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「証言貧困女子」助けてと言えない39人の悲しき理由(中村淳彦・監修)

「東京貧困女子。」(東洋経済新報社)、「日本の貧困女子」(SB新書)に次ぐ貧困シリーズ3作目となるが、簡潔で読みやすく、39人の個々のパターンが、非正規、シングルマザー、介護、高齢、ネカフェ、女子大生、搾取、と分類されてまとめられているので、背景のイメージがしやすい。

監修者の中村氏は、長年にわたる独自の傾聴術で、たくさんの女性の心の叫びや重い告白を聴き出している。
心のセンタリング、言い換えると『自分の欲望の断捨離』ができないとそこまで聴き出せないと言う、独特のやり方だ。

★団塊世代の優遇からのしわ寄せ
圧倒的に人数の強さから雇用優遇された団塊世代のしわ寄せが、若い世代と女性に来た結果が非正規雇用。官製ワーキングプアという国策もある。
★官製底辺を作り上げた介護業界
リーマンショックの失業者対策に介護業界が利用され、中年童貞(中村氏による)の巣窟になり、普通の女性介護職員が巻き添えをくらった。
★平均寿命が延びた上の男女格差
女性の方が6年ほど寿命が長いのに対し、就業率や年金額が低い結果から、女性ひとり残されると貧困になりやすい。
★田舎を捨てて上京するリスク
上京して失業すると同時に寮の人は解雇と同時に家を失う。また上京して就労しても非正規雇用で家を手にすることができなく最終的に「ラブホ難民」となる。
★女子大生の奨学金問題
親の世帯収入減により奨学金を使わざるを得ない進学状況から、社会人になると同時に数百万円の借金を背負う格好になる。しかし相変わらず雇用状況はよくないので正社員になれないか低賃金で返済できない。
★ブラックの末の人手不足から生まれた搾取
人手不足になると企業などは、人材紹介会社を使って補充しようとするも、高額な手数料により搾取され、本来支払われるはずの賃金の多くが人材紹介会社に流れてしまうことで低賃金になる。

上記のような背景が取材から伺えると中村氏は言う。

私が読んでいて思ったのは、いわゆる底辺と言われる女子の考え方は「結婚して専業主婦になって楽したい」という将来像を描いていることで、これが実に子供を産んでからの離婚に至り、シングルマザーとなり貧困に、というパターンが見えていること。思えば昭和時代をすごした私自身も「結婚して専業主婦に」という花嫁修業をすることが女性の歩む道、とするマジョリティを知っている。私たちの母親がそうであって、それできちんと生活できているのを見ているからそうであることが正当だと洗脳されていた。

私が思うに、平成からの社会人あたりからその様子は変化している。専業主婦になることで安泰になる保証がなくなったのだ。就労した女性には、男女均等雇用がうたわれ始め、同等の労働を求められるようになった反面、賃金の格差や女性の地位の低さがまだまだあった。バブル期(1988)あたりにうまく結婚して子を産んだ女性も、旦那のリストラで共稼ぎや生活の質を下げざるを得ない人も多くいたと見る。団塊の世代優遇の国策のとばっちりが来た結果だったと今回よくわかった。

あと興味深かったのは、今後は中年男性が貧困に陥るということを中村氏が示唆していること。どういうことか全くわからなかったが、状況からは納得いくことができた。これは中村氏のYouTube動画から伺えた。

https://www.youtube.com/watch?v=99PuEFOMm1Q&t=7s&fbclid=IwAR3mYtxs9LAUtgrUnLZCP04HYqQkr19Oe-geGap0RSjsS8NbimLs0b0wQx0

これを同級生、友人エリアに投げかけると、ほぼ自覚しているというリアクションがあって私は驚いた。どうなるのだろう日本。