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サブスクの音楽だけが日々だったのになにひとつおもいだせない 感情は流れるプールのような日々おんなじところをぐるぐるなぞる きみのこと日々と呼びたい年だった 年越しそばで無限にわらう
ひとつずつ衣服を脱がせてゆく果皮を剥くことだけは丁寧にする 滑らかな裸体をさらす果物がテーブル上で生きつづけている もうすぐの別れを彩る君なりの林檎のうさぎはしずかに落ちる
冬の風 樹氷と樹氷が触れ合えばささやくくだらないことばかりを 自動車も走っていない雪道にいずれ消え去るふたりの足あと もう風はなくなってそれでも歩く 目的地のないまっしろな日々
洋梨のタルトのような文章を書くきみのペンだこをなぞった たのしくてかなしくなってうれしくてフルーツゼリーの揺れる感情 ふと声が聴きたくなって想像のきみの声帯で文章を読む
アクエリの透明が喉を落ちてゆく、ときにわたしは無防備だから やさしさがひかりとなってあらわれる白粥つくるあなたの背中に 手のひらがまぶたに落ちる 緞帳がゆっくり降りてゆくような愛
キャンドルはしあわせの分だけ灯る こんなにきらめくふたりの炎 心臓がこんなに重なる夜だから鼓動が同じでなくても炎 朝焼けははかない炎 こんなにも君の吐息を数えてねむる
彼の家の金魚のようには泳げない ベッドでひとり溺れる練習 満月のひかりを受けてかがやけるワイシャツの青は夜更けの青だ ほの白い腕に爪あとが主張する病める心に夜更けはとおく
ひざ掛けで覆ってほしい真夜中に背脂多めのとんこつラーメン 脇腹をさらして床にのびてゆく 記憶の君に見下ろされるだけ またたいてもまたたいてもクリスマスツリーの星に積もってく雪
手のなかで鍵もてあそぶこれからは同じルージュを共有する仲 どこにでもいる友人に見えている君の名前を慎重に呼ぶ 丁寧に脱がした靴を揃えずに君の魔法を解いてゆく夜
コンビニが朝焼けのようにあらわれる ビニール傘は約五百円 雨宿りするひとたちがぱらぱらと空を見上げて虹を見つける カメラなど向けなくていい 君が来て一緒に虹を見上げるまでは
数分を使ってラムネを溶かしてく目に映すのはふたりの姿 長すぎる前置きですら愛しくて後ろと前をまちがえた服 さよならを挨拶にして何度でもやり直すだけのパズルのピース
まじりけのない水のように純粋にわたしにナイフを振りかざした手 ただしさは君だけが持つ 思考停止してしけっているクッキーを食べる 激情の手のひらはどこか街灯のようにさびしくて握ってしまう
下書きを消してログアウトしていけばすこし減ってくポタージュのコーン パスワードは思い出せないままでいい まるでいつかの片恋のように ログインはできないままで見つめてるあなたを詠んだ自分のツイート
泣いたフリする君なんかこの冬の山手線を回ってればいい 水槽に当たってくれれば簡単に嫌いになれる理由になるのに 玄関を飛び出す 君を追いかけた僕も山手線の一部だ