ハラル鼎泰豐の小籠包で豚肉の力を知る
クアラルンプール名所の1つであるツインタワー。
ここにはハイエンドのブランドショップだけでなく、有名レストランも軒を連ねている。
小籠包で有名なあの「鼎泰豐」も入っているのだが、ここの鼎泰豐はほかとはちょっと違う。
なぜなら、ハラル対応の特別な鼎泰豐「Din by Din Tai Fung」なのだ。
ハラルを一言でいうなら、イスラム経典に基づく豚肉とアルコールを使わない食品や料理のこと。
豚肉と酒類は使えないが、鶏肉や牛などの肉類や魚介類はOKなので、意外とメニューの幅は広い。
話をツインタワーの鼎泰豐へ戻そう。
筆者はクアラルンプールへ越してすぐ、今から5年くらい前に、この鼎泰豐へ行った。
その時は、ここの鼎泰豐がハラルだと露知らず、大好物の小籠包をいただこうといそいそと入店して注文したまでは良かった。
見目麗しい小籠包を口に含んだ時の印象は、今でも残っている。
はっきり言って味が薄い。
生姜の漬けタレのせいなのか、自分の体調のせいなのか、いつものあの鼎泰豊の味がしない。
皮はあくまでも薄く、熱いスープもたっぷり入っているのに、何かが違う…
一緒に行った家族も、妙に浮かない顔をしている。
「チリでも、もらってみる?」
と、鼎泰豐の隠れ名品チリソースをつけてみても、やっぱりしっくりこない。
マレーシアにローカライズされた小籠包なのだろうか、いやいや、鼎泰豐は、あの鼎泰豐の小籠包を、世界中で提供するから鼎泰豐なはず。
一体どうして?
もうお分かりだろうか。
理由は、豚肉。
筆者が注文した小籠包は、ハラル対応のため、豚ひき肉ではなく鶏ひき肉を使っていた。
恐らくアルコール系調味料も除外されていたはず。
調味料はさておき、豚肉と鶏肉でこれほどまでに味が変化するとは、想像をはるかに超えるほど。
いつもの鼎泰豐の小籠包とは、ぜんぜん違った小籠包だった。
鼎泰豐の小籠包の餡は16gだと聞いたことがある。
プチトマト1個は約10gだ。
たったプチトマト1.6個の違いで、これほどまでの違いを生み出す豚肉に、むしろ心を打たれた。
おそらく小さな頃から豚肉に慣れ親しんだのもあると思うが、小籠包のように小さな分量での勝負は、鶏肉と比較して豚肉に圧倒的力量があるのだろう。
チキンライスやフライドチキンのように、ポーションが大きなものであれば鶏肉は素晴らしい。
しかし、プチトマト1.6個での勝負となると、肉本来の味わいや柔らかさにより、どうしても豚肉優位を認めざるを得ない。
世界中の主要都市に鼎泰豐はある。
しかし、ハラル対応の鼎泰豐はそうそう見つけることができない。
そんな中、クアラルンプールには両方の鼎泰豐がある。
鶏肉と豚肉でこしらえた小籠包の味の違いを体験できる、世界で稀な都市だといえるだろう。
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