夢日記56”狼と竜と、はぐれ寄鷹”

※注意
・隻狼の夢です
・夢の中の私は竜胤や不死に関する事について全く知らない様子です(何で?)

私は遠くの地で偵察を行っていた寄鷹衆が1人。言伝にて里の一大事を聞き戻った。国破れて血と死体と山河だけが残り、野望の火の痕が燻るのみであった。亡んだ国の情報集めには些か骨を折ったが、要約すると死に損ないの忍びに葦名の重鎮は皆殺しにされ機運に乗じた内府に亡ぼされたと言う。斯様な事があろうか?

情報が錯綜しており話に尾ひれがついたものもあるようだが、国が傾いていたとは言え葦名の国は古強者の勢揃いだったと記憶している。葦名一心様はもちろんの事、葦名弦一郎様もおられるのだ。ましてや死に損ないの忍びに遅れを取るはずがない。内府が攻めた隙に乗じて闇討ちしたの間違いではないのか?しかし情報に精通する者が仔細に多少の差異はあれこそ口を揃えて同じ事を言うのだ。その忍びが下手人には相違あるまい。私も仕えるべき主と国を失った身。真偽はどうあれ敵討ちせねば死んで死に切れるものではない。

更にその男は稚児を連れて西に向かっていると言う。面妖な義手をしているとは聞き及んでいたためそれを伝手に後を追った。男は稚児に合わせて移動している様子で何とか追いつく事が出来た。

その隠しもしない義手や隣の稚児を見て件の者に相違ないと判断した。噂を鵜呑みにする訳ではないがその男の身のこなしから護るべき者を連れてなお真正面から挑んで勝てる相手でない事は容易に想像できた。私は戦いに来たのではない。殺しに来たのだ。逸る気を抑え機会を伺う事にした。犬死にだけは避けねば。

しかしあの稚児、どこかで見たような…。

しばらく隠れながら行先を調べていた。夜は近過ぎず遠過ぎずの距離を保った。意外にかの男は私を殺しに来ない。尾行に気付く素振りもない。稚児を耽溺するあまり盲目になったか?そんな心のゆとりができてなお、寝込みを襲おうとするのにさえ足が震えて叶わなかった。

やがて彼らの行先がはっきりしていない事が分かると、このまま進み続けた先に当たりそうな寂れた宿屋の主人に小銭を持たせて家ごと借りた。骨折り損のくたびれ儲けにならない事を祈りながらその時を待った。

復讐の神は私に味方したか、とんとん拍子で彼奴等は宿屋に訪れた。

「…その顔どこかで……」

稚児の言葉に心臓が飛び出す所だった。近くで見れば、確か平田屋敷の…。あの子とはある素顔での任務に着任した際に幾度か見かけた程度。今の頃より一回りも二回りも小さい頃だったはず。まともな面識もないこの顔を覚えているなどあろうはずがない。

「どこにでもある凡夫な顔にございます。他人の空似でございましょう」

「そうか…」

その場を何とかやり過ごし、部屋に案内した。毒入りの料理はとうに出来ているがすぐに出しては怪しまれる。興味本位で聞き耳を立てた。

『此度も難儀じゃった。こうも雨に降られては寒くて敵わん。して狼よ、これからいずこに参ろう』

『御意のままに』

『そなたはそればかりじゃ』

何やら複雑な主従模様だ。

『団子…』

『狼よ、団子は場所ではない。食い物じゃ』

『…………』

『では明日は茶屋に参ろう。我々の行き着く先はきっと自ずと見つかる。それまでは糸の切れた凧じゃ』

『御意』

そこまで聞くと私は厨房に戻った。これまでの殺意もどこへやら、毒を仕込んだ料理の他に料理を作り直して出した。恨みは忘れていないが、あの平穏に水を差す気には到底なれなかった。





パイナポォ(「 ・ω・)「