他人の吐いたゴミを食べる必要はない


前職の社労士事務所で20年以上務めていたベテランの上司から私はかなり嫌われていた。

その上司は基本自分に対して話しかけてくることはないし、あえて私の名前を口に出すこともなかった。つまり完全に避けられていたのだ。周りから見ればちょっとしたパワハラだったのかもしれない。

そのおかげでその職場での居心地は良いものではなかったし、完全に年功序列の職場だったので他の社員もその上司に対して直接苦言を呈すことはなかった。

もちろん早々に転職することもできたが、ここで逃げるのはかっこ悪いと思った。

だから結局自分でなんとかするしかなかった。

職場の陰鬱な雰囲気やその上司の性格が変わってくれたらいいのに、と思うことは多々あったが、自分一人の力で変えられるものはたかが知れている。だとしたら、変えるべきは自分自身の心や物の見方だ。


まずその職場で自分がなすべきことが何かを真剣に考えた。

それは自分の任された仕事に一所懸命取組み、取引先から信頼されるようになること、それ以外のことは考えないようにした。自分の給料は取引先からいただく報酬や手数料でまかなわれており その上司からいただいているわけではないのだ。(加えてその上司はいつも取引先の担当者の悪口を言っていて、側からみていて器が小さくて正直ダサいな…と思っていた。)

当時私は約80社の中小企業を担当しており、労務管理・給与計算・雇用保険や社会保険の諸手続きをしていた。自分でいうのもなんだけど、取引先の人との関係は良好で、頻繁に電話がかかってきて仕事を依頼されることが多かった。

・メールや電話のレスポンスは出来るだけ早くする。

・手数料をいただけない仕事でも快く引き受けるようにする。

・時間があれば直接会社に足を運び、出来るだけ顔を見せるようにする。

以上の3点を守りさえすれば、こちら側の誠実な仕事に対する姿勢は伝わり信頼を得ることができるし、また新しい仕事をいただくことができる。

取引先からの信頼を得ることで、所長から評価してもらえるようになった。

その上司からみれば私が仕事で活躍したり、所長から評価されていることは面白くないことだったと思うが、そんなことはこちらの知ったことではない。


次になぜ自分が嫌われているのかを考えた。

もし自分に問題があればそれを直せば良いだけだし、もし自分に問題がなければ相手側の問題だからこちらとして出来ることは何もない。

その上司のことをいろんな面から徹底的に観察していろいろ考えた結果、相手の心に問題があるのだという結論に至った。

その上司は所長との関係がうまく行っておらず、「自分は20年以上勤めて事務所に貢献しているのに所長から一向に評価されていない」と思っているようだった。

なら他へいけば良いじゃないですか?と言いたいところだが、その上司は今の立場や経験を捨てて他に移る勇気もないようだし、行動力も全然なかった。

考えれば考えるほど、その上司が哀れでかわいそうに思えてきた。

そして私もその上司も同じ被害者なのだと思えば、いろんなことが大して気にならなくなってきた。たとえ向こうが意図的に避けてきても、こちらは気にしていませんよという態度で接すれば良いだけのことだ、ということに気づけた。

わざわざ人に意地悪するのは、決まってこころが満たされていない人たちばかりなのだ。


結局今後同じような状況に遭遇した時のために対処できるようになれたと思うまで2年半勤めて、自分の納得したタイミングで転職した。

基本的に人は自分の立場からしかモノを考えないが、相手の立場・状況を想像することで意外と解決の糸口が見つかるものだということがわかった。

どこの職場にもそれぞれに人間関係というのはあるし、それは決して自分にとって都合の良いものばかりではない。


この経験がまた自分をほんの少しだけ成長させてくれたし、なんといっても転職した先の今の職場のスタッフは尊敬に値する人たちばかりで、人に恵まれるとはまさにこのことだと実感している。



総じて不遇な環境というのは見方によっては、自分を大きくしてくれるチャンスなのだ。



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