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ほぼマレーシアにまつわるショートエッセイ

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ちょっとした時間にサクッと読める、マレーシア生活などにまつわるエッセイ集です。
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2023年10月の記事一覧

ハラル鼎泰豐の小籠包で豚肉の力を知る

クアラルンプール名所の1つであるツインタワー。 ここにはハイエンドのブランドショップだけでなく、有名レストランも軒を連ねている。 小籠包で有名なあの「鼎泰豐」も入っているのだが、ここの鼎泰豐はほかとはちょっと違う。 なぜなら、ハラル対応の特別な鼎泰豐「Din by Din Tai Fung」なのだ。 ハラルを一言でいうなら、イスラム経典に基づく豚肉とアルコールを使わない食品や料理のこと。 豚肉と酒類は使えないが、鶏肉や牛などの肉類や魚介類はOKなので、意外とメニュー

日本とちょっと違うマレーシアの点心

点心や飲茶と聞いて、思い浮かぶ場所はどこだろうか。 香港や中国本土、横浜中華街かも知れない。 マレーシアで暮らし始めるまで、まったくイメージはなかったが、意外とここは点心(Dim Sum)天国だ。 美味しくて種類豊富で、そして驚くほど安い。 点心専門の大型店はもちろん、コピティアムと呼ばれる街の食堂兼カフェでも気軽に点心を頂くことが出来る。 日常に溶け込んでいるマレーシアの点心だが、日本とは大きく異なる点が2つある。 ここでは、その文化的差異を2点紹介したい。 文末

クアラルンプールのチャイナタウンは中華街じゃない

中華街と聞いてなにを思い浮かべるだろう。 極彩色で手の込んだ模様の大きな中華の門や、蒸籠から湯気をあげる点心店かも知れない。 または、壁一面が引き出しになっている漢方店や、中国茶の専門店かも知れない。 しかし、KLの中華街はそれとはちょっと様子が異なる。 中国っぽいモニュメントや活気あふれる点心店はなく、いかにも中国らしさを感じるものはほとんど見当たらない。 そもそも、マレーシアはマレー系・中華系・インド系が混ざり合っているので、街中に中華系の飲食店はそこらじゅうにある

5年経って反論したい言葉

別に、今さらその発言に反論しようとは思わない。 当時の私は、そういうものか、と分からないままも何となく納得したのは確かだ。 しかし、あれから5年が経った今は、きっぱりと「それは違う」と言うだろうし、理由も山ほどあげることができる。 それは、どんな発言か? 海外移住や転勤を経験したり予定しているなら、もしかしたら言われた経験があるかも知れない。 それは、「子供は慣れるのが早いから、英語はすぐ話すようになるよ」だ。 私はそれを2018年のバンコクで言われた。 発言者はA氏

Bukit Bintangで中東小旅行

ブキ・ビンタン。 日本語で「星が丘」という意味のそこは、その名の通り煌びやかなクアラルンプールの中心地だ。 いつも人で溢れる場所であるが、正直なところ筆者にとってはそれほど魅力を感じない。 何故なら、することがないのである。 ブキ・ビンタンの中核をなすパビリオンは、所狭しとブランドショップが軒を連ねているが、それほどブランド品に興味はない。 台湾の誠品生活は同じような品揃えだし、ファーレンハイトは薄暗く他でもよくある店舗が続いている。 ドンキが店舗を増やす前、唯一L

キャメロンハイランドの老舗ホテルSmoke House Hotelにて

キャメロンハイランドに、Smoke Houseという名のホテルがある。 おとぎ話に出てきそうな、とんがり屋根に蔦が絡まる洋館。 ピーターラビットがすぐにでも顔を出しそうなイングリッシュガーデンが色を添えている。 ホテルの近隣はゴルフ場しかないため、そこだけ切り取ったように、空間まるごとがイギリスだ。 ヨーロッパのアンティーク好きなら、館内に足を一歩踏み入れると同時に、歓声がもれるだろう。 ビクトリア朝を思わせる家具、市松模様の床、暖炉、バラ柄のファブリック、真鍮製のア

海外生活でわたしを助けてくれる唯一無二のもの

いつもの点心の店で、水晶餃子、粽、鉄観音茶を注文すると彼女が言った。 「結構昔のドラマなんだけど、高校生と女の先生が恋愛するの。えーっと、なんだっけ?」 「日本のドラマ?」 「そうそう、なんとかの条件」 「魔女の条件?」 「それそれ!」 「私あのドラマ好きだった。歌も良かったよね。" You are always gonna be my love〜♩"」 という会話の相手は、中華系マレーシア人の友人だ。 彼女が大学の時、ちょっとした日本ブームが起きた。 日本のアニメのみなら

ソウルの旅が全然楽しくなかった

2023年8月にソウルへ行った。 旅行というより乗り継ぎを利用したトランジットステイだ。 筆者は映画ファンの端くれとして、韓国映画のみならず韓国ドラマにも随分楽しませてもらっている。 むしろ良すぎて、我が国のエンターテイメントの将来を憂うほどだ。 それら映像作品の中でソウルの風景や地名は溢れているし、マレーシア国内でも韓国料理は人気なので、いつしかソウルは親しみやすく好感度の高い同級生的存在になっていた。 また筆者の周りの韓国フリークから、異口同音に賛辞を聞いていたのもあ