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365短歌(2022)

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2022年に投稿した三首の連作短歌をまとめたマガジンです。
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2022年8月の記事一覧

連作 中途半端にきれいな

積みあげたきっと読まない本が見る中途半端にきれいな室内 畳まれることのない布団のまんなかでブルーライトは月光の代わり わたしって中途半端に転んではひとりで立って花も枯れない

連作 さよならをしたなら

さよならをしたなら揺れる夏風も君の帽子を攫わずにいる かぶってた麦わら帽子の花飾り 悲しいほどにあふれそうだね 賛美歌の流れるような砂浜で日差しを受けてきらめいた君 すみません。 時間がなかったので、今日は一首のみを投稿ということで。 後日残り二首を投稿しようと思います。

連作 手がしずか

口紅がついたコップを洗う手がしずか 指輪の裏側の文字 目を開けていいよって言う声でもう咲けなくなった花言葉は恋 なぜ好きになったんだろう つめたいね、安物だってお揃いだった

連作 さざなみをたてたくて

さざなみをたてたくて、聴く月額が約千円の音楽を聴く こんなにもがんばれなくてわたしってほんとにただの木の枝なんだね ねむいってごめんなさいと似たような夜独特のぬるい響きだ

連作 夕暮れの送り仮名

おいかけて追いかけてゆく夏の果て自分の分だけ残る足あと 夕暮れの送り仮名だけ隠してくみたいに君を海に忘れた まだ先へ進みますかと問うように蝉の声から消される世界

連作 この夏も走馬灯にはできない

流れてく落石注意の標識に昨日のガチャの神引きを呪う しあわせな想像ばかり積みあげて夏の山って生命力だ この夏も走馬灯にはできなくてまだ登れない山を見上げる

連作 浮けない心

月光と共鳴しあうどうしても浮けない心の同士を探す 夜道にはだあれもいない傾けた缶から何も落ちないみたいに 君だっていつ敵になるか分からない 心はどうしてまるいのだろう

連作 黙っていれば

いつまでも黙っていれば良い子にもなれる君とも仲良くなれる 何を言えば何を黙ればいいのだろうお飾りの口に塗るメンソレータム 孤独にも集団にすら慣れなくて遊園地とか疲れてしまう

連作 月が見ている

Tシャツが見下ろす床をなめている月の光で上げかけた顔 見上げては強要させる唇の角度で月が海に飛び込む 利き腕に体温計を挟むときの手持ち無沙汰を月が見ている

連作 風だけが強い+

真夜中に明かりも見えないこの町でロケット花火ぶちあげたいね 絶対にやらないようなことだって想像はタダ 風だけが強い 夏に背を押されて帰路につくいつか祭りがあっただけの一日 この記事とは直接は関係ないですが、昨日投稿した連作『私道で花火を打ち上げたかった』が妙に私のなかにはまった気がしています。なので、『私道で花火を打ち上げたかった』というタイトルで、noteに投稿している連作を編集して載せる形で歌集を作ろうと思います。まだ何も決まっていませんが、一割はnoteに投稿して

連作 私道で花火を打ち上げたかった

思うほど狂えなかった夕暮れにビルの谷間に落ちていく影 ひとつずつ欠けるルーティン明日にはまた失くしてゆくパズルのピース くちびるの開き方さえ失って私道で花火を打ち上げたかった

連作 無限の

チューハイを一缶開けてねむそうな君が無限に死に続けてる 幾度目の落下で自キャラが気づいてく死からは逃れられない生だ 繰り返す死の運命にあらがえずエンディングまで届かない世界

連作 愚者/運命の輪/世界

舌先がよく回るだけこの夏で孤独な自分を演じる愚者だ 運命の輪がジャンプして逆位置に変わる風鈴の短冊揺れて 最高の夏にしたくてエアコンに向けた背 一度も出ない世界

連作 砂の一粒

終わらない潮の満ち引き こんなにも間近で君を見ても暗がり ねむくなるみたいに揺れる海だけが地球の目覚めを待ってる夜更け 化石化を焦がれるような雑談をつづけて僕ら砂の一粒