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365短歌(2022)

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2022年に投稿した三首の連作短歌をまとめたマガジンです。
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#雨

連作 歌が聴こえる夜

街中に歌が聴こえる夜にいてあなたが先に各駅に乗る 手のひらに缶コーヒーを残す手に指輪も嵌めてあげられないまま あんなにも歌に聴こえた雨音でイルミネーションも滲む終電

連作 激しい雨だ

しあわせになれない映画のヒロインを攫うくらいに激しい雨だ ラブソングばかり聴いても本日も薔薇の花びらの代わりに降る雨 喉の奥に詰まった言葉が雨粒を震わせそうな窓越しの雨

連作 ほくろの場所

ぬるい雨が降ったりやんだりする夜に君のほくろの場所を忘れた まだ降るね、確信めいたつぶやきが冷めない紅茶に生みだす波紋 新しい恋人に言うおやすみは届かないまま過ぎ去る嵐

連作 靴底を濡らす雨

降ったのか分からない雨靴底を濡らして帰路は夜に沈んで 冷ややかな炎を見ているような月の光の道に降りそそぐ雨 屋根裏に残響している雨音はなぜまっすぐに降るのだろうか