメ沖田氏の魅力なのですが。


そんな総司を、ある意味では自分の”夢”のために利用していた(とはいえ歪んだ関係を互いに自覚していた)後ろめたさのある土方は土方で「大人しく養生しろ」とは言い出せなかったわけです。戦力にならなくたってお前が大事だ、などと言えば、じゃあ総司に"誰よりも強くあること"を求めて散々人殺しや暗殺とか汚れ仕事させる必要なんかなかったじゃん?!って話になるし、これまでの沖田の生き方そのものを否定することにもなりえる。

けれども、総司に1日でも長く生きていて欲しい、という想いの板挟みで土方は苦悩します。「沖田総司」という存在は土方の人生における後悔の形のひとつなんですよね。それもそのはずピスメ版土方歳三のテーマ(設定?)のひとつが『後悔』らしいのです(作者談)。土方の後悔人生を見守ることがピスメの裏テーマなのかも。


寄り添い支え合って常に相手を気に掛けながら2人だけの世界を築いているのに、実は根底で踏み込みきれず、想いがすれ違っていたわけです。はちゃめちゃに大きな感情を向け合いながらも、互いに互いを失うことを怖れて本心を伝えられていなかったわけです。繊細な男達、センシティブメンズですね(センシティブな件については後述)。

そして肝心要、鐵9巻・10巻収録の内容です。新撰組大学ピスメ学部土沖専攻の入試で1000%出題される必須単元です。


時間軸は進み鳥羽・伏見の戦の後、沖田氏の病状は末期なのですが(泣)それでも新選組の力にならなければ意味がない、とひとり思い詰めています。察した近藤と土方は、徒歩で自力で行軍についてくることが出来ればこれからの戦に参加して良い、と難題を申し付けます。そんなの無理ゲー、沖田本人も隊士達も皆無理だと分かってるんだけど、これまで沖田を支えてきたものが何か、皆分かってるから止めることができない。作中ではこの行軍は""沖田総司という剣士を諦める儀式""と表現されています。涙涙涙

その道中で、やはり沖田は心身共に限界を迎えます。歩けなくなり立てなくなり先に進む仲間達の姿が見えなくなり、泣くなと言われたかつての教えを遂に守れなくなり涙と鼻水と吐血で御尊顔をぐちゃぐちゃにしながら「まって 置いてかないで」と、やっとのことで"本心"を吐露するわけです(ここ、まじでまじでまじでまじで本当に本編を読んでくれ…)。
そんな沖田の前に現れた土方、ここまで酷いことをされないと本音も言えないのか?!と怒鳴ります。総司をこうさせてしまったのは自分だ、という後悔と痛ましさが入り混じった怒りでしょうか…。

だってあなた達がそう命じたから、と沖田はこれまで口にできなかった想いを遂に吐き出してしまいます。「誰を殺せばいいですか?何人殺せば喜んでくれますか…? どうすればずっと……! 必要としてくれますか…!?」

沖田さん、美しい佇まいの下にこんなドロドロしたエゴを抱えているのです。殺人需要でいいから私をずっと必要として!ずっと私を大切にして!私でなければだめだと言って! いかがですかこの依存っぷりと歪み具合。


(この後の展開を文字起こしするのは野暮以外のなにものでもないのですが………)

そうするとですね、土方さん、ボロボロの総司を抱き締めて

「息をしているだけでいい、それだけでいい」

「俺をおいていくな」

と応えるんですよ。

お前は誰よりも強くある必要なんてない、役になんか立たなくていい、ただ息をしていてくれ、俺をおいて逝くな、と泣きながら(泣きながら!!!)伝えるんですよ。

"絶対に涙を見せず、誰よりも強い存在"という仮面を沖田に被せたのは土方だから、その仮面を外してやれるのも土方だけなんですよね…

けれどもですよ、過去に差しのべた呪いにも似た呪縛をようやく解いてやるかと思いきや、なお求めて手放そうとしない。例え剣を振るえなくなろうとも沖田総司という存在を失うことを土方さんは決して受け入れられないんですね。

この関係性を共依存と言わず何と呼ぶ???

土方の抱擁とその言葉を受けた沖田さん、生きて待ちます、生きていて土方さん、と約束しながら心のうちで「もう 死んでもいいほど」満たされるんですね。


……………

……………………

えっ…………いや、


やばくない……………………?(語彙力)



土方の夢を達成するためのコマでしかないと考えていた自分は、ただ存在しているだけで土方の救いになるのだと、沖田さんはようやく""理解""して満たされるんですよ。沖田総司の人生の主役は間違いなく土方歳三です。だって「ひどい!今さら過ぎる!そういうことはもっと早よ言えよオッサン!」とかちょっとぐらい怒っても罰当たらないぐらい身を粉にして働いてきたのですよ… 
それを、ようやくひとかけら、自分は土方に想われている、というかけらを掴んだら、もう死んでもいい、と満たされるのがピスメの沖田さんです。健気というか一途というか、ある意味での究極の純粋さに心抉られます。ピュアだけど病んでる沖田総司ランキング(なにそれ)で優勝候補と思うのですが…。

この一連の描写、ピスメ土沖におけるこれ以上ない帰結なのでまじでまじでまじでまじでまじで原作を読んでほしい…マジデ….…


こうして長年のすれ違いの末にやっと互いに本音を伝えられたけど、これ別離の場面なんですよね。今生の別れ。しかも沖田さんの「生きて待つ」も「生きていて」という約束は、我々後世の人間が知っての通り(爆泣)どちらも叶わないわけです。

それでも2人は確かに””想い””を伝え合いました。


「愛」と書いてピスメ土沖と読む(font size 100兆)



美しくて切なくて儚くて眩しくて、もう萌えっていうよりも史実に対する哀しみだとかやるせない感情がどうしても勝っちゃうんですがそれは新撰組フィクションモノの定め… 未読の方はぜひ誌面でよろしくお願いします!!!!
上述の土沖劇場は鐵9巻10巻だけど、やはりここに至るまでのカタルシスが醍醐味なので何卒、異聞から通しで読んでください…。

そして16巻です。表紙やら帯やらで内容ネタバレしまくってますけど、とうとう…………………な本編

(読むのがこわい無理という意見ネットでめっちゃ見かけます。同じくリアルタイムで本誌の展開を耳にしたけど勇気出なくて読めなくて結局1年半越しで読むことができました・・・いや本当に読んでよかったです   悲しみだけじゃなくてあたたかく希望に溢れた節目だなと思います。"ピスメの沖田総司"の魅力がこれ以上なく詰まっているので差し出がましいですが是非とも読んでください…涙)


沖田に関する一報を受けた土方さん、なんと◯◯を決意します。中原中也の春日狂想か???新選組崩壊後ここまで精神的に弱るフィクション界の土方、初では・・・黒乃先生の性癖を伺い知れますネ。

この展開で最も重要な位置を占める、病床の沖田が土方に宛てた手紙、沖田さんが書いたこの手紙に私はノーベル文学賞を授与することを決めました(事後報告)

有り余る”力”を生まれ持ったせいで孤独を抱えた沖田の心を救った土方、その土方に贈る沖田の最期の言葉は、あまりにも尊いのです。


「願わくばどうか いつの日にか 出会えますように」

「"あなただけの苦しみ"が導いてくれる、"あなただけの最高の景色"に。」


…………

肉体は失われても『最も遠く最も近い場所からあなたを見守っています』と寄り添う心。文字通り""永遠の愛""ではないでしょうか。満場一致でノーベル文学賞です。平和賞も同時受賞。誠におめでとうございます。「愛」です…。

生き残った仲間たちの言葉、遺された言葉、それらが繋がって失意の土方を立ち上がらせる作中屈指の名場面、もうここで最終回でもいいんじゃ…と一部界隈で言われるほど殊更に力の入った巻だと思います。何度言うねんって感じですがぜひ通して読んでください…

内容はさることながら、浅葱色に彩られた沖田さんの切なくも美しい表紙が心に染み入ります。新選組の象徴と言える「浅葱色」を沖田総司に与えてくれて本当にありがとうございます…(謎目線)


16巻の公式アオリ文が『激動の時代に咲いた大輪の花。愛と哀しみの果てに、今。』なのですが、これは沖田さんがたくさんの花(=大切な人たちの夢や希望)を開かせたこと、と、沖田さん自身が花のように美しい存在であること(=16巻後書き)、のダブルミーニングと解釈していますがどうでしょう…?? 愛と哀しみ、まさしくその通りだった沖田総司の短く儚く幸せに溢れた生涯。アオリにすら泣かされる──────。

北上篇(※鐵7巻以降)から「白百合の花」が作中に描かれていてキーアイテムになっているんですね。沖田と、土方・近藤との関係性の暗喩。16巻読んだ後はね〜もう実世界でもユリが視界に入るだけで涙ぐむ体質になるので(キマってるやつ)。
余談ですが、沖田さんがお花を育てるシーンは例の"予告篇"(2002年初出)に描かれているわけで、沖田に花を絡ませた展開は概ね構想通りに進んだっぽいので、そこまで連載が続いて本当によかったな〜!と感慨深いです。(※"予告篇"は作品全般に関する様々な衝撃があると思いますので存知ない方はどうぞググられてみてください…)

ピスメ土沖、デキてるだとかデキてないだとかカップリング要素を抜きにしてみても、なんて崇高な関係なんだ… としみじみ思います。デキてるかデキてないかで言えば確実にデキてますけど…。

____________

今回書ききれなかったけど沖田さんと近藤さんの関係の描かれ方もとてもよきです。かわいい弟のお前からなら何だって(=死病だって)貰ってやる、ってすごい。本当に。

他にも土沖ポイント書き出すとキリが無いのですが、
例えば「燃えよ剣」そのまんまなくだりすぎて微笑ましいけど、ピスメにおいても土方が主人公の市村鉄之助くんを採用した理由が「総司に似てるから」なんですよね。それで鉄くんに刀を持たせないよう自分の小姓につけるんですね。総司に似ている少年に、人殺しの道を進ませないよう計らう。けど沖田はそんな土方の心情をお見通しだと言う。いや、""重い""って……………………。

土沖ファーストコンタクト時のエピソードも素晴らしいですよね。見た目美少女な受けを女子と間違える攻め、満点を超えた満点です。

沖田さんが可愛がってる仔豚の名前が土方さん由来でいつも傍にいるように言いつけてたり(※『斬』の沖田さん表紙の方に掲載の「鬼も歩けば豚にあたる」読んでください!!)とかそこら辺の設定も重要ポイントだし(※サイゾー、沖田さんを看取ってくれたんですよ……そばにいてくれてありがとう……言わば土方さんの代わりだったのかな……)、
近藤さんに総司を離れた場所で療養させようと持ちかけられて「隔離する必要なんざ…」とか焦りまくる土方さん、萌えしかないですね。いや、萌えっていうか切ないんだけど、素直に萌えざるをえない。

____________
蛇足 現時点でアニメ化されてるのは鐵9巻41話までです。先述の土沖別離回をアニメでみれる日は来るのか(…)2018年の劇場版前篇の「土方さん、見ないで…っ」は大変素晴らしいものでした…数秒だったけど…
____________


核心部分、まじで書き起こししまくってしまったけど極めて主観的な感想なのでご容赦ください…
あと、これから本編読んで「このひとが言ってること全然違うやん!解釈違い!」ってなったらごめんです(本当に申し訳ない、といいつつ完全に個人の感想を書いてしまうのですが解釈違いと言えば11巻以降、宇都宮戦辺りの土方の描かれ方について最大級の解釈違いでして、、物語を進めるに当たって必要な描写だと割り切るしかないな、キャラへの思い入れをふっきるしかないかな、と思っています…。作品を、散々持ち上げておいて突然disるなよって感じだけど、あのキャラ変はなかなかショッキングで…メンタル崩すにしてももうちょっとこう……作者の萌えは読者に気付かれないぐらいの範疇でブレーキ掛けて欲しかったな……なんて…いや、すみません…ひとりごとです…)

隙自語で恐縮ですが、司馬作品の土沖からオタクになったオタクなので…やはりオーソドックススタイル(?)の、にこにこ物腰柔らかピュアでほがらか最強美剣士・沖田総司というデザインに秒殺されます。そして喧嘩好きで頭が良くて繊細で豪胆で男前な司馬ベース土方歳三との組み合わせ、まじで最&高な相性ってことは古来からの言い伝えじゃないですか。カップリングとかそういうの抜きにしても素晴らしいコンビだと思います、いやまあカップリングなんですけど…。燃えよ剣と血風録、フィクション新選組モノの原点にして頂点じゃないですか。連載開始前に司馬先生の作品を参考にされたことは黒乃先生が公言されています。司馬のハーブ、強すぎる。司馬史観ベースの創作土沖、700年後も伝承されていて欲しい、あの菊一文字のように……….

4.やっぱりピスメは”いい”と叫ばせて頂きたい

途中でピスメ読むのやめたオタク、まだ読んだことないオタク、たくさんいると思うのでぜひ読んでください。
エンタメ飽和の令和にピスメとか新選組モノ読むのって結構マゾ的というか、巻数を重ねる毎に本編重苦しくなってメインキャラを看取るお仕事になるので辛くないはずがない、まさに苦行…ですが決して辛いだけじゃない、たくさんの感情を得られるはず…なので……大丈夫と思います!(??)

全人類元気出してピスメ読もう!!!!!!!

キャラデザも関係性も抜群に”美しい”土方と沖田を堪能できることと思います。ぜひ!


出典:黒乃奈々絵『新撰組異聞PEACE MAKER』、『PEACE MAKER 鐵』(マッグガーデン)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?