夢日記59”濃霧に現れる老紳士”

「霧が濃くなってきたな」

私は車の助手席から窓の外を見ながらそう呟いた。運転席にいる友達が頷く。

「嫌な霧だな。この辺りには変な噂もあるし」

「へえ。どんな」

私が尋ねると後部座席に乗っているオカルト好きな友達が身を乗り出して話し出す。

「老紳士の噂だよ。ここ最近じゃ有名なのに知らないのか?」

「知らんな」

友達がその噂について話し出す。要するにこの辺りを2人で車を運転しているとスーツ姿の老紳士が後部座席に現れそのまま異界へ連れ去ってしまうらしい。

面白い話だ。それが事実なら一体どこの誰がその噂を広めたと言うのか。私は馬鹿馬鹿しくて笑った。

「本当だって。もう何人もの行方不明者が出てるらしいよ」

「そりゃいい。竜宮城にでも連れて行ってくれるのかな」

私が適当な返事をするので後部座席の友達は呆れて話を切り上げてスマホを弄り出した。助手席の友達は車のライトを上向きにした。もう20mも先が見えないぐらい霧が濃くなってきた。

それからしばらくして少しずつ眠くなってきて船を漕いでいると急に私のスマホに電話がかかってきた。画面には非通知と書いてある。時間は21時近く、一体どこの誰だろう。

無視してても一向に鳴りやまず運転してる友達もうるさそうにしてるので私は電話に出た。

「どちら様ですか」

『俺だよ!車を止めてくれ!見えない力に引っ張られて…とにかく後部座席を見てみろって!』

「はあ?」

オカルト好きな友達、今まさに後部座席に座ってる友達からの電話だった。意味が分からない。馬鹿にしてるのかと思って少し考えるとおかしな事に気が付いた。

この電話、真後ろからかけているはずなのに後ろから声がしなかった。

「リグニン、バックミラーにやばいの映ってる」

運転してる友達が言った。振り返ると後部座席にはシルクハットを深くかぶったスーツ姿の老人がいた。噂は本当だった訳か。

「それはそうと友達が無理矢理車から降ろされたらしい。戻らないと」

「そうしたい所なんだがさっきからブレーキも効かないしハンドル操作も駄目なんだ」

「わお…」

どうやら心配すべきなのは下ろされた友達より自分達らしい。

パイナポォ(「 ・ω・)「