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機械設計の知識(1)

皆様お疲れ様です
先回は機械設計の入門という記事を書きました

入門編と言ってもなかなかわかりにくい記事でした笑
さて、機械設計の仕事の流れはおおよそどの会社でも同じような流れかと思いますが、私の携わっている”産業機械”という分野に特化して、必要な知識を書いていこうと思います。

産業機械、特に自動機においては、対象装置の入口→出口の全工程が自動になります(中には人が投入して人が動作させる半自動機もあります)。

工程については仕様で決められているのでその通りの動きを満足させなくてはなりませんから、まず決めていくのは、仕様書に記載のタクトと仕様からどうやって動かすか(電気、空圧、油圧)を決めます。つまりアクチュエーターを何にするかということです。
ここで必要になってくる知識(というより、購入品)は

 ・モータ(サーボ、インダクション、ステッピング等)
 ・空圧機器(エアシリンダ等)
 ・油圧機器(油圧シリンダ等)
 
タクトから各機器の動作時間を割り出し、動作パターンを算出します。ここで加速度、速度、減速度がわかるので、あとは物理法則に基づき、トルク、力などを算出し各機器の選定を行います。

順番を整理すると、
 ①タクトから動作パターンを決定(加減速、速度)
 ②動力を決定し、使用するアクチュエーターの種類を決める
 ③トルク、力を計算する
 ④アクチュエーターの決定
という感じです。①と②はほぼ同時ですね。最近は油圧を使うところは減ってきました。ただ、ワークによりけりですが・・・。

このように、まず設備の根幹のアクチュエーターを決定することが必要と思いますので、そのアクチュエーターの知識(電気、空圧、油圧)は必要になります。機器の選定は物理の教科書に載っているレベルになると思うのでここでは割愛いたします。

各機器の知識ですが、
-モータ-
モータ関係については、上記にもあるように、サーボ、インダクション、ステッピングの違いと使用目的の違いを説明できればよいと思います。ざっと書くと、サーボモータは内部にエンコーダをもっているので精度の高い動作をさせる場合に使用します。使われ方としては、ストッパなどを使用せず、モータの停止によって静止させます。当て止めのような使い方であればインバータモータかと、ステッピングは対象の系が小さい場合、強度がそれほど必要でない場合に使用します。
回転機構から直動機構にするなどモータはいろいろ使い勝手がよいですが、直動ですとロボシリンダなどを使用するケースが多いと思います。
トルク計算、速度の計算ができれば、モータを選定することは可能ですが、サーボモータは定格が3000rpm(それ以外のものもあります)、インダクションモータは50Hz,60Hzにより1500rpm , 1800rpm(すべりなし)となっているので、注意する必要があります。
モータの選定で難しいのは、トルク不足→減速比を大きくして出力軸トルクを上げる→回転数不足→容量増やす→・・・という繰り返し計算になりますがたまにどつぼにハマるというか、なかなかバランスの良いものを選定するまでに時間がかかることがあります笑
あと、モータの中で必要な知識としては、許容イナーシャ比ですね。
これを考慮しない方、たまにいらっしゃいますが、許容イナーシャ比は必ず計算して、範囲内に収まるように選定ください。
最近では便利なもので、選定ソフトもありますが、計算結果に対してあれこれ判断できるようになるためには、選定知識もあった方がよいです。先程も言いましたが、物理計算なので、難しいことではありません。

-空圧・油圧-
空圧・油圧関係の知識の基本は”推力”ですね
ここでは空圧を中心にお話しますが、推力の出し方は簡単です。エアシリンダはボア径というのがありまして、6,10,12,16・・・などあるのです。
ボア径をD、エア圧力を0.3MPaとすると、推力Pは
P=πD^2/4 * 0.3 (受圧面積 × エア圧力)※押し時
引き時にはロッド分の面積を引いた面積になります。
タクトから動作パターンを算出し、アクチュエーターを決定します。

アクチュエーターの決定には機械効率などの安全率を必ず加味してください。つまり余裕を持つことですね。
一番良いのは、実際設備を動作させたときにサーボモータのトルク波形を見せてもらってください。負荷率が計算と一致していれば(一致するのはほぼ偶然に近いですが)計算は正しいということになります。


ただ、1つ忘れてはならないのが、計算して問題ないから”はいOK”とはならないのです。部品の製作精度、組付精度、摩擦、温度、湿度などによって、計算通りにならない事象があることがあります。ですが、計算間違いではないものの、動かないので買いなおす・・・とはまずならないので、余裕は必ずみて設計しましょう。

私は昔、ウォーム減速機の機械効率を0.9で計算してしまっていて、実際現場でトルク波形を計測したら計算値は負荷率60%くらいだったのに実機では120%くらいでした。そもそもウォーム減速機は機械効率を0.4くらいで計算しないといけないものでした。モータは今更変えられなかったので、違う手段で修正しましたが、良い勉強になりました笑
設計者は図面直しておしまいになってしまうのですが、トラブルが起こって、部品を外したりなんだりすると、みんなに迷惑をかけることになるので、多少コストはかかっても1発モノであれば、余裕度は大切です笑

ただ、余裕度をみるにしても、何に対する余裕なのかがわからないと余裕度を計算することもできないので、基本計算は必ずマスターするようにしましょう。

今日はここまで。
読んでいただいてありがとうございました。

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