夢日記58”殺されるか見殺しにするか”

私は友達と一緒に旅行に来ていて、科学館らしい場所に来ていた。皆で楽しく展示物を見て回っていたが、体調を崩していた友達が転倒して設備の一部を壊してしまった。近くにいたスタッフらしい制服の人達が駆けつけて来て口々に何かを言っている。喋ってる言語は自分達の喋る言語と同じはずだが、訛りが酷いのか何を言っているのかさっぱり分からない。

ひたすら頭を下げて謝ったが彼らの怒りは収まらなかった。今にも殴って来そうな剣幕だったので友達が「とにかく有り金全部渡して見逃してもらおう」と言った。弁償しようにも言葉が通じないのではどうする事もできないので、ひとまず友達の意見に賛成した。

差し出したお札を乱暴にぶん取ると彼らは何も言わなくなった。私達は逃げる様にその場を去ったが彼らは追いかけて来なかった。許してくれたんだろうか。

持ち金もなくなり、友達の体調も心配なので私達は科学館を出る事にした。私は体調が優れない友達が転ばない様に気を付けながら背中を押して出口に向かった。

エレベーターに乗って2階のボタンを押し、駐車場に向かった。やがてドアが開くと、その先にはアサルトライフルを握った人達が待っていた。服装は先程のスタッフと同じ物だった。

「!!」

驚いて言葉も発せないままいると、私の隣にいた体調の優れない友達が撃たれた。床に倒れうずくまる。頭の中で考えが巡る。彼らは私達を殺す気だ。倒れた友達はまだ死んでない。でも、この状況ではどうやっても助けられない。

「走れ、走れ走れ!」

私は叫んだ。最低だと思う。それでも皆死ぬよりいいと思った。誰もが動けなかった。また撃たれた。今度は1発じゃない。何発も撃ち込まれた。友達がバタバタと倒れ、私も撃たれたと思って膝をついた。エレベーターのドアが閉まる事を祈ったが、開くボタンを押してる人でもいるのか開いたままだった。

隣で友達のうめき声が聞こえる。やがて私は気付いた。自分は無傷だ。奇跡としか思えなかったが、この幸運を逆に恨んだ。

命乞いなんて今更通用するとは思えない。1人目の友達同様、ここにいる友達を私は救えない。自分の命は?まだ助けられる。

ありったけの声で叫んだ。銃を向けている彼らは一瞬驚いてこちらに銃口を向ける。その驚いた隙の一瞬を突いて彼らの群れの真ん中に突進してぶつかり、そのまま障害物を背にする様に走って逃げた。後ろから放たれる銃弾にも当たらなかった。どうして自分だけ…そう思った。

旅行へは私の車で来たが、運転を交代で友達に変わっていた事もあり鍵は友達が持っている。仮に持っていても車で逃げれば目立ちすぎる。私は科学館を出る途中の小さな林に隠れながら逃げた。

私はある時、ネズミを追いかけた事があった。ネズミは素早かったがそれ以上に賢かった。追いかけているとすぐに姿を見失う。確かにここに逃げたはず、そう思った場所の周りを軽く探したが見当たらない。しかしこの場所から逃げたのならそれを目撃していないのはおかしいとその場所を念入りに探した。すると諦めたのか隠れていたらしい場所から跳び出した。

追いかけられているのであればその対象からできるだけ遠くへ逃げたいはずだ。逃げ場所を目撃されているのであればなおの事その場に留まるはずがない。探して見つからない場合は他の場所へ逃げた、まだここにいるはずがないと考える。考え過ぎでなければそうやって追跡者を捲こうとしたのではないかと私は思った。

頭に過るのはその事だった。「まだ近くにいるはずだ、探せ!」近くで聞こえる言葉をそんな風に解釈した。アサルトライフルの様な物を持ってるようには見えないがハンドガンやピストルの類は持っていると疑うべきだ。

私は敢えて隠れるのに最適な場所は避け(ペールや掃除用具入れの小さな倉庫等)てよく見ればバレてしまいそうな垣根の裏に這いつくばったり、木の裏に姿勢を低くしてやり過ごしたりした。日中で辺りは明るかったが林の中とあって影は多く、服装は彩度の低い寒冷色を好む事もあって視認性が悪いのも幸いした。

それから人気の少ない田舎道の方へ逃げた。警察に助けを求めるにしてもあの科学館から最寄りは避けるべきだと考えたからだ。この田舎道に来ると踏んで見張りがいたならその時が私の最期だ。

「皆ごめん…皆ごめん…」

謝ったところで私が友達を見殺しにした事や自分だけおめおめと死に損なった事は変わりない。友達は走って逃げる私の後姿を見て怒ったかもしれない。恨んだかもしれない。悲しんだかもしれない。今となってはもう確かめる術がない。

いずれにせよ生きてるのであれば生きているからこそできる事、やるべき事があるはずだ。私はそう自分を励ましてひたすら走り続けた。

パイナポォ(「 ・ω・)「