spell/キングサリ
キングサリの楽曲の中で「生きる」を最も象徴する曲といえば、私にとっては「spell」です。この曲は一見目立たないかもしれませんが、メロディや歌詞に耳を傾けると、彼らの曲の中で最も深刻な作品であることがわかります。作詞と作曲は空想委員会の三浦隆一と岡田典之によるもので、大腸がんを患っている中で三浦が作った曲です。キングサリの中心概念は「いきる」であり、生命や生きることについて語られています。がんを患った三浦にとって、その「いきる」とはこの「spell」そのものです。
曲名の「spell」は「呪文」を意味し、歌詞には「魔法をかけた、もう大丈夫、私たちの間で火がついた」とありますが、これは人間の「生命力」を指しています。鏡に映った自分自身や他人が笑顔を失っていること、何ができるかを考える時、絶症に直面した絶望と不安を示唆しています。そのような状況で唯一信じられるのは自分の「生命力」であり、それが自分を前進させる力となります。
「信じてみよう、ここにあるのは私たちが今日も生きた証」というフレーズは、病魔との戦いの中で、内面の生命力こそが真の魔法であり、まさに「生きる」ことを象徴しています。
三浦のInstagramでの最後の投稿には、「いつまでどこまでやれるかわからないけど、最後の最後まで大好きな音楽をやり続けたいので希望を捨てずに頑張ります」とあります。私にとって、この「spell」という曲は彼が最後まで持ち続けた「希望」と「生命力」を表しているようです。
この曲は派手ではなく、伝統的なロックバンドの楽器のみを使用し、特別な装飾はありません。しかし、中間部のギターやベース、冒頭のノイズは、生命に対する複雑な感情を表しているかのようです。
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